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記事No.#1289-2003/6/9

メディアの仕組みが出版を変える


2002年度にはイブニングフォーラムという形で,ユニバーサルデザインから,少子・高齢化問題,国内産業動向,グローバリゼーション,日本人のライフスタイル・価値観,環境問題/エネルギー・資源問題,科学技術などの近未来をテーマにした勉強会を行った。21世紀に起ころうとしている変化の中で,印刷・周辺業界が生き残っていくためには,目の前のことだけにとらわれるのではなく,われわれは将来のためにどんな貢献ができるのか,またそれがビジネスとしてどう成り立つのかを見据えることが必要だからである。

この勉強会の結果から,過去のビジネスモデルの全てが破綻したわけではないが,生き延びるとしても縮小せざるを得ないものが多いと判断した。印刷だけでなく国内市場に依存しているビジネスは後戻りできない要因が前述のテーマのそれぞれに見出せた。現在は縮小均衡してでも経営のバランスをとることが最優先である段階のところもあるが,その会社もバランスが取れた先には,過去とは視点を変えて,これから展開して広がる可能性があるところにビジョンを構築しなければならない。

上記のことがこれからの印刷や出版・情報・メディアの世界の変化にどうかかわってくるのか? 特に日本では人口の問題が大きい。団塊の世代に比べて今の出生率は極端に下がり,今生まれる同年齢の人口は団塊の世代の半分以下になった。つまりマスマーケティングは今後もあるとしても,マスのサイズは半分なのである。その代わり人口の多い層が高齢化・長寿化したために,人口のグラフで見るとタテに細長くなる。
若年層は自己形成が未熟で生き方が未分化であるが,高齢者は既にそれぞれの生き方が分化しており,それが日本における多様化の大きな要素であろう。つまり縮んだとはいえ若年層はマスであり,あれこれ趣味を取り替えて自分にふさわしいものを捜し求めるような,世界的な流行とも連動した多様化で,高齢者の多様化とは性質が違うだろう。

多様な情報ニーズに応えるためには,マスの情報よりも,分化した情報が必要であるが,ここには2つの問題があり,分化したニーズを捉え損ねると空振りになるリスクがあることと,対象の単位が小さくなりすぎるとビジネスは成り立たないことである。すでに産業規模としてそこそこ大きくなってしまった出版・印刷のビジネスをするものにとっては手が出せない理由がここにある。

しかしメディアがデジタル化することで,この2つの問題にも対処できるようになりつつある。第1の問題はターゲットとなる読者層との直接の意思疎通ができる双方向性がもてるようになったことである。これはWEBに多数ある掲示板やBLOG,メールマガジンなどの連動で,今日ではマーケティングの重要なツールになっている。第2は,第1の問題の実現方法も含めて,2チャンネルなどの巨大掲示板を見る如く,ITによって個々には少ないターゲットをたくさん束ねて自動的に扱えるコミュニケーションの仕組みが構築できることである。

実はIT利用はマーケティングの方が出版よりも進んでいて,そちらで開発されたものがメディアに波及する時代がくるであろう。例えばオークションというのは1点しかないものを売る仕組みで,実際の店では成り立ち難いが,ネットでは盛況である。商業印刷は販売促進のためにあるが,その奥にはCRMの考え方があり,販促の方法はネット化によってこれから本格的に変わろうとしている。

印刷や出版・情報・メディアの世界では人の関心あるものがコンテンツや商品であるのだが,それらも販促で発達するコミュニケーションとメディアの仕組みと歩調を合わせて進歩しなければならない。出版は文化産業だからITとは無縁,とするならばビジネスから撤退宣言をしているようなものである。ただITの仕掛けに依存して出版はできるものではなく,その仕掛けでニーズを吸い上げて,整理して,そこに情報ビジネスの可能性を考えるという段階を踏まなければならない。


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