リモート時代のOJT教育とコミュニケーションのあり方

掲載日:2020年7月3日

OJT(On-the-Job Training)は、主たる教育手法であり、仕事現場に触れながら組織風土や仕事内容、先輩社員の人柄を知り企業の一員になる上で重要なプロセスである。

 

中小印刷会社の場合は、新入社員の人数も限られており、体系的な新人向け研修プログラムの内製化は難しく、研修機関のセミナーを受講させた後、先輩社員からのOJT教育へ移行するのが一般的だ。今年は4~5月の新人向けセミナーが相次ぎ中止となったため、急遽、教育計画を変更した印刷会社や関連メーカーも多く、リモートで学習できるe-learningや通信教育をセミナーの代替教育手段としての採用が増えている。
 
 
OJT(On-the-Job Training)は、主たる教育手法であり、仕事現場に触れながら組織風土や仕事内容、先輩社員の人柄を知り企業の一員になる上で重要なプロセスである。従来であれば、日々新人と職場で対面しながらコミュニケーションを図りOJTを行うことができた。しかし、一部が在宅勤務になることで新人と対面する機会が減るため、企業への帰属意識の醸成、学生から社会人へのマインドチェンジ、新人の孤立感の払拭、モチベーションの維持がこれからのOJTの課題となる。
オンライン会議ツールも充実し、それらを利用すれば新人とコンタクトポイントを増やすことができる。ただ、対面と比べると声をかけたい時に直ぐにかけられないためコミュニケーションの迅速性に欠けたり、会話のテンポにズレが生じたり、顔の表情や声のトーンがわかりにくく相手の真意がつかみ辛い等のオンラインならではの問題がある。
 
 
それらの問題を解消し、オンラインOJT教育を効果的に進めるには、計画的な進行と細かな配慮が必要になる。例えば、新人と先輩社員のオンラインミーティングの機会を事前にスケジュールして定例化する。進捗報告とアドバイスを繰り返して双方向のコミュニケーションを強化する。ある印刷会社では毎夕1時間とミーティングの時間を定例的に設定している。先輩社員の実際のクライアント案件をもとにして受注までの進め方を教えていく。次に、新人が取り組む課題を設定し、翌日のミーティングまでに新人にも考えさせることで自発性を促している。また、仕事の話だけではなく、雑談できる時間も作り、新人がリラックスして人間関係をつくれるよう工夫している。
オンラインコミュニケーションは、相手の細かな表情やトーンが読み取りにくいため「怒ってないかな」など、お互いに誤解が生じる恐れがある。こうした細かい点に新人は不安を抱くので、リアクションや表情、身振り手振りを普段より少し大きくする意識は必要である。
 
 
OJT教育は中小企業にとって重要な人材育成手法である。リモートワークならではのコミュニケーションのあり方を考え、部下や新入社員との連携を図ることが重要である。
 
 
JAGAT 塚本直樹