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佐川印刷とJTB印刷、シイエム・シイと丸星といった、有力会社のM&Aで明けたような印刷業界の2011年。これら取組みの背景や最近の業界関連ニュースの背景にはどのような戦略の変化があると見るべきか。
佐川印刷(本社・京都府)がJTB印刷(本社・豊島区)を買収した。2011年1月17日、佐川印刷が同社の株式を85%保有することで合意と発表したのである。佐川印刷は年商600億円強、JTB印刷は年商60億円弱という有力中堅同士の大型M&Aとなった。
佐川印刷はかつてから課題であった首都圏での販路拡大を目指す。グループ総売上高は日本の印刷市場で有数の水準に達した。商圏が関東へ広がれば、いずれ知名度も上場会社なみに全国区になっていくだろう。M&Aで企業規模拡大の特急券を手に入れたのである。
1月22日には、自動車マニュアル編集制作、有力大手のシイエム・シイ(本社・名古屋市)が丸星(本社・港区)を買収すると発表した。両社とも自動車の取扱説明書やマニュアルの制作・編集では定評があり、シイエム・シイはトヨタ、丸星は日産が主要顧客という関係だ。
日本経済新聞によれば、シイエム・シイは、経費削減や海外展開に一体で取り組む。具体的には、検討中だったタイ現地法人の設立をやめ、丸星の現地法人を利用する。国内市場での競争より、国内勢で手を携えて海外市場へ目を転じたといえる。
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2つのケースはどちらも戦略的M&Aの活用例である。従来、印刷業界はM&Aが活発な部類とはいえなかったが、この1週間で立て続けに2件の有力企業同士のM&A発表があったことは、M&Aが印刷会社の具体的な戦略選択肢に入った表れの一つと思われる。
最近の業界動向、関連ニュースを見ていると、2010年までと流れが少し変わってきたと感じられる。大王製紙はタイに紙おむつ生産の合弁会社を設立と発表(1/5)、粘・接着製品のリンテック(本社・板橋区)はタイに子会社を設立と発表した(1/12)。
日本製紙が中国語人材を5年で50人育成(1/24)、凸版印刷がインテルと電子書籍事業で提携(1/20)、といった海外関連案件が当り前にニュースとして流れている。印刷産業も印刷関連産業も中国に限らず国内外に広くビジネスパートナーや事業機会を模索して活路を拓こうとしている。
M&Aなどはそれなりの準備や交渉が必要であり、リーマン・ショック前後の不況時に模索された構想が2011年に実現し始めたと考えられる。2011年以降は各社のこのような努力が実り、また一つパラダイムが変わって新しい時代に近づいていくのだろう。
2011年は、どのような年になるのだろうか。印刷会社は海外とどのように向き合うべきか。2月2日(水)のPAGE2011コンファレンスでは、このような短中期のテーマを取り上げ、実際にタイ進出している印刷会社経営などを招き、可能性やポイントなどを考える。
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PAGE2011カンファレンス 印刷マーケティングトラック
2011年2月2日(水)12:30~14:30
2011年の印刷市場展望 ~用紙・広告・メディア・印刷の動きを捉える~
2011年2月2日(水)15:15~17:15
印刷会社の海外利活用のポイント ~中国・韓国・タイ、印刷取引の事例から~