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PAGE2011セミナー開催報告。DTPからプリプレスの現場で起こりがちなトラブルを回避するためには、具体的にどのような点に注意して、データを作成すべきか。
2/3に開催されたS08「DTPに効く事故防止ポイント」では、DTPのトラブル事例をもとに、要因と対策について、カムロックシステムズの百合智夫氏に解説していただいた。
最も多く発生しやすいトラブルは、入稿データについて、モニターで見た時点と出力結果が異なることだという。以前はデザインと製版が分業で行われていたが、DTPが普及した今、オペレーターが扱う領域は格段に広がっている。期待通りの出力結果を得るためには、全工程にわたる知識をカバーした上で、用途に合わせたデータを作る必要がある。
出力トラブルに関する主な要因として、以下のようなものをあげられた。
1.画像(解像度や透明効果に関する問題)
2.カラースペース(デバイス間のデータ処理や色変換の問題)
3.入稿部品データ不足(フォント/リンク切れ)
4.コミュニケーション(クライアントとの出力側情報共有不足)
最も多い要因は1の画像関連であるという。サイズやデフォルトの数値設定が適正でないために、適切な解像度が得られないケースが多い。解決策として下記の方法を紹介している。
a. 画像サイズのデフォルト数値を確認し、適正解像度に設定
b. 個々のDTPアプリケーションの機能や特性を理解し、用途に応じて適用する。例えば、
InDesign の「情報パレット」やPhotoshopの「スマートオブジェクト」、Illustratorの「ラスタライズ効果設定」
などによって、配置画像の解像度の確認や適正解像度への修正が可能。
c. 透明効果を含む画像の作成・出力には、透明の分割・統合設定や透明画像とテキストとの関係に注意す
る。
2のカラースペースの問題は、デバイス間のデータのやりとりや色変換にともなって起こりやすく、モニタではガンマ値の設定が適正でないことも見過ごしやすいトラブルの一因となる。3は使用フォントの有無や部品データのリンク切れが主な要因であり、Indesignの「パッケージ」機能は、リンク画像や使用フォントの収集が可能な便利なツールである。
さらに2や3のようなトラブルを一括回避する手段として、Adobe Acrobat Pro の設定でワンファイル形式のPDFデータを作成することが有効だという。画像やフォント、カラー設定を全てそのまま埋め込むことが出来るため、配置画像のリンク切れや添付忘れの防止に役立つ。またプリフライト機能によって、フォントの種類や画像解像度など、印刷トラブルの要因となりそうな設定のチェックを行うことができる。このプリフライト機能には、長年にわたって蓄積されたDTPトラブル対策のノウハウが盛りこまれている。
最後の人為的な要因ともいえるクライアントとの出力側情報共有の問題だが、これについてもPDFの活用でかなり改善されるようになった。校正履歴がPDFに反映され、クライアントとの間における校正作業のやりとりが容易に行えるようになり、校正コストの削減にもつながっている。
DTPアプリケーションの機能の充実によって、出力トラブル対策は強化されつつある。
いずれにしても、データ作成から出力までを最適な方法で作業できるようにするためには、多岐にわたるアプリケーションの機能をつねに把握し活用することが重要である。