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先日開催されたPAGE2009は大成功だったが、その中で特徴的な役割を果たしたのがデジタルサイネージである。
先日開催されたPAGE2009は大成功だったが、その中で特徴的な役割を果たしたのがデジタルサイネージである。デジタルサイネージに関しては単なる展示だけというのではなく、主催者としてJAGATの企画展示として「デジタルサイネージ&デジタル印刷の連動広告」「超高精細デジタルサイネージ」「プロジェクターを凌駕(りょうが)するインパクトを与えるデジタルサイネージ」等々さまざまなジャンルに訴求した。
2008年10月20日新聞記念日の朝、読売新聞朝刊に4人の女性モデルとURLだけの15段広告が次々と登場した。新聞広告の日に合わせて、読売新聞社、電通、groundが協力して企画広告シンブンテイメントを打ち上げたものだが、CanCamなどで有名な女性モデル4人の写真を47都道府県別に、合計188パターンの広告として掲載し、1カ月後に4冊の写真集として発売した。このところ新聞広告の元気がないので景気付けの意味も大きく、興味を引く工夫がされている。例えば新聞紙面にはURLしか書かれていないこと、いざWebを見ても謎解きのような露出しかされていないところがミソなのである。
シンブンテイメントは新聞広告を見た人間には188コンテンツあるということは分からない。Webで見たり聞いたり、ほかからの情報で徐々に188通りのコンテンツがあることが分かっていく効果を狙っている広告手法である。しかし、もともとのコンテンツが188種類あるならフリーペーパーの表紙を188通り作ってやろうと日販系の『ポノポノ』編集部は考えたのである(JAGATもこの企画には加わっている)。バリアブルプリンティングで表紙だけ異なるものを作って、フリーペーパーの配布棚のようなところに並べたら「さぞや壮観な眺めだろうなぁ」という遊び心から出発した。
少し現実に戻り、書店向けのフリーペーパー『ハナビヨリ』(日販発行)の表紙にして、写真集の販売促進に使おうということで、書棚の近くにフリーペーパーを飾ったところ、宣伝効果抜群で、どんどん写真集が売れていった。
それに気を良くして考えたのがフリーペーパー+デジタルサイネージである。日本サムスンの液晶ポスター制作&表示システム「HARUE & KEIJI」も宣伝媒体に加えたところ、大きなコラボレーション効果が得られた。実際の書店でも実験し、その効果は実証済みである。
印刷業界の真面目さか?どうも新規ビジネスに関して0 or 1のデジタルで考えがちなところがある。マルチメディアが話題になった時は業界全体でWeb制作や動画に進出したが、あまりビジネス的な効果が上がらないと「マルチメディアは儲からない。やっぱり紙だ」と、マルチメディア制作をやめてしまったところがほとんどであった。しかし、マス広告が駄目になりつつある時代には、こういう考え方ではビジネスの伸張は難しい。何でもプラスになることをadd onしていくのがアンチマス時代のビジネス技法の基本形である。ましてやAdobeDTPソフトであるCS4からは、デジタルサイネージに最適のフォーマットであるFlashがPDFのようにセーブできるのだ。
デジタルサイネージは難しく考えることなどない。電子POPとして紙と一緒に考えていけばよい。箔押しや表面加工程度にデジタルサイネージコンテンツを捉えればよいだろう。JR広告や空港のコンテンツはデジタルサイネージの専門家に任せて、電子POPだけを印刷業界が引き受けてもその数は半端ではないはずである。PAGE2009用にデジタルコンテンツを編集し直して32種類の『ハナビヨリ』コンテンツと展示した。サムソンの9画面デジタルサイネージを効果的に使用した演出は、準備時間がほとんど掛かっていない割には広告的価値は大きかった。
(『JAGAT info』2009年3月号より抜粋)