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PAGE2011 CM2開催報告。ソリューションのひとつの手法として、AWS活用事例を探る
PAGE2011の2日目、2/3(木)15:15-17:15で開催したカンファレンスCM2「さまざまなクラウド活用例」では、Amazonのクラウド活用事例について学んだ。
国内国外で様々なクラウドソリューションは用意されているが、草分けの存在としてAmazonのクラウドサービスがある(EC2, S3など)。仮想マシンの時間借りという位置づけである。セットアップ済みの仮想サーバをイメージ化しておくことで、複数台の立ち上げが容易になり、また、用済みになれば解放して終了となる。このため、トラフィックが集中しそうなときにサーバを増強したり、また逆にトラフィックが減少すればサーバを減らしたりが柔軟に可能となる。物理的にサーバを増やしたり減らしたりすることは非常に大変だしコストもかかるが、仮想マシンならそれが叶う。そして、時間あたりのコストも非常に安い。
学びing社の「けんてーごっこ」が国内事例としては有名である。斉藤社長はAWSについて本も出されているが、国内でまだまだAWS活用が少なかった時期で、非常に情報収集には苦労されたということだ。
印象的だったエピソードは、「けんてーごっこ」がマスコミで紹介されたとき、アクセスが集中してサーバがダウンしてしまった。当時はAWS導入前のよくあるホスティングサーバであり、テレビ放映の影響力で突然アクセス負荷が高まったわけである。それでサーバが落ちてしまい、機会損失となった。以後、AWS導入を進めた。
そして数年後、またマスコミで紹介されることとなった。事前にテレビで紹介になる旨を知らせてもらったため、アクセス集中を予想して仮想マシンを増強。平常時に比べて仮想サーバ台数を増やして備えるわけである。ここで物理サーバならいきなり数十台増やしたりというのは非常に大変だったが、AWSだから可能であった。
ところが、テレビで紹介されるはずが紹介されなかった(テレビ局側の編成の都合)。そのため、アクセスが集中することも当然なかった。増強した仮想マシンを削除調整し、平常状態に戻した。ここで発生したコストが、数万円強といったレベルで、非常に安かった。時間借りのため、物理サーバであれば考えられないほどコスト差がつく。
斉藤社長曰く、「実際にアクセスが集中しなくて残念ではあったが、それにしても物理サーバを数十台増やして減らして、の手間とお金に比べれば相当違う」
ただ斉藤氏は指摘するが、だからといって全てがAWSでメリットがあるかというとそうでもない、ということである。AWSは瞬間的に増強したり減らしたりのメリットなどもあるが、ずっと走らせるとコスト的に安いわけでもない。もっともっと安いホスティングもあるわけである。国内で考えても、AWSが通用する局面がそこまであるかという見極めが重要である。
すなわち、キャンペーンやプロモーションなどでアクセスに波があることがあらかじめわかっている場合や、期限つきのサイト構築などでは有利になることもある。
さらにAWS以外にもクラウドソリューションはある。これらを一通り俯瞰しておくことは、ソリューションのひとつの手法としておさえておきたいところである。
(JAGAT 研究調査部 木下智之)