ユーザ導線に活用されるPlaceEngineとは
掲載日: 2012年01月05日
AR(拡張現実)は数年前から注目されるキーワードだが、そのARを体現するための位置情報ソリューションとしてPlaceEngineがある。
すでに数年前から活用されている技術である。もともと位置情報を特定するためにはGPS通信で場所を特定する必要がある。PCにしろモバイル端末にしろ、その場所を特定して初めて地図上にマッピングしたり、近くのお店を紹介したりできる。そのためにGPS通信が必要であった。
PlaceEngineは、WiFi通信で位置を特定しようというアプローチである。無線LANなので、クライアント側は無線LANサーバを探すことしか出来ない。通常はモバイル端末を無線LANで接続しても、位置情報を特定することはできない。
しかし、PlaceEngineの場合は、接続する無線LANアクセスポイントのほうで位置情報を持っており、それをPlaceEngineサーバのほうで管理することで接続する端末に位置情報を教えられる仕組みである。具体的には、無線LANアクセスポイントのMACアドレスと位置情報を、PlaceEngineサーバに登録しておくわけである。接続するクライアント端末側は、無線LANアクセスポイントからの電波強度をあわせてPlaceEngineへ問い合わせ、位置を特定する。登録してある無線LANアクセスポイントが複数あれば(つまりモバイル端末のまわりに無線LANアクセスポイントがたくさんあればあるほど)、位置情報の精度が増す。そして、通常はGPS通信しにくい(または、まったくできない)屋内、ビルの谷間、地下などでも効果を発揮する。
上記動画は、一般ユーザが街角でモバイルを取り出して近くの店を探すといった、どちらかといえばBtoC用途を想定している。
しかしPlaceEngineが威力を発揮するのはむしろBtoB用途であろう。そしてAR(拡張現実)のインフラとしても有効となる。
例えばこちらの記事(
仙台で始まった“iPhone+リアル店舗”の「近未来ショッピング」 )にもあるように、ショッピングモールにてナビ要素を絡めて端末を貸し出し、それを支える技術にPlaceEngineを利用している。無線LANアクセスポイント(と、その場所を登録しておく)の設置と、端末利用によるARと、セットでユーザに体験してもらう仕組みである。この場合はユーザはモバイル端末が位置情報を特定できているのかどうかは知る由もないが、GPS通信とは精度の違うマーケティングを可能にしている。
ユーザがどのような導線で動いたのか、どこから来てどこへ抜けていくか、どこで滞留しているか、などのマーケティングデータにも活用できる。
単にARをユーザ体験させられるだけでなく、採用する側にもメリットがありそうだということを抑えておくことが必要だろう。
(JAGAT 研究調査部 木下智之 )