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PAGE2011同時開催のセミナーでは、普段聞くことができない印刷会社の生の声を聞くことができた。
PAGE2011(2/2~2/4)は、先週末に無事終了した。今回は昨年より展示会の規模を拡大し、ビジネスヒントのための情報をいろいろな角度から発信した。また、同時開催のセミナーでは、印刷会社の「生の声」を届けるセッションも開かれた。
例えば、「印刷会社の品質管理と事故防止」セミナーでは、サンエー印刷、三浦印刷、石田大成社の現場を指揮している方が、自社の実際の事故事例をはじめ、事故防止への具体的取り組みを解説した。このセミナーでは、プリプレスの現場を中心に不具合データをいかに撲滅するかに焦点を絞ったセッションになった。
不具合データといっても、その原因はさまざまあり、主なものは以下のとおりである。
1.顧客支給データに不具合がある
2.印刷会社内で赤字修正などの作業中に不具合になる
3.顧客とのやり取りの間に不具合になる
1.の顧客から支給されるデータに不具合があるケースは未だに数多く、印刷会社でも頭を痛めているという。不具合はさまざまあり、センターが合っていないデータやサイズが誤っているものをはじめ、ブラック(スミ版)のオーバープリントなど色に関係するものも後を絶たないという。
2.の印刷会社内の不具合ではその内容を分析をすると、やはりヒューマンエラーが多いという。
3.の顧客とのやり取りの間に不具合になるケースでは、初校、再校と印刷会社でデータ修正を行っていたが、最後の修正は顧客側で行いたいとの要望があり修正済データを受け取ったところ、顧客に最終データを返却しているにもかかわらず、顧客のマシンにあった初校データから一部を変更して印刷会社に入稿するケースもあるという。初校、再校の直しは反映し、最後の顧客側の修正を追加で盛り込む内容が希望だったということであるが、受け取る印刷会社はたまったものではない。
これらの対策として、講演いただいた各印刷会社ではそれぞれ工夫を凝らし事故撲滅を図っている。例えば、現場ではデジタル検査(システム)を駆使したり、独自のチェック体制やルールを作り徹底している。
しかし、これらを運用、実践するのは人間であり、いかに人間が間違えのないように取り組む環境を作ることができるか、モチベーションを保てるか、人間自体のスキルを向上させることができるかが鍵になるという。
また、オペレータ教育にも注力しスキルテストを月1回定期的に行うことにより、各自のスキル明確化とそれに伴うスキルアップ、オペレータ自身の意識向上に役立っているという。さらに、スキルマップや作業分析指導を行っている。このような、地道な活動は即効性がないように思われがちであるが、日々の積み重ねが事故撲滅(事故ゼロ)に近づく最短距離であることが証明された。
最後に、社内の人材教育はもちろん実行しているが、製版レベルが低い顧客の教育も実践している(せざるを得ない)という。しかし、顧客の製版レベルが向上し(どこの印刷会社にも出せる)印刷データを作成できるようになると、いつの間にか他の印刷会社に乗り換えてしまう顧客も存在するという。それでも、教育は継続して行わなければならないという話が印象に残った。
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