コンテンツで地域を潤す 聖地巡礼というビジネスチャンス

掲載日:2019年5月9日

聖地巡礼が注目されている。勿論、本来の宗教的意味ではない。近年では聖地巡礼はアニメや漫画の舞台となった場所をファンが訪れる行為を指して使われるようになっており、その波及効果に注目が集まっているのだ。今回は、そんな聖地巡礼とビジネスチャンスについて紹介する。

聖地巡礼とは

作品の舞台になった場所を訪ねたいと思うのは自然な感情であり、作品のファンがモデルとなった場所を訪ねる行為は昔から行われていた。そんな自然発生的な行為が注目を浴びるきっかけとなったのが、2008年のアニメ作品『らき☆すた』である。作中に登場した鷲宮神社にはファンが押し寄せた。2007年の正月三が日の参拝者数が13万人だったのに対し、2008年は2.3倍の30万人に増加。その後も2009年には42万人、2010年は45万人と増え続け、2011年に47万人を記録。以降は2017年までこの数字を維持している。一時の流行ではなく持続的な人気を得たと言えるだろう。

こういった成功事例は広く知られるようになり、鷲宮神社以外にも全国各地で新たな聖地が生まれるようになった。2016年には、一般社団法人アニメツーリズム協会が発足。アニメ聖地88を制定した。海外からのインバウンド需要も狙いつつ、全国規模で聖地巡礼を盛り上げていこうとしている。

聖地巡礼の成功事例

では、実際に聖地となった場所ではどのように作品が展開されていくのだろうか? よくあるのが、アニメに登場する場所をまとめた観光MAPの配布。地域限定グッズの販売などである。これらは制作会社の方から地域に働きかける場合もあるが、地域から制作会社に話を持ちかけるというケースが多いようだ。

鷲宮神社の場合も、地域の商工会が訪れたファンをもてなすため、出版元である角川書店に連絡を取り、共同でのイベント開催やポストカードやストラップなど鷲宮限定のグッズの販売などをするようになった。一時の流行では終わらせず、作品を地域の活力へと繋げるためには地域と制作側の協力が不可欠である。

聖地巡礼が地域活性に繋がった成功事例では、地域の積極的な協力が目立っている。2011年放送の『花咲くいろは』もその一つである。富山県南砺市に本社を置く制作会社のP.A.WORKSはアニメによる地域活性に意欲的な会社であり、放送前から舞台となる金沢の湯涌温泉とは協力関係にあった。そんな中、湯涌温泉から提案したのが作中最終話で登場する「ぼんぼり祭り」を実際に行うことである。これが実現し、「ぼんぼり祭り」は以降毎年開催されるようになる。今年の令和元年7月が第九回の開催となり、地域のお祭りとして根付き始めている。

茨城県大洗町を舞台とした『ガールズ&パンツァー』も聖地巡礼の代表的な成功例である。ここでも、地域の商工会が積極的にファンを受け入れており、町を挙げての歓迎的なムードがリピーターを生む好循環を生み出した。放送は2013年だが、現在も聖地巡礼の定番的な場所の1つである。印刷に絡むところとしては、地域の看板を制作する工芸店が制作会社と掛け合いキャラクターのステッカーを販売。兼業で行っている理髪店はファンの溜り場となっている。

印刷会社の関わり方

聖地巡礼はコンテンツの力で人を動かし、地域経済を刺激するものとして大きな注目を集めている。地域の盛り上がりは作品にとってもプラスに働くため、制作会社からも協力を取り付けられることは多いようだ。ただ、競合も存在する中で印刷物を受注するためには、地域と作品への理解をアピールする必要があるだろう。

例えば、観光MAPの配布は聖地巡礼の定番だが、数度の配布で終わってしまうことが多い。後はWEB上でPDFを公開しファンが各自に印刷する形になりがちである。だが、地域の印刷会社であれば制作会社の知らない地域資源と橋渡しをしたり、印刷物を適宜補充するなどして継続的に展開することも可能かもしれない。

地元が作品の舞台となるかは偶然に頼ることになりがちだが、フィルムコミッションのように積極的に誘致するという方法もある。また、アニメは毎年無数に生まれており、全国各地が舞台となっている。今回はアニメを主題にしたが、文芸や映画作品なども含め、一度自分の地域に眠ったコンテンツがないか調べてみてはいかがだろうか? また、今はなくともいつ作品の舞台となるかは分からない。知らぬ間にビジネスチャンスを逃さぬように、アンテナを広く張っておきたい。

(JAGAT 研究調査部 松永寛和)