包装はマーケティングツール~精工つくば工場見学記~

掲載日:2017年1月24日

2月10日午後1時からのカンファレンス「ユーザーコミュニティ(ユーザー会)の最新事例報告」も見逃せないセッションである。軟包装の精工をはじめデジタル印刷機ユーザーの生の声を聴けるからだ。

デジタル印刷の本質を学ぶ

つくばエクスプレスの終着駅・つくば駅からさらに車で30分、広大な敷地に、黒と白を基調としたモダンでシックな建物が現れる。建物には大きく「TSUKUBA2025」のサインが。とてもグラビア印刷(およびデジタル印刷)工場とは思えないが、これが精工のつくば工場(茨城県土浦市)である。 カンファレンス「ユーザーコミュニティ(ユーザー会)の最新事例報告」開催まで3週間に迫った1月20日、この精工つくば工場に、協同クリエーションの佐藤俊範氏、キヤノンPPSの宮崎進氏、コダックの河原一郎氏の各スピーカーと、モデレーターの郡司秀明ほかJAGAT職員3人が集まった。第一の目的は来たるカンファレンスの打合せだが、こうしてメーカーの枠を超えてつくばまで集結したのは、HPの液体トナー印刷機Indigoを駆使して成功している精工の生産現場を、ぜひ目のあたりにし、カンファレンスの参加者に伝えたいという思いからである。 林社長_500px 打ち合わせが進み、ざっくばらんな議論が交わされた後、林正規社長が工場を案内してくれた。Indigo20000を導入した2014年だけでも海外を含む約1000人のクライアント・同業者の見学を受け入れてきた精工。「この工場こそが商材。すべてオープンにして、『ここだったら安心だよね』と思っていただけるようにしている」と話す林社長からも、自信のほどがうかがえる。 精工青果_500px 最初に通されたのがスーパーの青果売り場を模した展示室。精工は野菜や果物などの青果の包装でトップシェア(26%)を誇る会社である。「包装の機能は安心安全を包むことから、コミュニケーションツールに進化している」(林社長)と話すとおり、籠の形状をしたフィルム包装など訴求性の高い様々な形状の包装された果物が展示されている。 売上の割合はグラビア印刷が97%、デジタル印刷は3%だが、本業の青果物包装でも有効な使い分けを行っている。例えば大手流通の新店舗のプレオープンからグランドオープンの間にデジタル印刷で包装した商品を売り、売れ筋の良かった商品だけグラビアに切り替えるといった手法である。 精工オンデマンド事例_500px コカ・コーラの250種類のネーム入りペットボトルのシュリンクラベル2億本を、Indigoをフル回転させて製作したことで知られる精工。「多版メガロット」に力を入れている同社だが、デジタル印刷ならではの小ロット・バリアブルの提案も多い。例えば父の日に「お父さんありがとう」など30のメッセージを5つのフレーバーの菓子の包装につかった事例や、55の各大学の紋章を印刷した大学合格時のプレゼントクッキー、キャンディーの包装にオリジナルの顔写真を印刷した棒付きキャンディーなど様々だ。 包装機_500px 1階は包装機械室、デジタル印刷室、製袋室、グラビア印刷室などに分かれている。 同社の大きな特徴は、包装機の製造を自社で行い、外販している点である。その理由はIndigoによる小ロット印刷に対応するため。例えば100mの小ロットの仕事が来ても、通常の後加工ラインでは500mのリードが必要になる。それでは無駄だということで、包装機メーカーをM&Aし、小ロット向けの包装機の製造を内製化した。そのことで外販先の生産地でも小ロットの包装が可能になる。 Indigo20000_500px エアシャワーを浴びてデジタル印刷室に入る。Indigo20000など3台のIndigoが稼働している。 全台に紙面検査装置が付けられているほか、デリバリー部分に自前でエアホースを作って乾燥させたり、ウェブを反転して絵柄を目視できるようにしたりと、さまざまな工夫がこらされている。 ラミネーター_500px 大型のラミネーターやカッターが並んでいる。包装機も何台も擁しており、ワンストップの製造が可能だ。商業印刷会社もパッケージ印刷に注目しているが、参入障壁は衛生面、セキュリティ面に加え、これらの後加工も要素の1つだろう。 グラビア_500px グラビア印刷機は10色機と8色機が2台。きれいな工場で、においもほとんどしないのが印象的だった。台湾製のグラビア印刷機で、品質もまったく問題ないとのことである。 精工ではこのつくば工場のほかに、宮城、高知にも工場がある。高知に新工場も竣工予定である。

ユーザーの声が聴ける絶好の機会

ざっくりだが精工つくば工場の見学記である。 感想は2つある。1つはパッケージはもはや包装資材ではなく、コミュニケーションツール、マーケティングツールであるということだ。例えばコカ・コーラのネーム入りキャンペーンなどを提案する相手はマーケティング部門であり、予算はマーケティング部門の予算から割かれる。マーケティング支援の視点からパッケージを企画・製作する必要がある。 2つめはIndigo20000などの生産機を3台稼働させるとなると、小ロット・多品種では足りなくなる。ネーム入りコカ・コーラのような「多版メガロット」の発想が必要だ。小ロット・多品種ではなく、ある程度仕事を集めた時点で多版メガロットに持ち込むなどの方法が求められてくる。 精工だけでも考えさせられること、学ぶことがたくさんあった。ユーザーからはこのほかカスタマイズパッケージなどを手掛ける協同クリエーションが、またユーザーの最新事例をキヤノンPPSの宮崎進氏、コダックの河原一郎氏が紹介する。議論もより深められるだろう。ぜひ議論に参加していただきたい。

(研究調査部 光山 忠良)

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G4「ユーザーコミュニティ(ユーザー会)の最新事例報告」

Dscoop(HP)、thINK(キヤノン)、GUA(コダック)などのユーザーコミュニティの最新動向と成功事例を紹介する。これだけ聞けば最新・最高事例が網羅できる大変お得なセッションである。このセッションを受講して得られるエキスは、人材育成や設備導入の多大なヒントになるはずである 。