地方で印刷需要を創り出す 文学フリマ百都市構想とは

掲載日:2019年1月28日

文学フリマというイベントを知っているだろうか。

コミックマーケットの文学版と言えば、恐らくイメージしやすいはずである。 文学フリマでは、小説や詩、ノンフィクション、エッセイなど「自分が〈文学〉と信じるもの」を書き手が持ち寄り、自費出版の書籍や、豆本、電子書籍、時にはCDなど様々なものが売買されている。

既存の出版市場は縮小を続けている。しかし、既存の市場に縛られない自由な場で〈文学〉が生み出され、活発な印刷需要を生み出しているのである。しかも、それは東京だけの事例ではなく、日本中に拡大しつつある。

今回は自費出版の市場の中でも注目すべき文学フリマの試みについて紹介したい。

文学フリマの百都市構想

文学フリマは元々、評論家・まんが原作者として知られる大塚英志が「既存の流通システムの外に「文学」の市場を作る」ことを意図して始まったイベントである。第一回は2002年に東京の青山ブックセンターにて行われ約1000人が来場。その後、順調に規模を拡大するに従い、幾度も会場を変えていった。

そんな文学フリマが2014年に発表したのが「文学フリマ百都市構想」である。それ以前にも、文学フリマは大阪での開催を行っていたが、今後はこれをさらに拡大し、全国百都市での開催を目指すという。百都市構想の発表以後、開催箇所は増加を続け、現在は東京、大阪、金沢、福岡、札幌、岩手、京都、前橋で開催。今年の2月には広島での開催も予定される。その全てが継続的に開催を行っていく予定である。

各地の文学フリマは東京の事務局が一括して行うのではなく、現地の希望者がそれぞれのイベントの責任者になる形で行われる。やる気のある個人、あるいは団体がいればノウハウやシステムを提供するという形で拡大を続けている。各開催地は相互に支援し合う関係性になっており、開催日には全国からボランティアが駆け付ける。基本的なイベントの流れはマニュアル化されているので初めての開催地でもスムーズに設営が行われ、逆に新しく開催を目指す責任者は各地のボランティアに行くことで当日の運営を覚えることもできる。今後も開催地は増えていくだろう。

未開催の場所や空白地帯はまだあるものの、既に北海道から九州まで開催地は広がっている。言ってみれば、既存の出版網とは違う形で、全国に自費出版の書籍を販売するネットワークが形成されつつあるのである。

印刷会社にとってのメリット

印刷会社の立場から見たとき、文学フリマにはどのような魅力があるだろうか。文学フリマの出展者からの受注を狙うというのは、最も分かりやすい関わり方である。他にも、自社で既に行っている自費出版があるのなら、文学フリマのようなイベントを紹介してみるのも良い。知人に配るだけだった30部程度の受注がイベントに参加するのなら100部くらいまで増えるかもしれない。また、イベントを楽しんでもらえたならば、次の本を作るモチベーションにもなるはずである。

自費出版の販路が拡大すれば結果的に印刷会社の利益にも繋がる。注文を受け、作って終わりではなく、書き手のコミュニティと繋がり地域のコミュニティを育てていくことも今後の印刷会社には求められるのではないだろうか。場合によっては、印刷会社自体が新しいイベントを始めるという手もあるだろう。そのヒントが文学フリマにはある。

page2019のカンファレンスでは、文学フリマ事務局代表望月倫彦氏が登壇し、文学フリマの様子や理念、新しくイベントを始める責任者に求められることなどを講演して頂く。他にも、今後の出版の行く末を占う新しい展開などを議論するカンファレンスになっている。

(JAGAT 研究調査部 松永寛和)

■関連イベント

2月6日~8日に開催するイベント「page2019」では、2019年の印刷マーケティングを知るためのカンファレンスを開催します。同人誌、自費出版、デジタル印刷、地域活性などの情報をビジネスに活かしたい方はぜひご参加ください。

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