記事No.#1295-2003/7/22
これから伸びるメディアと連携する
1980年代の前半だったか,印刷需要を電信電話が追い抜いたことがあった。それまでは紙の情報にもっとも金が使われていたのである。1960年代にはTVの躍進があった。20年くらいで情報の世界は大きな変化があるようである。そして今日ではWEBや携帯でコンテンツが露出されるようになり,流通している総量は近いうちに印刷を追い抜くかもしれない。
印刷はコンテンツの加工に長らく携わってきた。ラジオやTVのような媒体の制作は印刷の延長上にはないので手が出しにくいのは仕方ないとしても,今のWEBや携帯程度なら技術的には印刷のノウハウで対応出来そうなのに,印刷関係の人はメディアに関するビジネスにどのように関与していけばよいか戸惑っているように思える。
メディアは,技術と,コンテンツと,情報を授受する人の3要素で成り立っていると思う。新たなメディアの提案をしようとすると,それぞれにリスクがある。技術とコンテンツについては比較的わかりやすいが,「人」については,印刷会社は印刷発注者や印刷物の流通業者など間接的な人にしか接しておらず,情報源やエンドユーザのことを知らないことが,メディアについて考えることを困難にしている最大の要因ではないだろうか。
技術は急速に変貌していく。デジタル化によって,顧客である出版のシステムを構築して何年か使うことは近年よくやってきた。電算写植の時代の入稿システム,CEPSの時代の画像データベース,DTPの時代の自動処理などである。しかしWEBのシステムは半年単位に見直しがされ,2年経つとすっかり入れ替わっていることがよくある。
だからシステム提案して受注するとしても,出版では数年にわたる受注,しかも印刷代も含むものとして見込んでいたのに対し,WEBのシステム提案,関連した受注も含めて2年で利益が出るように考えねばならないことが第1のリスクである。
つまり,技術は理解できても,利益が出るように企画することが難しくなったので,印刷会社はデジタルメディアに力が入らないことになるのかもしれない。言い方を変えると,提案して立ち上げたメディアが成長していくかどうかはよくわからない。大企業のWEBを見ても,金をかけた割には,何の役にもたっていないと思われるものが多くある。明らかにコンテンツがあるところでないと,システムを作ったからといって,思うように使われるわけではないことが第2のリスクである。
情報源やエンドユーザ「人」の問題は,既存のメディアのビジネスをしている人ですら,今後どうなるか十分に考えているとは思えない。情報流通が容易になったからといって,素晴らしいコンテンツが次々作られ,人々がどんどん情報を取得するようにはならないことは明らかだ。胃袋に限界があるように,求められる情報量には上限がある。マンガが携帯電話に圧迫されたように,端的には情報接触時間の枠をさまざまなメディアが取り合うことになる。
ところが,今を20年周期のメディアのパラダイム変化の時かもしれないと考えると,将来のメディアを予測させるいくつかの兆候がみられる。それらを7月16日のシンポジウム,「顧客の顔が見えるメディア――顧客との関係で進化をはじめたメディアとビジネス」でとり上げた。一言でいえば,デジタルメディアは双方向性があり,従来の情報受信者から情報発信者に向けての情報の流れが太くなっていくという,マスメディアやマスマーケティングと逆のベクトルのものが出現しつつあるということである。
かつて日本人はなかなか自分の考え方を公にしない国民性と言われてきた。しかし今,WEBで何十万何百万の人々がひとつのサイトに登録して活発に交流している姿を見ると,たとえ1%以下の人が積極的に関与するだけであっても,新たなメディアの特質は大きく発揮されることが想像できる。紙メディアの時代から,新聞・雑誌に投書・投稿する人々はいたが,今日では電子メディアに向かって活動し始めているので,書き手と連携したボトムアップのメディア企画をしていくことが第3のリスク回避のポイントであろう。
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