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『印刷白書2010』刊行のご挨拶

掲載日: 2010年09月08日

世紀が変わった。最近になって、このような想いを強くします。暦の上では2001年1月1日、21世紀が始まりました。それから10年、「世紀が変わった」と強く感じるようになったのは何故でしょうか。

20世紀が静かに幕を閉じ、21世紀が幕を開ける。暦では当然のことですが「時代」はそうではないようです。21世紀という時代は、暦よりも遅れて、というより、20世紀との併走を終え、ようやく独り立ちしたのでしょう。「100年に一度の不景気」もその本質は金融資本主義の崩壊に他なりません。20世紀は「大量生産、大量消費」を可能にした時代でした。そのためのエネルギーは「化石エネルギー」でした。資源、エネルギーを求めて先進国は植民地を求めました。そして戦争。数は力、昨日よりも今日、今日より明日、進むべき方向が明確な時代でした。

「世紀が変わった」。新しい世紀は新しい時代の始まりです。多品種少量、多様化、自然エネルギー、そして「デジタル」。多くの民族、宗教が明確な主張をします。そう言えば、国家の数も増えました。企業のあり方にも変化が求められています。「公益資本主義」。中小企業でさえ、社会との協調、貢献がより求められています。国際化、高度情報化はさらに進化しています。異常気象の日常化、少子化、高齢化、これからどうなるのだろう、どうすれば良いのだろう。将来への不安が増大します。

文明の発展には、コミュニケーション手段の進化が不可欠でした。「言語」「文字」「印刷」。人が人に何かを伝える、これは本能です。その伝え方が多様化しています。多様化した結果、人が持つコミュニケーション能力は強化されたのでしょうか。「五感」はどうでしょうか。コミュニケーション手段の進化が文明の進化に影響を与えます。文明の進化は人類に何を与えるのでしょうか。

今年も『印刷白書2010』をお届けします。印刷産業、技術トレンド、関連産業の動向だけでなく、印刷産業の経営課題にも言及しています。読者の皆様には、この白書から「現在」という時代、そして「これから」という時代、私たちがどのようにコミュニケーション手段を提供すべきなのかをお考えいただければと願っております。


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社団法人日本印刷技術協会
会長 浅野 健

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