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記事No.#1235-2002/5/27

印刷ビジネスにUDの視点を


日本の少子・高齢化のスピードは予想以上に加速しており,2050年には,2.8人に1人が65歳以上という世界に例のない社会が出現する。日本は,高齢化で世界の先端をいくのである。
反射神経は20代をピークとして低下していくし,目の筋力や弾力が低下し,色合いの判別能力が衰えてくる。また,高齢化社会では,いつだれが障害を持つようになるかわからない。結局,障害を持つ人が非常に増えることになる。

障害者が社会生活をしていく上でバリアとなるものを除去し,暮らしやすい街や社会作りをする「バリアフリー」は,かなり広まってきている。しかし,障害だけでなく,例えば,年齢や性別,国籍にも生活上のバリアは存在するので,すべての解決を目指す「ユニバーサルデザイン」という概念が21世紀のキーワードとして注目されている。
バリアフリーとユニバーサルデザインの違いは,前者がテクニックで後者はコンセプトである点であり,前者は「障害者と健常者」を区別しているのに対して後者は「全ての人」を対象としている。

例えば,薬には決まって使用上の注意を書いてあるが,ただ書けばいいというものでもない。目薬のような小さなものには注意書きを書いても読みづらいので,誤用が多い。また,縦型チューブ入りの歯磨き粉,洗顔クリームは形が同じなので,入れ物の字やデザインをしっかり見ないと,うっかり間違いそうになったことのある人は少なくないだろう。

その他,駅の階段の段差が見づらくて踏み外しそうになるなど,危険につながるものを防止するような概念も「ユニバーサルデザイン」といえる。このように,生活者側から身の回りを見渡してみると,安全や公平性,快適性などの点で見なおしをする余地のあるものが多くある。

日本のビジネスに目を転じると,ものづくりが飽和化し,大量生産を求める時代は過ぎ去ったが,それならば,これから目指す方向は,購買意欲をそそるような,より刺激的な商品を開発することか,というとそういうわけでもない。その場限りの発想で生まれた商品は,必ずしも着実な経営には結びつかないだろう。

ビジネスを考える上で,環境問題が1つの要素として重要視されているように,すぐに実を結ぶものではなくても,地道に社会に貢献していくことで,その努力の積み重ねが会社の基盤を固めていき,いずれ世の中に認知されてくるような視点の1つに「ユニバーサルデザイン」が位置する。

関連する国の動きとしては,2000年〜2001年にかけて,包装・容器の高齢者・障害者配慮設計指針など,日本工業規格(JIS)が制定されている。さらに,今年,使用者によるユニバーサルデザイン評価方法などのさらなるJIS化の動きがある。
また,民間の動きとしては,人間生活工学研究センターが,人間の体型,動作,感覚,知覚,行動などの特性を配慮して,人間にとって快適・安全な製品や生活環境を創造し,モノづくりに反映させるという視点からガイドラインを作る動きが出てきている。

今後,印刷表現の見え方,わかりやすさというのも,ユニバーサルデザインの視点から考えられるようになるだろう。目の前の印刷ビジネスだけにとらわれるのではなく,これからの日本社会の変化に合わせて,印刷ビジネスを考える広い視野が大切になってくる。

JAGAT技術フォーラム主催の「2050年の印刷を考える・イブニングフォーラム」では,今後の日本社会における大きな課題を取り上げ,専門家の話を聞き,印刷ビジネスとの接点をディスカッションするプログラムを用意しました。ぜひご参加ください。

(2002年5月20日 イブニングフォーラム「ユニバーサルデザイン」より)


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