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デジタルサイネージを単なる1広告媒体と考えて広告モデルで広がる可能性は、TV広告が減っているのと同じ理由であまりない。
デジタルサイネージにはいろいろな特性があるし、画面サイズも商品と並べて置く数インチのものから、ビルの壁面の巨大なものまであり、とらえどころがないようだが、家庭外(OOH)であることと、定位置で、駅にある列車の運行予定のようにそこで今必要な情報の案内(時と場所を指定するメディア)というのが定義だろう。
屋外の電子ディスプレイは珍しいものではないが、ことさらデジタルと断っていることの意味は、表示内容のコントロールが自在である点だ。これが効力を発揮するのは販売地点の近くで使える販促メディアとしての利用で、時間帯で客層が変わる交通広告とか、呑み屋のランチのように時間帯で商品内容が変わるものである。
デジタルサイネージを単なる1広告媒体と考えて広告モデルで広がる可能性は、TV広告が減っているのと同じ理由であまりない。あくまで買い手の視点に合わせてコンテンツを出す場合に振り向いてもらえるのであって、pushばかりしていると素通りされてしまう。
そもそもなぜTVCMが効力をなくしたのかを理解しないとデジタルサイネージの活用はできない。TVの普及率は高く1日平均2時間半~4時間くらいの視聴時間がある。CM比率は15%くらいなので人は1日100商品くらいを目にするだろうが、その中に自社の商品をうまくはめられるのだろうか。消費が成熟化した日本では大変な多品種化が起こっているので、商品のTVCMを流したとして、ターゲットとなる人が見ている確率はどれくらいだろうか?
スーパーなどに買物に行く人が銘柄まで指定して買うものは半分以下という。広告のセオリーとしてはTVで最初に印象づけて、売場での選択につなげるのだろうが、多品種化しているとTVCMの商品を売場で見つけてもらえる可能性は低くなる。店舗側は仕入れた商品を売らねばならないのでチラシを作るのだが、その延長上の電子広告がデジタルサイネージでもある。
またブロードバンドを使ってホスピタルチャンネルとかキャンパスチャンネルのように、TVやCATVよりもさらにセグメント化されたコンテンツを組み合わせることで、病院や学校など特定の場所では強力なメディアとなる。これは今まで法規制の中で行われてきた放送に風穴をあける力も秘めているといえるだろう。
クロスメディア研究会会報『VEHICLE』236号より