自動認識技術を利用した技術と市場が拡大している。代表的なものにバーコードなどが挙げられるが、なかでも2次元バーコードではQRコードの利用が進んでいる。さまざまな活用が考えられる中で紙メディアとの融合も始まっているが、広告宣伝物や製品プロモーションなどでは、デザインをする上で表現を制約するようなことが起こっている。しかし、今回紹介するGrid Onput ®は、見えないドットコードを印刷することで、デザイン上の制限のみならず、さまざまなシーンでの活用の可能性を開くものである。
法政大学情報科学部教授
株式会社ビジュアルサイエンス研究所
代表取締役 工学博士
吉田健治(よしだ・けんじ)
昨今、携帯電話用に2次元バーコードが多くの紙媒体に印刷されている。2次元バーコードには、最も普及しているQRコードのほかにもさまざまあるが、カメラ付き携帯電話で撮影して、コードを解析することによりURLを取得し、Webにつなぐ形態がほとんどである。いずれのコードも2次元バーコードをしっかりと狙ってカメラのピントを合わせ撮影するものであり、インタラクティブ性には難がある。また、2次元バーコードの意味を表現するために形状や色を変えることはできないため、URLを取得することに限定され、ゲームなどのコンテンツや、eコマースなどをオペレーションすることはできない。
2次元バーコードは、そのサイズが1〜3cmの大きさで目視することができ、紙面を飾るグラフィックにはデザイン上邪魔な存在である。このため、デザインを重視した紙媒体や、多くの商品を掲載し商品ごとにURLを表記したい場合には利用されづらい。さらに、2次元バーコードはコードの設定が公開されていることからセキュリティに難がある。
紙媒体を違法にコピーし、2次元バーコードだけを変更しURLの飛び先を変えて悪用される可能性がある。
以上の問題があるものの、紙媒体からインターネットにつながることは、極めて有意義である。通常、インターネットを閲覧する場合、何か欲しい情報がある、何か購入したい物がある、その動機があって初めてインターネットで検索する。すなわちインターネットとはプル型情報出力装置なのである。PCのモニタを見ていても、わずかなスペースでバナー広告が表示されるだけであり、インターネットを閲覧する動機以外の新たな情報との出合いが極めて少ない。携帯電話に至っては液晶画面が小さいためさらに限定される。
一方、紙媒体は、自宅のポストには、新聞、ちらし、DMが毎日投函され、街中では、フリーペーパーやポスターがあふれ、さまざまな案内や広告が目に飛び込んでくる。まさしくプッシュ型情報伝達手段である。当然、それらを見て興味がわき、もっと詳しい情報が欲しい、それを購入したいと動機が生じるのである。その際、これまでは、その情報や商品、サービスを手に入れるためにそれらが紹介陳列されている現場に向かったり、電話、ファックス、はがきでアプローチする。
しかし、インターネットや携帯電話が発達した現在では、URLをたたいて情報や商品、サービスを手に入れる。とは言え、あの長いURLを間違いなく、瞬時にたたくのは容易ではないし、PCや携帯電話の操作が分からない人もまだまだ多い。よほど自分にとって重大事でないとURLをたたいたりしない。ところが、2次元バーコードを専用のスキャナでタッチして簡単にWebを閲覧できたらどうだろう。
元来、さまざまな商品に関して興味の強い人は、広告を打たなくてもWebにやってくる。冷やかしやちょっとした興味本位をWebに誘導してさらなる興味をもってもらうことが、現代の広告・営業の基本である。これをDrive to Webと言う。
Grid Onput ®は、自動認識を行うために「見えないバーコード」として発明したドットパターンを印刷した紙やプラスチック、金属などの媒体の総称である。Grid Onput ®のドットパターンにはコード番号や座標情報が定義されており、媒体に印刷されたドットパターンを専用のスキャナでタッチすることで、マルチメディア情報やWebなど、さまざまな情報を呼び出すことが可能である。専用スキャナであるグリッドスキャナは、CMOSセンサに赤外線フィルタを装着した赤外線カメラで赤外線を印刷媒体に照射し、その反射光を撮影・解析する。写真やイラストなどのグラフィックやテキストの上に印刷されたドットパターンGrid Onput®を瞬時に読み取る専用スキャナとして、PC、携帯電話に継いでさまざまなシーンでの活用を可能にしている。
※Grid Onput ®、グリッドスキャナの一連の技術については著者が2005年8月に基本特許(特許第3706385)を取得している。
Grid Onput ®では赤外線を吸収するステルスインク(見えないインク)もしくはカーボンブラックをドット印刷に用い、通常のグラフィックやテキストの印刷には赤外線を反射するノンカーボンインクCMYKを用いている。通常の印刷工程にドット印刷を1工程加えるだけで特殊な印刷技術は必要なく、オフセット印刷機からインクジェットプリンタまでほとんどの印刷機で印刷可能である。
インクジェットプリンタでドットを印刷する場合、ドット印刷はカーボンブラックインク使用となる。ドットパターンは直径0.04mm(インクジェットプリンタでは0.05mm程度)の極小ドットで構成され見えにくく、高品位出力用に開発された無色透明の赤外線吸収ステルスインクを使用すればドットを完全に見えなくすることもできる。また、インクも印刷工程も全く変更したくない場合、すなわち4色印刷ではCMYKのK(カーボンブラック)をドットに使用する。この際、写真やグラフィックにCMYを使用して、その上にKでドットを印刷すればよい。ただし、CMYだけで表現するため黒が強調されず、締まらない絵となる場合がある。
また、Kでドットを印刷するため網点状になり、よく見ると薄いグレーがかった絵柄となる。これを解消するには、アイコンにのみドットを印刷し、写真やグラフィックは従来どおりCMYKを使えばよい。ただし、アイコンにのみしかスキャナをタッチできないことになる。なお、印刷する紙の種類は問わず、アート紙、マット紙、上質紙、普通紙、新聞紙、印画紙、プリンタ用紙など、どんな紙に対してもドット印刷が可能である。また、紙以外でも、伸び縮みしない媒体であれば何にでも印刷可能である。
Grid Onput ®の情報量は、2ミリ角あたり32ビット(約40億)のドットパターンを約6万5000種類生成できるため、約300兆の完全にユニークなドットコードの発行が可能である。
Grid Onput®の特長を改めてまとめると以下の5つを挙げることができる。
『プリンターズサークル』12月号より一部抜粋
[参考]
Grid Onput®を撮影・解析するグリッドスキャナで、さまざまな用途に応じて商品が開発されている。
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2007/03/05 00:00:00