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PAGE2011 CM3開催報告。企業がソーシャルメディアを活用したマーケティング活動を行ううえで心がけないといけないこととは?
PAGE2011の3日目、2/4(金)12:30-14:30で開催したカンファレンスCM3「ソーシャルビジネスのインパクト」では、ソーシャルメディアのもつ可能性、アプリの応用事例、ソーシャルグラフの本質などを考察した。
急成長をみせるソーシャルメディア市場だが、twitterやFacebook、以前からのmixiなどソーシャルネットワークはインターネットメディアのひとつと認知され、コミュニケーションツールとして日常に入りこんでいる。
特に国内ではtwitterマーケティングという言葉などからもあるように、ソーシャルメディアを企業がどのように上手く活用できるかということも注目されている。
PAGEカンファレンスCM3では、日本マイクロソフト社の事例から、企業でソーシャルマーケティング活動をするうえで注意事項や心がけを整理した。
ソーシャルメディアがもたらした動きとして、「情報量の常識が変化」「企業と顧客のつながりが変化」「企業もメディア化が可能になった」ことが挙げられる。インターネットによる情報の洪水のなか、顧客へ情報をプッシュすることが非常に困難になったが、ブログをはじめとした様々なメディアにより、顧客との双方向コミュニケーションができるようになった。そして、そのメディア設置のコストは劇的に下がり、企業も自らのメディアを持つことが容易となった。
しかしここで考えなければならないのは、そもそもソーシャルメディアというのはコントロールができないものであるということだ。ソーシャルメディアの中で交わされる情報というのは企業の操作が及ばないところである。そしてマーケティングとはそもそも企業にとってコントロールするものであるから、ソーシャルマーケティングという考え方は、矛盾の上に成り立っているということである。
ソーシャルメディアは企業のマーケティング活動のために存在しているわけではなく、ソーシャルメディアは生活者が主役のメディアである。
そのため、広告とは若干異なることを意識しなければならない。ソーシャルメディアはオンラインに載っているだけで、実社会における人間関係の構築とほぼ同じであり、自社の都合やキャンペーン情報の発信・主張だけではほとんど機能しない。そう考えると、これまでのCRMのなかの選択肢が一つ増えたというよりは、インターネットの特殊な情報コミュニケーションが少し広がり、実生活の人間関係、つまりソーシャルグラフが加わることで、顧客との関係性の構築が広がったということであろう。
日本マイクロソフト社のなかでも、どのように企業がソーシャルメディアを活用したマーケティングを行うかにおいて、社内で行動規範ともいえるフレームワークを用意している。それは、ソーシャルメディアをまずは知ることであったり、効果測定の考え方を再度学ぶことであったり、ソーシャルメディアに参加するうえでのマナーであったりする。これらは、かなり噛み砕いてしまえば「人にはちゃんと挨拶をしましょう」というような、リアルな人間社会で小学生が教えられるようなことと同じで、安易にツールとして考えず顧客とのコミュニケーションに参加していることが求められているわけである。
そのため、企業内の推進役となるべき人の要件は、関連部署と密な連携を取ることであったり、外部の成功事例や炎上などにあまりとらわれず、トレーニングの時間をじゅうぶんにとるといったこととなる。何よりもまず、自分がちゃんと使ってみること。そしてこのツールについて客観的に説明できるようになることが重要である。最終的なコミュニケーション主体は個人に帰結するため、適切な対応こそが最大のリスク回避策であることを心がける必要がある。
(JAGAT 研究調査部 木下智之)