ロン・ジェイコブス氏が伝えたいこと~『ザ・マーケティング』を読む~

掲載日:2017年1月30日

JAGATは世界的なマーケティング教科書として知られる『ザ・マーケティング』の共同著者、ロン・ジェイコブス氏を招へいし、page2017の初日2月8日の基調講演1で来日記念講演をしていただく。講演の前に、『ザ・マーケティング』のエッセンスを伝えたい。

顧客リストとメディアの選定が最重要要素

ザマーケティング画像

ダイヤモンド社から日本語版も出ている『ザ・マーケティング』は「基本編」「実践編」の2冊に分かれているが、原著は1冊であり、内容も「基本編」「実践編」に分かれているわけではない。約900ページにもわたる著書を通読するのは簡単ではないが、ぜひノートを取りながら、学生に戻った気分で読み込んでほしい。マーケティングに馴染みのない人でも、読破した後は、現代マーケティングの理論と手法を語れるようになると思う。

実は原題は「Successful Direct Marketing Methods」(成功するダイレクトマーケティングの手法)の第8版であり、正確にはダイレクトマーケティングの教科書である。しかし監修の神田昌典氏が「マーケティングは、もはやすべてダイレクトマーケティングになった」と語るように、ダイレクトマーケティングはマーケティングの中心的存在となってきている。狭義に捉える必要はない。著者もダイレクトマーケティングが中国では「直販」と訳され、通販と同義に捉えられていることを嘆いている。

ではダイレクトマーケティングの要素とは何か。著者によると①双方向性②広告媒体の活用③追跡・記録・分析④データベース――の4つである。顧客データを活用し、消費者行動を追跡・分析しながら、WebやDMでOne to Oneマーケティングを行っている現代マーケティングの核心をついているように思う。 特に著書が重要視しているのは顧客リストとメディアの選定である。著者はダイレクトマーケティングにおける重要度のうち「名簿/媒体」が40%、「オファー」(商品やサービスなどの提案)が20%、「コピー」と「レイアウト/フォーマット」のクリエイティブが各15%、タイミングが10%としている。商品そのものよりも、(印刷業界が重要視している)クリエイティブよりも、名簿や媒体の選定を重要視しているところが興味深い。名簿というと古臭いと感じるかもしれないが、顧客リスト、もっと広くいうとデータベースと呼んでもいいかもしれない。データベースの管理については3章、4章を割いて解説している。

メディア別にも手法を紹介している。雑誌・新聞(10、11、20章)、テレビ・ラジオ(12章)、挿入型共同広告(共同DMや請求はがきセット、13章)、テレマーケティング/テレサービス(14章)、インターネット(15、16、17章)、DM(18章)、通販カタログ(19章)である。 さまざまなコツが紹介されている。例えばDMでは「レターの署名は青で印刷すること」、「レターの追伸に最善を尽くす」「パーソナライズDMでは使えるデータをすべて使いつつ、相手の名前を入れ過ぎず、よく知っている人あての手紙のように書くといい」といったコツが紹介されている。コールセンターで重要なのは人材採用で、「『要りません』と言われるのがほとんど苦にならない人物」が重要であり、辞めていくのを止める方法も解説しており、読んでいて面白い。

顧客ロイヤリティを高める工夫

もう1つ、著書が一貫して重要視しているのは、既存顧客の大切さである。著者は「10%の顧客が90%の利益をもたらしている」「新たな顧客を1人獲得するには、顧客1人を維持するコストの5~10倍はかかる」「顧客離脱率を5%減らしただけで、25%~85%の収益アップにつながることもある」と言い切っている。重要なのは「LTV」(ある顧客との関係が継続している全期間の取引価値の総額、生涯価値)であり、「MVG」(最重要顧客)と「MGC」(成長の可能性が最も大きい顧客)である。そして排除されるべきは「MCC」(もっともコストのかかる顧客)である。 6章の全部を割いて顧客との関係構築について解説している。

CRMに必要な要素は「人」「業務プロセス」「テクノロジー」であるとしているが、「業務プロセスがまずいのに、自動化すればもっとうまく機能するだろうとあてにするのはとんでもない間違いだ」という言葉は格言であろう。 顧客のロイヤリティ向上が最重要であり、「新たな顧客を1人獲得するには、顧客1人を維持するコストの5~10倍はかかる」わけであるから、新規顧客へのマーケティングは慎重にならざるをえない。そこで著書が再三提案しているのは、テストマーケティングである。全国誌の地域枠広告やパイロット版でテストする、主要都市の新聞でテストする、ラジオも数か所、1~2週間からスタートしてみる。まず共同広告をテストする…などである。最終盤の23章では全部を割いて、「画期的アイデアに不可欠な創造性とテスト」について解説している。

読むのが先か、聴くのが先か

同書の共同著者、ロン・ジェイコブス氏の講演にはぜひ参加していただきたい。JAGATでは事前に日本の印刷会社へのアドバイスもお願いしている。Page2017のみで聴けるプレミアムな情報である。 同書を講演の先に読むか、後に読むかは、参加者の方次第である。講演の後に読みたい方は、ぜひ講演後の著者サイン会の列に並んでいただきたい。購入された方には著者が直接本にサインし、握手を交わしていただく予定である。

(研究調査部 光山 忠良)

関連セミナー:page2017カンファレンス

【基1】ザ・マーケティング ~北米最新マーケティングメソッド」

アメリカのマーケティング専門家で、『ザ・マーケティング』の著者、ロン・ジェイコブス氏にアメリカのマーケティング最新動向とメソッドを分かりやすく解説いただく。 中央大学ビジネススクール大学院の田中洋教授もマーケティング学会の重鎮で、モデレータとしてロンさんの講演をより深く導いていただく。大変意味深いセッションである。 単なるマーケティング理論だけではなく、ダイレクトマーケティングの実践に沿った、紙との親和性にもフォーカスいただく。単なるDM だけではない北米特融ともいうべきパーソナルカタログにも特別に解説いただく予定である。

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