本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
クロスメディア研究会の7月定例勉強会は、「Webデザインを改めて考える」としてWebサイトのユーザビリティをテーマに開催された。
今回は「申込フォーム」を中心に取り上げた。Web上で保険や旅行などの商品を購入する場合、サイト訪問者が最後まで申込みを完了する率(コンバージョン率)は低い。そこで広告等でユーザをWebサイトに集客した後に、どのようにユーザビリティを向上することで申込完了率を向上させるか、という点を株式会社エクスペリエンス 橘氏よりお話を伺った。
まず同氏はWebが持つメディア特性について触れた。「サービスが悪い」「展示・説明が悪い」「聞きたい説明が聞けない」「顧客視点のサービスでない」などの理由で購買にいたらないのは実際の店舗と同様である。加えてWebは「セルフサービスチャネル」であることを挙げ、提供者側の思い通りにならない(例えばリアル店舗のように店員がお客を誘導できない)ため、何よりも訪問者の目線でサイトを構築することが求められている、と説明する。
Web広告研究会が会員社を対象におこなった調査では、Webサイトの平均月刊ページビューは既に2006年末時点で1600万PVを超えているという。雑誌の発行部数が多くて数十万部程度であることと比較しても、企業Webサイトは圧倒的にユーザが目にしているメディアであることがわかる。しかし実際は、トップページがありきたりでどこの企業のものかがわかりにくいデザインであったり、難解な説明用語、使いにくいナビゲーションであることも多い。
前述のようにWebは顧客視点の発想で作ることが重要である。ケータイショップで用いられる言葉遣いを例にすると、「機種変更」「契約変更」「買い増し」など社内用語をそのままユーザに伝えても理解されない。ユーザにとっては全て「機種変更」なのである。しかしWebサイト上ではそのままの表現が用いられている。
特にWebの申込フォームは、コンバージョン率に大きな差が出るため顧客視点での構築が不可欠である。一般的にサイトを訪問する人が申込完了まで到達するのは10%程度といわれ、20万人がサイトを訪問しても最後まで申込をする人は2000人であるという。
それを2倍にするにはどうすればいいか?
「広告費を2倍にする必要はない、言葉遣いや誘導ボタン、サイト構造などユーザビリティを向上させることで実現できる。クライアントに倍の利益を返すことができる」、と橘氏は明言する。同氏がわ企業に提供するフォームは何千万もするが、そこから生み出される利益を考えると1ヶ月程度で元がとれるとという。
今回の勉強会では、演習としてあるBtoBサイトと競合サイトのWebサイトを取り上げて参加者に比較をしてもらった。これは片方はWeb経由の問合せが多く、他方は少ない理由を考えさせるもので、問合せが多いサイトでは、トップページの説明が一般用語による表記であったり、問合せ欄に「見積依頼」「テスト機貸出し」などのメニューをおくなどの工夫が見られる。
また橘氏は講演の最後に制作会社の状況として、、「いまやWeb構築には様々な技術やディレクション能力が必要であり、1社ですべてを実現することは難しい。われわれはディレクション会社であるが、他の強みを持つ企業とパートナーを組んでビジネスを成功させている。」と述べた。(文責:クロスメディア研究会)