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現代感性ゾーンの感性マイスターに全印工連/感性価値創造プロジェクトは『間』をテーマに出展
パリ・ルーブル宮のフランス国立装飾美術館の1階西側に入ると来場者をまず出迎えてくれるのが「感性ジャパンデザイン展」の巨大なサインである。
その下を通って会場内に入ると、歴史感性ゾーンである。源氏物語をモチーフにして、平安の世界観を伝えるインスタレーションがデジタルサイネージに流れている。
その中を進むと、日本人の美意識という感性を育ててきた一つが華道であるということで、能舞台に飾られた生花と使用済み割り箸による生け花によって「湧き上がる生命」と「もったいない」の感性を表している。
全印工連/感性価値創造プロジェクトが『間』をテーマに出展
そして現代感性の感性マイスターには、全印工連/感性価値創造プロジェクトが『間』をテーマにして、印刷マイスター・ゾーンを構成している。そこにはクリ エーターとコラボレーションにより、デザイン性と印刷技術を高い次元で意欲的に作品化した、6冊の「アーティストブック」が出展されている。日本のデザインと印刷技術をアーティストブックを媒体として、それぞれの感性を駆使した作品世界に挑んでいる。
高橋正実+水上印刷
テーマ:「ようふくの本」
印刷の可能性として、今回はオフセット印刷で洋服を作るというアイデアのアーティストブックである。ページをめくるとTシャツ、ズボンのセットが水玉模様とニット柄、無地の3種類で、次々に出てくる。技術的には洋服を作れる用紙の選択、その用紙のオフセットでの印刷、紙を縫製する、表紙をミシンで縫うという、全く新しいチャレンジを行なうことになった。
デザインを担当した高橋氏は、「デザインは社会とつながっていて、社会の問題解決になるという考えで活動している。」今回は、オフセットの業界が洋服の業界とつながっていける。これをきっかけに、たくさんの人が応用して、さまざまにミックスされて広がっていく、これによって皆が元気になっていくと良い。社会的な広がりという意味、未来をデザインするという活動をこれかも続けていく。
(本には柄違いで3組のTシャツとパンツが綴じられている)
プリンティングディレクター:Team MIC(村山幹子、林兼明、真名子直樹、中村聡夫)
技術協力:
片山抜型製作所、久米繊維工業、福永紙工、竹尾、三菱製紙、モリサワ、森田信也(翻訳・東洋大学教授)
6つの作品に対するクリエータと担当した印刷会社からのメッセージが、紙のスクリーンにバックからプロジェクター投影され、それぞれの作品はテーブルに置 かれていている。そして『間』を表現したこのゾーンは唯一、椅子にゆっくり座って作品と向き合ってもらうことができるように構成されている。パリというデ ザインセンスが高い来場者が多い土地柄であるが、ここに来た多くが人たちが、椅子に座りながらじっくりと作品と対話しているところが印象深いところであ る。
印刷展示の空間演出
また、展示空間ではプロダクトデザイナーの岡本光市氏が、提灯構造の電球の提供で参加している。
五感への訴求力を持つ印刷メディア
絵と音だけのわずか二感の電子メディアに対して、五感に幅広く訴求できるのが印刷メディアであり、印刷物はさらに人々の感性を豊かにできると考えられる。
印刷物は新聞、雑誌、カタログ、チラシだけでなく、うちわ、Tシャツ、シールなどちょっと数えても100品目以上ある。五感に訴える感性価値創造に注目している経済産業省が、次なる日本の工場製品の国際競争力はQCDに加えて「感性」であるという発想と一致するところである。ルーブル展で得られた「感性価値を、次にビジネス価値に結び付けていくところ」(臼田 全青協議長)が大きな期待となってくる。
(相馬謙一)