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「いらっしゃいませお客様。うちはどのような印刷物でも作って差し上げます」、「それなら不景気で半分になった売上を取り戻せる効果的な印刷物をお願い」。・・・・・
大量のチラシ配布の販促効果が薄れるいま、このような要望に印刷会社はどのように応えて行くのでしょうか。チラシ、パンフレット、One to one DM、クロスメディア、POPやサイン、キャンペーンなどいろいろな提案があります。このときにコンセプト説明に終始して実証できるモノ作りの部分が見せられないと、結局は「一部幾ら?」、「一万部刷ったらどうなる」としか問われなくなります。
提案するときには実際に動くことを見てもらう、実際のサンプルがある。「エビデンス(証拠)が直ちに提示できるモノ作り」の力を付けましょう。顧客は提案にリアリティとスピード感があるほど、即決しやすいのです。例にしたダイレクトマーケティングだけでなく、環境対応、CO2削減、MUD提案、クロスメディア提案、付加価値印刷など、印刷会社には幅広いニーズに対する多様性と柔軟性が求められており、エビデンスを示しながらの営業提案は強力な競争力になるのです。
そのために、はじめに顧客ありきの企業体質になっているでしょうか。冒頭の例では「売上を取り戻す効果的な印刷物」を求められていることを社内の共通認識にします。顧客の商品やサービスの販売方法(ビジネス)、メディア(印刷物やWeb)などを研究し深く理解するという、マーケティング志向の力を付けてください。
その上で、顧客の課題を考え抜き、解決策を立て実行・検証する提案型営業を支えるために、独自性のある仕組み作りに経営資源を集中投入していきます。自信を持って顧客に提案できる強い品目、他社には容易に真似のできない技術力、ソフトなどの独自性を持つには強みのある社外パートナーとのネットワークの存在が欠かせません。独自性を発揮できる武器として、エビデンスをスピーディに提示できる新たなモノ作りの仕組みを準備することで、継続した強みを発揮できるのです。
提案の実現に向けて仕事の全体を仕切れるプロデューサー的な人材、ITに強い人材、もの作りに強い人材、マーケティングに強い人材を、一人ずつでも良いので徹底的に教育してチャンピオンを作って下さい。高収益組織の形成です。JAGATではそのような社内の”エビデンス提案ができる人(チャンピオン)”を「プリンティングコーディネーター」と呼んでいます。彼らがパートナーを巻き込んで、ビジネスの好循環を回して収益を確保するキーマンになり、ワンストップサービスの提供にも繋がってきます。競争力を高めるためには、顧客がライバル企業と取引する理由を研究し自社の答えを持っている必要もあります。
発注者も印刷会社も未曾有の大変化に自社がどう対応していくか悩みは尽きません。景気変動だけでなく、少子化・高齢化、IT(情報技術)の進歩が自社に及ぼす影響、メディアの特性(紙、電子)と取り組みまで考えておく必要があります。関連資料や白書類に目を通し、外部セミナーなどに参加して情報収集に努め、自社の方向性を研究しましょう。
このような大変化の時代、経営者には新たに創業するような覚悟を社内に浸透させる意志が求められます。経営者と社員が自社の強みや弱みを共有し、社内のギャップを埋めて一丸となって困難に取り組み、「エビデンス提示でリアルな提案力を」つけることができるようなチャンピオンを一人でも良いからしっかり教育することが、これからの印刷会社がなすべきことなのです。
JAGAT 参事 相馬 謙一
(全日本印刷工業組合連合会 経営革新マーケティング委員会 特別委員)
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