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2012年は、一般企業で数100~数1,000人単位の社員にiPadを支給するという発表が相次いだ。今後、電子カタログ・チラシと紙メディアの使い分けはどうなるのか。
2012年は、一般企業で数100~数1,000人単位の社員にiPadを支給するという発表が相次いだ。
たとえば、ANAでは客室乗務員5,400人にiPadを支給し、電子化した乗務マニュアルを提供している。これによって、搭乗時にキャリーケースに1,200ページ(バインダー3冊)という大量のマニュアルを携行することもなくなり、教育研修期間の短縮などコストを低減することができたと言う。さらには、運航乗務員(パイロット)2,500人にも同様にiPadを支給し、運航マニュアルの電子化などでオペレーション品質の向上と効率化を図るということである。
その他、大手証券、製薬会社のMR、住宅機材メーカー、生命保険などで、商品・サービスの説明用に担当者にiPadを支給するケースが増えている。従来は、パンフレットやカタログなどで説明していたが、電子化することで印刷や印刷物管理コストの削減と説明内容の充実を図るということである。
また、店頭での商品説明用にiPadを導入するケースもある。輸入車ディーラー、高級ブランド、アパレル販売、旅行代理店などでiPadを大量に導入し、電子カタログを採用している例が増えている。
動画・音声などのコンテンツを含めることができ、低コストで常に最新情報に更新することができるというメリットがある。また、iPadならではの直感的な操作性や、検索性が評価されている。
電子カタログや電子マニュアルを利用することで実現できるのは、単なるペーパーレスやマルチメディア化だけではない。
本当の効果は、販売ノウハウの共有や売上予測など、これまで実現できなかったIT化である。つまり、アクセス履歴、ログを解析することで、重要な情報を集約し、フィードバックすることである。
たとえば、ブランドショップの店頭で商品説明する際に、iPadを使用していたとする。
そうすると、どのような説明をすると商品が売れるのか、関連商品の販売につながるのか、傾向を把握することができる。また、成績上位のセールスパーソンのノウハウや手法を、全社で共有し、全体のスキルアップを図ることができる。
(iPadカタログの例:ミライタッチ)
電子チラシでは、本日のセール情報を配信している。店舗ごとの商品別クリック回数、注目度などをリアルタイムで集計してレポートすることによって、開店前の時点で商品別売上げを予測することが可能となった。これによって、店舗では追加注文などで品切れロスを回避することができる。また、予測に応じて商品陳列を変更することも可能である。
(電子チラシの例:Shufoo!)
これらは一部の例に過ぎない。電子カタログ・電子マニュアルを採用することは、単に紙メディアの置き換えではなく、高度な情報加工の入り口なのである。言うならば、紙メディアでは不可能な領分である。
一方、紙メディアならではの領分もある。量販店やスーパー、ホームセンターなどでは、折込チラシを集客アップのツールとして位置付けている。これまでの実績から折込チラシに集客効果があることは証明されている。前述のように商品別の売上げ予測とは、明らかに目的が異なる。つまり、目的に応じて両者を使い分けることで、売上げを最大化することが可能となる。
スマートフォンやタブレット端末が、今後も普及していくことは間違いない。しかし、電子カタログと紙メディアの両方を効率的に制作・発信することは、印刷会社の得意分野でもある。電子カタログ・チラシの目的とするところを正しく評価し、紙メディアと使い分けることがもっとも重要であり、印刷業界はそれを支援する使命がある。
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page2013カンファレンスでは、「iPadカタログ・チラシが必要とされる理由と最新動向」を取り上げたセッションを開催する。iPadやタブレットの電子カタログ・チラシの先端的な事例や最新動向について、貴重な話が聞けるだろう。
■2013年2月開催 page2013カンファレンス
2月7日(木) 12:30-14:30
G4 「iPadカタログ・チラシが必要とされる理由と最新動向」