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数値管理と標準化はセットで考える

掲載日: 2010年02月06日

今は計測できることが増えたので、管理方法そのものが見直されている。

印刷の標準化は生産性向上が叫ばれた1960年代からの課題であるが、今日改めて話題になるのは作業のアナログ部分が狭まってきたからだろう。かつての印刷はベタ濃度くらいしか測れない時代があったが、今は色彩計も一般的になったので、管理方法そのものが見直されている。また色の管理に関しては対象物を管理するだけでは「見え」の再現はできないので、照明光源やその明るさ等の観察条件によって観察対象の色がどのように変化するかを推定するためのパラメータを定義したCIECAM02(Colour Appearance Model 2002)がCIEから2004年に発行されている。

こういった新たな作業環境に対応すれば、いままでなかなか手をつけられなかった課題も解明できるかもしれない。だから現状の印刷作業もたくさん数値管理を導入しているところが今後有利になる可能性はある。数値管理と標準化はセットのようなものだが、数値管理の意義は認める人が増えても、必ずしも標準化の議論に加わる人は増えない。しかし標準化は他人のためにするものではなく、自社の作業のバラツキを抑え、改善点を明確にし、底上げを図るための手法であるので、数値管理をするならば当然のことである。

標準印刷を考えることと顧客の品質要求に応えることは矛盾しない。印刷のJobごと、あるいはマシンごと、校正との比較などそれぞれ標準を設けて管理することは日常何らか行っていることである。こういった管理を別個に行うのではなく、なるべくトータルな管理を指向して、有機的に関連を持たせていくことが効率的にも教育面でも望ましいからである。こういったことは自分で発明しなくても世の中のいろいろな管理メソッドを利用して、運用上の規則を企業ごとで決めればよい。

それがあると、協力工場や仕入先などと管理上の折衝が行えるようになる。本来なら仕入れの品質とコストのランク付けのようなことに数値管理は使うべきであろうが、日本ではコストを抑えても品質は求める慣習があるので、大上段にこういった目的は掲げ難い。しかし社内的には協力工場や仕入先のランクづけは行っておくべきことである。これらはずっと固定にするよりも、時々再評価をした方がいいからだ。

印刷Jobごとの品質管理と標準印刷も無関係ではない。標準印刷はあくまで基準点を明確にする意味であり、それに対して仕事のグレードの高いものは、チューンアップしなければならない。何をチューンアップするべきかは仕事や顧客によって異なってくるので、チューンアップした状態を基準点にするわけにはいかないからだ。例えば顧客の側の品質チェックが標準光源で行われているとか、デジタル校正紙にどんなものを使っているとか、個々の事象に対する対応は基準点に対してどれほどの精度で管理をするべきかというように置き換えて考えられればよいのではないか。

テキスト&グラフィックス研究会 通巻289号

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