印刷品質の安定化を図るための標準印刷の確立

掲載日:2020年9月4日

印刷機・材料・工場内環境の標準化をはかり数値管理を継続することは、品質の安定と会社の利益にもなる。

 

品質の安定化とトラブル防止のための品質管理

標準印刷が確立されていると安定した印刷品質を維持できる。そのためには測定器による数値管理は大切な作業のひとつだ。しかし、この数値管理が徹底されていないため、品質管理がうまくいっていない会社もあるようだ。
標準印刷とは、印刷工程の手順、材料の標準を決め、印刷物の標準値を決め、標準通りに作業をして標準値として決めた印刷結果を生みだすことである。つまり、だれが作業しても品質にバラツキなく安定した品質で印刷する体制を築くことだ。これができれば、刷り出しから刷了まで自社で決めた色再現が実現できる。
印刷機の部品や材料は、摩耗・劣化等の様々な変動要因があるので、必要箇所を測定器で定期的に管理して数値化していれば、作業上でのムリ・ムダを少なくし、品質安定化とトラブルを未然に防ぐことにつながる。

 

作業の標準化と数値化の利点

印刷工場・機械を数値管理する利点は、オペレーションやメンテナンスの標準化が進むことで品質の安定化と生産効率の改善が見込まれる。数値化による管理項目は、機械のみならず、材料や工場内環境にまで及ぶ。
印刷機関連項目としてあるのが、胴仕立て、ニップ圧調整などだ。胴仕立てが悪いと刷版の耐刷力と網点の再現性が低下し、印刷見当が合わなくなりギア目、ショック目、ダブリ等のトラブルが発生する。ニップ圧の調整が悪いとインキが供給されない、地汚れ、ローラー目やゴーストの発生等のトラブルが発生する。こうしたトラブルを防止するためにゴム硬度計・シリンダーパッキングゲージ・非接触温度計・マイクロメータなどが使用される。
品質をチェックするためには品質管理チャートが使われる。これは、印刷機の調整状態を測ることができるパターンが埋め込まれており、トラッピングやグラデーション・極細線の再現性・インキの膜厚・グレーバランス・ドットゲイン・ダブリ・スラー・見当・擦れ・よごれ等をチェックする。これにより、印刷機の状態を確認し、社内標準から離れている場合は原因を調べて改善できる。これには濃度計・分光測色計等が使用される。
印刷工場内の環境は、印刷特性の理想環境とされる温度25℃±3℃、湿度55±5%に平均化を図らないといけない。工場内照明は色評価用光源(5,000K・2,000ルックス)の蛍光管を使用し、目視評価時における色温度の違いによる評価ムラが無いよう光源を管理する。材料関連について用紙やインキの在庫管理も印刷工場内と同じ温湿度で管理される。用紙は伸縮によるトラブルがないよう12時間以上のシーズニングが望ましい。インキも流動性が保たれるように保存しておかないといけない。

品質管理における作業の標準化や数値化についてオペレーターが勉強すべき事はたくさんあるが、品質管理の基本を正しく理解して測定器を使いチェック項目の数値化を進めていくことは工場の利益創出につながる。同時にオペレーター教育の充実化により社員を成長させることは重要なことだ。                   

 (CS部 伊藤禎昭)

 

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