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株式会社メディアテクノロジージャパン
事業企画室 担当副部長
佐々浦 映展 氏
EQUIOSNETは、ユニバーサルワークフローとうたっている。
コダックはユニファイドで、ユニファイドという言葉のほうが統合ワークフローだが、ユニバーサルも広い意味で統合ワークフローなので、ユニファイドもあるがユニバーサルもあると覚えていただければと思う。
小ロット化は印刷会社自身が進めているわけではなく、いわゆる成熟化市場のために進んでいる。印刷会社のお客様自身の商品が小口化している中で、販促物である印刷物もそれに合わせてどんどん小ロット化が進むのは、流れとして仕方がないところだろう。
よく言われていることだが、デジタルメディアの浸透によって、紙メディアが残念ながら減っている。減っていく中でどういう仕事をしていくかというと、従来あまり取っていなかった小口の仕事も取っていかなくてはいけない。
そして、それらがクロスする話だろうが、成熟市場、成熟経済でなかなか物が売れない中で、「売れるための販促物を提案してほしい」と言われ、1個1個に合わせるとどうしても小口化になる。したがって小ロット化はさらに進む。小ロット化が進むだけでなく、ロット数そのものがまだまだ小さくなると考えている。
商印と出版は違うが、例として、出版のケースを見てみたい。売上そのものは減っているが、新しい本が発行されるタイトル数自身は減っていない。ここに1つ大きな要素があると思っている。売上が減っているが、8万タイトル前後ということはここ何年も変わっていない。単価の下落もあるが、やはり大きいのは1個1個の量が小口化していることだろう。
また、1ジョブあたりの枚数も、これは日本にないのでアメリカのデータだが、印刷の先進国であるアメリカでも、小ロット化、1ジョブあたりの枚数の減少が進んでいる。
そうなると、ニーズとして小ロット化があるところで、そこをいかに取っていくかという話になる。大きな仕事がなくなったから終わりというわけにはいかないので、ロングテールと書かれているが、小口の仕事を積極的に取っていかないと、仕事自身がないという状況なのではないか。
小ロットが進む中での課題解決の期待の1つとしては、デジタル印刷がある。ここ数年、デジタル印刷による小ロットがあるが、ここで逆に押さえなければいけないのは、日本も増えると予測されているものの、この3年、5年後にデジタル印刷が主流かというと、そうではないだろう。
増えるのは間違いないし、オフセットが減るのは間違いないが、印刷方式の主流は引き続きオフセットであるので、今日のテーマの、「小ロットを前提にした印刷ワークフロー」の中でいくと、小ロットだからデジタル印刷ではなく、小ロットだけれどもオフセットも含めて考えなければいけない。ここが整理の要素の1つとしてあると考えている。
もう1つ、実際のワークフローを考える上で、どれだけのシチュエーションで小ロットの印刷物があるのか、自分なりのに分けてみた。まず、小ロットと言われているものは、当然、1つ1つが小口である。
もう一方、違う切り口の小ロット、小口ということで、バージョニングと言われるものがある。基本のものは同じだが、各店舗に合わせて一部だけ違うページを入れるなどもあると思う。
これも仕上がりだけ見ると、例えば各店舗で300部だとすれば小口になる。ところが、例えば100店舗あれば、300でも3万なので、十分大ロットである。小ロットといっても、そのものが少ないケースと、ある部分だけを捉えれば小ロットだがベースはロットが多いというものもある。
そして、在庫削減などで同じものを小口で発注するケースもある。これはバージョニングとは違う切り口だが、1個1個が1回あたり300でも、10回頼めば3,000になる。これは従来だといきなり3,000とか5,000刷って在庫して、その都度倉庫から出すという形だったが、それを小口にすると小ロットになる。そして、その変形版だが、初版・増し刷りを小口とすることで、小ロットの切り口をいろいろ見ると、デジタル印刷イコールではなく、デジタル印刷が適するものもあるし、ハイブリッドが適するものもあるし、実はオフセットのほうがいいケースもある。
このように、今日のテーマである「小ロットを前提にしたワークフロー」を突き詰めると、1つはニアリーイコール、ハイブリッドワークフローにつながるのではないかと考えている。(図1)(図2)(図3)(図4)
▲図1
▲図2
▲図3
▲図4
それでは現状のワークフローの、小ロット印刷を前提にしての課題は何なのか。
まず、どういうワークフローにするかという以前にビジネスとしてどうかというと、商談の単価が下がる。
1部あたりの価格は逆に高く取れるケースもあるようだが、1万部刷るのと100部、200部刷るのでは、やはり商談単価は下がる。そうすると、逆にたくさん仕事を集めなければいけない。
2つ目は、営業効率が悪い。今までは1日数件仕事を取ればそれだけで済んだ話が、その数では足りないので、たくさん取らなければいけない。しかし、営業の人が物理的に回れるパワーは限られるので、1件あたりの効率が落ちてしまうことがある。
そして、制作・印刷の効率が悪い。1個1個刷るための準備時間が、小ロットなら短くなることでもない。しかし、小ロットが避けられないのなら、何とかするしかないのである。
もう1つは、究極のところだが、極小ロットになるとオフでは限界がある。小ロットイコールデジタル印刷ではないと言ったが、極小ロットになると、やはりオフではできない。何部が限界かはいろいろな説があるが、大体500部から350部あたりという声が多い。
今、500部ならオフで刷っているケースは結構あるが、今後さらに小ロット化が進むと、やはり限界が出るので、オフはオフであるが、PODの併用を考えなければいけないという状況だと思う。
そこで、現状のワークフローの課題だが、現状のワークフローRIPはいろいろな機能が対応できて(図5)、かなりいろいろなことができるようになっている。しかし、小ロットではまだまだ取り組むべきことがあるのが現状である。
そして、ハイブリッドで、オフセットと併用フローにする場合の課題もある。効率的な運用をどうしていくかと、もう1つ、仕事の条件にもよるが、結果の保証性の問題がある。
PODとオフセットを別ラインで刷る場合には問題にならないが、使い分けになると、特に日本の場合、非常に演算の結果に関してのハードルがシビアである。破線の出方や角処理が違う、元のDTPでは点が10個で構成されていたのが9個になるなど、そういうことだけでも「印刷上まずい」と言われかねない。
PODとオフセット、CTP用のRIPは当然違うRIPなので、同じPDFを投げても、全く同じというわけにはいかない。これらもワークフローの課題である。
小ロットのワークフローに求められるテーマ を列挙すると、1つはオフセット印刷自身の効率化で、オートギャンギング、異種多面付けによって、印刷そのものを効率化がある。
そして、自動化では、ワークフローRIPを自動化すること、後加工の連携で効率化を上げる話がある。そして入稿、工程の効率化という話、そしてミスの抑制で、数が少ない中で、非常に単価も厳しい中で、そこでミスをしてしまうと儲けにならないので、ミス/ロスを極力抑制するという意味では検査検版も欠かせない要素と言えるだろう。
また、データの中身の直しだけでなく、色に関する直しも極力減らしていくための色に関する効率化、そして、先ほどのPODの話と被るが、より統合ワークフローによる効率化が、私なりに考えた小ロットワークフローに向けての取り組むべきテーマである。
それを1つの図にまとめたものが、これからのワークフロー(図6)であるが、既に実現しているものもあるし、ほぼ実現しているもののまだ途上というものもある。今後、この図に描いてあるような形で、個々の機能が進化充実していくのではないか。
それを2つのキーワードにまとめると、超効率化で自動化・ミス/ロスの抑制、そしてハイブリッドでPODとの統合ワークフロー、これがこれからのワークフローに求められる大きなポイントだろう。
▲図5
▲図6
次に、スクリーンはどんなワークフローを展開して、どういったものを提供するのかについて話したい。
統合ワークフローのEQUIOSNET(図7)である。おおもとは、2008年のdrupaの時にEQUIOSNETを紹介し始めたが、実際の製品は、スクリーン製PODのRIPの開発を優先していた関係で、統合ワークフローと言いながらなかなか実体が出ないで3年過ぎていた。このIGASで、ようやく統合ワークフローで紹介を始めている。
以前はTrueflowネットと言われていたが、それとEQUIOSNETがどういう関係かというと、Trueflow及びTrueflowネットはCTPのワークフローである。Trueflowは1999年に登場したので、既に10年以上たっている。
当時、既にデジタル印刷はあったが、統合ワークフローまでは、深くはなかった。TrueflowはCTPのワークフローなので、PODとの統合ワークフローでいくと、もう一段手を加える上では、それをベースにやり直すよりもリファインが必要で、Trueflowを含むさらに大きな概念、ワークフローとしてEQUIOSNETが登場した。
大きな特性、特徴としては、POD用のRIPも含めたワークフローで、バリアブルも含めた統合ワークフローとなっている。Trueflowを包括はするが、一方でCTP用のRIPもラインナップを進めていく。
実はEQUIOSのRIP部分はCTP用のRIPの上にPOD用のRIPを載せることもできるし、その逆も可能である。併用のうちは必要ないが、例えばCTPでやったものをある時期から完全にPODラインに切り替えたり、RIPの有効活用でCTP用RIPを一時的にPODにも使いたい場合に、モジュール化されているので、それを載せることができる。この中心になるのは、ワークフロー的にはEQUIOS Centerという、POD用RIPとTrueflowを含むCTP用RIPを統合管理していくものが登場する。
EQUIOSの名前の由来は、ECOLOGYとAQUEOUSの合成語である。エコと、水性インクをベースにしたインクジェットのPODのラインナップを進めているので、そこに引っ掛けている。2009年に最初の製品であるEQUIOS Pre4mが登場して、2011年、いよいよ統合システムということで登場してきた(図8)。
その特徴を幾つか紹介する。まず、製品そのもの以前に、統合ワークフローを構築していく上で、後加工の連携や、フロント側にもいろいろある。Web入稿は自社で揃えるが、課金システムやデータベース連携などをスクリーンで全部揃えるのは難しいので、オープンインターフェースで、いろいろなベンダーと連携しようと考えている。いろいろなコラボレーションのメーカーを募っており、いろいろな会社と連携し、相互にインターフェースし、検証もし、連携も深めるといった取り組みを進めている。
当然、自社製のインクジェットPODとも連携するし、ワークフローの特徴として、EQUIOS Centerを中核に、CTP用のRIPの部分、POD用のRIPの部分を揃えていく形になっている。
EQUIOSNETの主な要素を紹介する。まず、EQUIOS Online(図9)だが、ベースは以前にダイレクトアプルーブでオンライン入稿のシステムを販売していたものをステップアップして、周辺のシステムとしてラインナップしている。役割はオンライン入稿とオンラインプルーフである。
HTML5対応なので、当然Windows、Webで見られるが、iPadで見て入力することも可能である。機能的には、データのアップロード、ジョブ管理ができるだけでなく、オンライン校正で、RIP後のデータを呼び出して見ることができる。
見るだけでなく、そこにコメントを付加して、「ここはこう直してほしい」などのオンライン校正の確認とコメントの付加、そして分版表示、簡易検版機能がある。ページめくり的な機能があるので、本をめくる感覚で校正の確認ができる。
ページの差し替えでは、表示している形の中でこのページを削除する、ここと入れ替えるなどページの変更ができる。また、プレフライトの機能の中で、プレフライトされた結果のコメントの表示、そして承認機能で、確認いただいたもので承認者の承認をいただいて初めて最終的にOKとするようなソリューションになっている。
そして、各ジョブの進捗確認、ユーザごとの管理で、クライアントごとの管理の画面を用意している。これがEQUIOS Onlineである。こういったオンライン入稿で営業効率向上のシステムを用意し、それと連携が可能になっている。
特徴、特性の2つ目としては、EQUIOS垂直連携とあるが、MISとの連携がある(図10)。これはTrueflow時代からも取り組んでいることだが、今回非常に複雑な面付けも含めてEQUIOSの中で処理できるようになった。
以前のTrueflowは、フラットワーカーで、複雑な版設計は別ステーションでやっていた。そのため、どうしてもMIS連携の中で一度切れてしまったが、それをEQUIOSの面付け処理の中に複雑な面付けも取り込んだので、複雑な面付けも含めてMISリンク、連携ができるようになった。
それから、本体そのものの機能ではないが、ハイブリッドの取り組みで、スクリーン製のPODだけではなく、多く使われているミドルレンジあるいはエントリーレベルのPODとの連携もしている。
大幅な機能向上だが(図11)、インとアウトで、今までは一方的にジョブ名と色数を書き出すだけのレベルだったが、かなりいろいろな要素を書き出せるようになった。面付けの情報も、データの内容も付加して渡すことができるようになった。
また、PODのRIP側からジョブの進捗管理、実績管理もできるので、自らのデバイスを管理しているのに近い形で各社のトナーPODとの連携ができるようになったのが特徴、特性の3つ目である。
主な機能だが、部数、カラーモード、用紙/排紙トレーの選択、出力解像度の選択、あるいはノセ処理はどうするなど、いろいろと細かい機能を記述して渡すことが可能である。そして、渡すだけでなく、処理が完了したものはEQUIOSにその情報が入ってきて、EQUIOSの管理上で確認できる形になっている。
4つ目は、小ロットにおいての効率化で、自動化が大事だと述べたが、自動化の取り組みで幾つかの機能が付加されている。1つは自動化ソリューション、オートフローである(図12)。自動処理するためのアクションプランで、どういう面付けをするか、どういう色処理をするか等、予め組んで自動的に処理することが可能になっている。
それは単に自動化できるだけでなく、ケースによるが、ファイル名との連携もできる。ファイル名のルールなどをうまく使って自動化させる機能もある。Autoflowで、予め設定したルールに基づいて自動的に処理を進めていく機能が1つある。
自動化の2つ目(図13)として、オートギャンギングの機能を開発中で、近々搭載する。ページサイズ、折り設定、部数をパラメータとして入力すると、異種多面付けを自動的に配置する。人間が考えて置くのではなく、機械が自動的に配置する。こういった自動の異種多面付けが可能になる。
自動的に異種多面付けするだけでなく、後加工との連携で、異種多面付けした情報を、JDFという形で書き出して後加工機に渡すことも可能になる。複雑な面付けを後加工の方がいちいちセットするのは大変だが、それをJDFで渡す形で、後加工の方はそのJDFをセットするだけで基本的には後加工の指示ができるという機能も用意している。
ホリゾンの後加工機のイラスト面付けがあるが、それをJDFで書き出して、ホリゾンの指示端末に渡すと、機械のほうに指示が行き、オペレーターが逐一個々の指示をしなくても、JDFの指示に基づいて後加工機が異種多面付けなど複雑な面付けの処理も含めて処理していく。
自動化の3つ目は、メディア管理データベースである(図14)。いろいろな色に関わる情報、印刷デバイス個々の色の特性、用紙ごとの特性、網の特性を、メディア管理データベースに登録しておくと、どの印刷機にどの紙を使うという指示をすれば、最適なプロファイル、あるいは最適なドットゲインを自動的に選択して、データとして付加して処理する。
プラスアルファの話だが、RIPの出ているところは、コアが一緒だと全て一緒と思うが、実はそうではない。
PDF Print Engineが今のRIPの中核となっているが、その前後のところは各メーカーがチューニングしている部分がある。1つのポイントでもあるし、もう1つ、Trueflowを3,000セット導入していただいているが、それとの演算互換性も重要な要素と考えている。
Trueflowの新しいバージョンに関して、演算の互換性の維持では、EQUIOSになったから演算の互換がなくなるということはない。演算の互換は維持しながら、操作性の向上も図り、従来Trueflowではなかなかできなかったところを、新たなソフトに対応することで付加する。これらがポイントである。
大きな展開としては、オフセットは欠かせないし、PODも欠かせないが、我々のワークフローは、小ロットも取り込むが、バリアブルも含めた総合ワークフローであることが1つのポイントであるEQUIOSの一部分は2009年、2010年と、順次出ていたが、EQUIOS Centerを含む中心部分がIGASでようやく出揃いリリースしたので、実際の導入はこれからだが、今日紹介したワークフローで、入稿・校正の効率化、自動処理による効率化、印刷加工連携、ハイブリッドワークフローといった効果が順次出てくるだろう。
大きな方向性は、超効率化とハイブリッドワークフローを盛り込んだワークフローで展開していきたいと考えている。(図15)
▲図7
▲図8
▲図9
▲図10
▲図11
▲図12
▲図13
▲図14
▲図15
郡司:MISでトスバックのひだりうちわの絵があったが、あれにはギャンギングの機能がある。それはそのまま持っていって、JDFを吐き出して、断裁か何かのデータでやれるという感じになるのか。
佐々浦氏:方向性は2つある。1つは、検証はこれからだが、そういうものでやっていく。もう1つが、EQUIOSで面付けし、自動判断でやっている部分もあるので、そういった場合はEQUIOS側の面付けでやっていく。
郡司:今、印刷通販は手作業でギャンギングをやっているが、そういうことが自動でできるのと、トスバックなどのMISでもギャンギングというか、小ロット対応をやっているので、そういうものと結びついて、JDFと結びついてやるという感じか。
佐々浦氏:そうである。
郡司:もう1つ、エンジンでいろいろ出力の安定性という話があった。カスタマイズという話で、よく私のところにいろいろなトラブルの話が来るが、PDF/X-4で入稿してRIPでCMYK変換してやる場合、RGBデータにUSMをかけると色が変わる。
特に、西陣織の金色の帯があった場合、RGBにエッジをかけると、全部墨版に変わってしまう。墨版のエッジがたつので、黄色の中に墨を垂らすとグリーンっぽい色になってしまうので、結構トラブルになっている。その辺は、スクリーンのRIPはTrueflowから含めてずっとジョブチケットを吐き出してうまくいっているのか。
佐々浦氏:そうだ。
郡司:なぜかというと、「+デザイニング」とか「EBookジャーナル」を出している毎コミという会社は、
PDF/X-4で入稿している。RGBで入稿してやっているので、そこからはPDFを作る。それでEBookとして上げている。わざわざCMYK変換しないので、非常にすっきりしたワークフローが成り立つ。
そのとき、印刷に持ってくるときに、RIPでUSMをかると色が変わるので、その辺は大丈夫なのかと質問をした。毎コミのものは大丸印刷でやっていて、それは大丈夫だしきりに言われていた。
2011年11月10日TG研究会「小ロットを前提にした印刷ワークフロー」より(文責編集)