DTPエキスパート、2段階制で受験者大幅増

掲載日:2020年10月15日
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DTPエキスパート認証試験は、2020年より2段階制に改定され、第53期(3月)と第54期(8月)の2回の試験を実施した。2段階制に改定したその後の状況について報告する。

前年同期比146%と大幅な受験者増

第54期試験は8月30日に学科試験が行われた。受験者には体調管理表の提出をはじめ、検温の実施、手指消毒とマスク着用の徹底、座席間隔の確保などを行い、コロナ感染対策に配慮した上で試験を実施した。

受験者数は、エキスパート:189名、マイスター:117名、アップグレード:3名であり、合計309名であった。2019年8月に実施した第52期試験は212名であり、前年同期比146%と大幅な受験者増となった。
内訳を見ると、新しく制定されたエキスパート受験者(学科試験のみ)が全体の61%となっている。
つまり、実技試験は必要ない、もしくは次回以降に受験する方が増えたことを表しており、2段階制の効果により受験者層が拡大したことが推定される。

営業部門の門戸を開くDTPエキスパート2段階制

DTPエキスパート認証試験は、文字・画像・色などのデジタル技術に強い人材を育成し、DTPを普及させるために創設された制度である。1994年以来、DTP・印刷に関する知識を問う学科試験、および課題を提出する実技試験から構成されていた。

しかし、創設から25年を越え、エキスパート試験を取り巻く状況は大きく変化した。近年では、企画・営業部門の方が30%前後となっている。
また、DTPエキスパート試験を受験する意義として、共通言語が身に付くことを挙げる方も多い。印刷業界では、営業部門と製造部門、および関係するデザイナーやクライアントとやり取りする際に、専門用語や業界特有の表現は欠かせない。若手社員や経験が少ない方は、それらの理解が深くないため、誤解が生じたり、不測の事態を招くこともある。

DTPエキスパートの学習を通じて幅広い知識を身に付けることで、業界特有の共通言語を理解し、どんな部門や立場の人とも、正しいコミュニケーションを取ることができる。

企画・営業部門の方のニーズに応えるには、独立した資格制度として学科試験を実施すべきという議論があり、エキスパート試験を監督する認証委員会でも了承された。
その結果が、DTPエキスパートとDTPエキスパート・マイスターの2段階試験である。

2段階制試験の今後

新しいDTPエキスパート試験では、実技試験は行わない。マイスター試験は、従来と同様に学科・実技の両方を受験する。
2つの試験で実施される学科試験は、同時に実施され、内容も同一である。DTPエキスパートが簡易版という意味ではない。

例えば、初回はDTPエキスパート(学科試験)を受験し、次回以降に実技試験(アップグレード試験)にチャレンジし、マイスター取得を目指す2段階方式を選ぶこともできる。
アップグレード試験の受験には期限はなく、半年後でも数年後でもチャレンジすることができる。

また、マイスター試験を受験し、学科試験に合格していれば、実技試験が不合格でもDTPエキスパートの資格を取得することになる。

DTPエキスパート(学科試験)の学習を通じて、印刷工程の全体像、入稿データや品質面の注意事項、その背景などを正確に理解することができる。営業部門の方でも、全体の制作工程や進行状況を理解、把握することができる。
実技試験を受験しなくても、DTPエキスパートの取得を目指して学習することで、その意義を実感できるはずである。

DTPエキスパートの2段階制は、その機会を利用して知識や技術を身に付けたいという人のための手段である。うまく活用し、実務に役立ててもらえると幸いである。

JAGAT 研究調査部 千葉 弘幸