通年採用、採用難時代で注目される「採用ブランディング」

掲載日:2019年11月29日

売り手市場による採用難時代が続くなか、企業の知名度や待遇だけでは優秀な人材の採用は難しく、新たな手法として注目を浴びているのが「採用ブランディング」である。

「量」から「質」を重視した採用アプローチ
採用ブランディングとは、経営理念から経営者の想い、事業内容や企業の方向性、仕事内容、社員の働いている姿など、企業の価値観やありのままの姿を伝えることで学生から共感を得る手法だ。
従来は、求人媒体を通して多くの学生を会社説明会に集め、そこから筆記試験、面接を通して優秀な学生を絞り込む「量」を重視したマス戦略が主流である。しかし、多くの学生を集めたとしてもその大半が自社の価値観に合わない人材かも知れず、選考回数が増加すれば無駄な採用コストが生じる。また、売り手市場にあっては、多くの学生を集めること自体が難しく、マス戦略は今の時代には合わない。
一方、企業が欲しい人物像を描いた上で、それに共感し合致する学生に絞り込んでリーチする「質」を重視した採用アプローチができれば、コストの低減は勿論、自社の価値観に合致する優秀な人材を確保することができる。また、多くの企業が抱えている内定辞退、早期退職問題へのリスクも低減できる。その「質」を重視し価値観を軸としたアプローチが採用ブランディングである

企業の価値観を訴求し学生の共感を得る
採用ブランディングの第一歩は、自社の魅力の棚卸しと求める人材像の絞り込みである。商品・サービスのマーケティング活動では、自社の商品の魅力とそれを必要とする顧客のターゲット層(ペルソナ)は何かを考える。その思考法を採用ブランディングに置き換えると、自社の魅力や特長は何か、どのような学生に来てもらいたいか、その学生は就職先において何を求めているのかを追求することで、共感し合えるポイントを見つけることだ。その上で採用情報として発信するコンテンツをつくることが重要だ。2020年卒マイナビ大学生就職意識調査(マイナビ調べ)によると、学生が就職先を選択するポイントとして、「安定している会社」「自分のやりたい仕事ができる」が上位を占めており、「働きがいのある会社」「社風が良い会社」が続くなど、待遇や休日だけではなく、その企業の仕事に対する価値観を求めている学生が多い。学生の視点から見ても、採用ブランディングを通して価値観を訴求する重要性が伺える。

採用ブランディングの訴求に効果的な「デジタル×紙」の視点
採用ブランディングが効果的な理由として、デジタルマーケティングの進化により「個」へのアプローチが容易になったことが大きい。従来は就職サイトへの広告出稿、学校への求人などマスへのアプローチに限られていたが、採用専用Webページの立ち上げ、SNSの活用、ダイレクトリクルーティングサービスの拡充により、自社の採用情報や価値観を「個」へ直接アプローチができる。
JAGATでは、毎年「新入社員意識調査」を行っているが、「入社する会社を知るきっかけとなった情報媒体は何か」との問いに、昨年までは「学校の求人」が一番多く、二番目の「インターネット」を約10ポイントの差をつけてトップだった。しかし、今年は「(就職情報サイトを含む)インターネット」と答えた人が30%と最も多い。今の学生は、生まれた時からインターネットが存在し、デジタル環境の中で育ってきている。現代において適切な採用戦略を考える上で、ネット活用の重要性がますます高まったと言える。様々なデジタルメディアへの露出のみならず、採用サイトで彼らに自社の魅力を訴求するために、UX(User Experience)なども視野に入れる必要があるだろう。
 一方で、ある調査によると、紙・冊子の入社案内が良いとする結果もある。その理由として「手にとって見る方が理解しやすく記憶に残るから」「じっくり読むことができるから」などがあった。認知度を広めるデジタルと理解度を深める紙の両媒体の長所を活かしたPRが出来ればより効果的だ。

新卒採用は、近い将来通年採用時代の到来を迎えることで、選考の早期化、長期化傾向は益々進む。採用市場で勝ち抜くためには、常に採用情報を発信し続けることが必要になり採用ブランディングが重要になる。そうした活動が結果として、企業の取り組みを学生だけでなくすべてのステークホルダーへ伝わることで企業ブランディングにもつながる。

CS部 塚本 直樹