eスポーツは印刷とどのように関わるか

掲載日:2019年3月18日

eスポーツという言葉を耳にすることが増えた。2018年には流行語大賞にもノミネートされ、日経MJ2018年ヒット商品番付でも西の小結として登場している。成長産業として言及されることも多いeスポーツとは何なのだろうか。

eスポーツが注目される理由

eスポーツについてよく話題になるのが超高額の賞金である。eスポーツの賞金はゲーム内課金の数%を賞金にプールしていくという形が多い。その結果、「Dota2」というゲームの大会「The International 2018」では優勝賞金が約12億円にまで膨らんだ。ちなみに、サッカーロシアW杯の優勝賞金が約43億円と言われている。4年に一度のW杯に対して、「The International」は毎年行われる大会であり、途方もない金額が動く業界であることが分かる。

eスポーツの市場規模は急拡大を続けている。eスポーツのプロシーンとして市場規模に計上されるのは、スポンサー料、放映権料、広告料、チケット代など。あるアメリカの調査会社はeスポーツの市場規模は2017年が約15億ドルだったと発表した。2018年が16億、2019年が18億、2022年には約23億ドルにまで拡大するとの予測である。

これに対し、日本のeスポーツの市場規模は2017年の時点で3.7億円とされる。世界市場の約450分の1であり、日本のeスポーツ市場は世界に比べ極端に小さい。これには一つの理由がある。ゲームの大会に高額賞金を設定することは、日本の場合刑法の賭博罪にあたるという議論があったのである。事実、つい数年前まで、日本のゲーム大会で10万円を超える賞金を設定することはかなり難しかった。

そんな中、日本eスポーツ連合Jesuという組織が結成される。eスポーツの振興を目的とするJesuは関係省庁と法的に問題のない賞金付き大会の形式を協議。これがプロライセンスという形にまとまった。これにより、プロライセンス発行以降、合計で1億5000万円を超える賞金が各大会で支払われるまでになっている。

日本市場の成長 eスポーツ元年

こういった高額大会の話題に加え、オリンピックでeスポーツを採用するかの議論などが重なった結果、2017年9月に14.4%だったeスポーツという言葉の認知度は2018年7月には41.4%と上昇した。eスポーツという言葉を去年初めて知ったという方も多いのではないだろうか。

急成長は市場規模にも表れており、2018年の市場規模は48.3億円となった。2017年比で実に13倍。2018年はeスポーツ元年と呼ぶべき年だったのである。日本はeスポーツ先進国である韓国や視聴者の多い中国、東南アジアと距離の近い恵まれた位置にあり、日本のIPホルダーと連携しやすいという好条件もあることから、今後さらなる成長が見込まれている。世界のeスポーツ市場の中でも、屈指の注目市場なのである。

印刷業界との関わり

さて、そんなeスポーツの業界であるが印刷業界とはどのように関わってくるのだろうか。eスポーツは基本的に放送コンテンツであり、ネット上で完結することがほとんどだった。しかし、人気が高まるにつれて、そういった状況は変わっていくと思われる。

先にeスポーツの先進国と紹介した韓国の事例を見てみよう。韓国ではeスポーツ専用のスタジオを放送局が複数所有している。そこで試合を放映すると同時にチケットも販売し、現地に観客を入れて興行を打っている。会場ではグッズが販売され、サインボードやポスターなども掲示される。日本で言えば、アイドルのような人気を得ているのである。

ゲームを現地観戦というのも、なかなか実感が湧かないかもしれないが、韓国で行われた「League of Legends」の大会では4万5000人がスタジアムに集まって観戦したという。観客は世界中から集まってきており、インバウンドに貢献しているとして政府から補助金が出ているほどである。興行としてのゲーム観戦は世界中で人気を博しており、日本でも広まり始めている。当然そこでは内装やポスターなどの印刷需要が発生する。

変化の背景としてあるのが、視聴者層の広がりである。これまでゲームは実際にプレイするゲーマーだけのものだった。しかし、配信の文化が成熟し、自分ではゲームをしない人もゲームの試合を観戦するようになってきている。そういった視聴者の広がりが、グッズやチケットを買ってプレイヤーを応援する文化を後押ししている。

eスポーツの市場は今後も拡大を続けていくと思われる。予想もつかないようなビジネスチャンスも生まれてくるに違いない。変化の中に生まれる新たな需要を見逃さないようにしていきたい。

(JAGAT 研究調査部 松永寛和)