本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
今日は小ロット時代のワークフローというテーマで、まさにハイデルベルグのPrinectがそれに当たるので、Prinect Print Shopと書かせていただいた。
今回は印刷ワークフローだったので快くお受けしたが、Prinectワークフローだったらご辞退していたかもしれない。CTPを出して終わりではなく、印刷は納品して終わりなので、そこまでの一連の流れの話をしたい。
まずいきなり"DID YOU KNOW?"、「ご存じでしたか」ということで、疑問から入る。図1に1~2%と書いてあるが、これはどんな数字か。図2がヒントになっていると思う。
次はネット通販の話である。これは、実はハイデルベルグ・ジャパンがサポートさせていただいている通販会社の利益率である。多くて2%である。通常の一般商印も大体2~3%の利益率と言われているので、その中でも非常に安い印刷料金で頑張っているネット通販はご苦労があると思う。
最近、調べてみたが、とても安い。私も頼むことがあるが、お客様の大半が印刷会社ということもあるようだ。図2の上のほうは7日納期なのでこういう安い値段を出していると思うが、翌日発送は結構高いようだ。
左から2つまではオフセットのお客さんで、右はデジタルを使って通販の頑張っている会社だが、値段もオフセットのほうが安い。ネット通販の会社に限らないが、本当に小ロットである。ハイデルベルグはウルトラショートランと呼んでいるが、200部、300部は当たり前で、そんな小ロット、ウルトラショートランをどれだけ集めてなんぼという仕事をされている。
そういう方とお話ししていると、ヒントが見えている。こちら側はデジタルツールである。我々の業界がデジタル化と呼ばれてから、もう10年、20年たっていて、印刷会社もデジタル化はとっくに終わっている。
今度はWebで、次はどうだと考えていると思うが、プロセスのデジタル化というのは、あまり考えていな
い方が多いようだ。
特に、先ほど紹介した通販の印刷会社は、プロセスのデジタル化しないと、とても合わない。あの安い印刷料金で今までのやり方をしていたら、絶対できない。皆さん、ツールはデジタル化したが、それだけである。あとは何も変わっていない。
オーバーな絵(図3)を出しているが、面付けだけを見ても、お客さんのところへ行くと、何回も面付けしている。最後に大貼りもしなければいけない。「なんでこんなに面付けしなければいけないのか」と聞くと、「昔からこうだったから」というのが多い。これをどうやったら変えられるかは、あまり考えていない。
今まではこういうやり方をしていたから、それをただデジタルに変えただけでは人も減らないし、コストも変わらないし、生産性も上がらないので、特にハイデルベルグとしてはプロセスをどうやって自動化、デジタル化していけばいいのか、していかないととても昨今のビジネスには追いつかないと思っている。
図4は昔の印刷の風景である。私も大好きな絵だが、今の皆さんのやり方は、これにただモニターを付けただけなのではないか、あまり変わっていないのではないかということで、図5を描かせていただいた。大事なのは、ツールとプロセスをデジタル化して、工程を変えられるものは変えてしまうことである。最近、そのようなお手伝いをさせていただいている。(図1)(図2)
(図3)(図4)(図5)(図6)
▲図1
▲図2
▲図3
▲図4
▲図5
▲図6
Prinect(図7)とは、PrintとConnectという言葉を一緒にした、ハイデルベルグの印刷会社のためのワークフローである。ワークフローというと、どうしてもプリプレスの部門が中心で、最近デジタルもつながっているが、ハイデルベルグではワークフローは印刷会社全体の流れ、受注から納品までのワークフローをどう効率していくかを考えている。
その中で、今回は小ロットなので、Prinectのお客様が今までのワークフローからPrinectに変えてどんなメリットがあったか、少し抜き出してきた。これはコンサルも入っているので、例えば、現在どのくらいの時間がかかっているのか、どのくらいのコストがかかっているのかを、まず調べる。
そして、Prinectを入れて半年後、どうだったのかを再度チェックする。その結果「これだけ早くなった」、「これだけ安くなった」など、コンサルも含めて今やらせていただいているので、そこから抜き出したデータである。(図8)
これは今日のトップの話題、Webのオンライン入稿システムのようなものだが、もちろんPrinectにもある。そういうデータを使うと、1つのジョブあたり、大体平均して1時間くらい削減されたというデータが出ている。営業1人あたり、1つの仕事でいろいろ動き回り、時間やコストをかけているが、その辺を比較した結果、大体1時間くらい削減できたというデータがある。
一般的な印刷会社のある顧客が、次のようなことで悩まれていた。プリプレスのところに行くと、よく「あのデータはどこへ行ったのか」「今日中に出さなければならないのに、相手が休みだからわからない」などの話がいろいろと聞こえてくる。もちろんそれもコンテンツデータ、アーカイブと、いろいろなシステムをPrinectで組み合わせて使ってもらう。(図8)
Prinectならではの仕事とは、この辺ではないか。「そのリピートのデータ、どういう面付けだったのか?」「そのときはどんなインキのセットだったのか?」「印刷するときのドットゲインはどんな感じだった?」、あるいは、ヤレが何枚だったのか、準備時間をどれくらいかけたのか、印刷機の回転数はどうだったのかなど、そんなデータも含めて、Prinectの仕事である。
ただデータや面付けデータを引っ張ってくるだけではなく、その後どういう工程をしていったのかのデータもすべて呼び出せる。この辺がPrinectのコンテンツシステムの特徴ではないか。(図9)
自動面付けの話も出たが、こちらの顧客は今、仕事の半分、自動面付けができている。初めは1割や2割だったが、やっと半分までできるようになった。仕事によっては、もちろん自動面付けできないものもある。定形などいつも来るようなものは、放り込めばもうCTPが出てくるので、ノータッチである。ただデータを入れるとCTPから版が出てくるところまでこのお客さんは来ている。変わったのは1つのジョブあたり10分ほどだが、ジョブ1つで10分なので大きい。(図11)
もう1つ、プリプレスとプレスの連携だが、印刷のオペレーターを見ていると、色をいろいろ合わせたりしながら無駄なヤレをどんどん出している。その原因のほとんどは、印刷機のコンディションが変わっているのを知らないことである。
これは今日のトピックではないかもしれないが、小ロットということでは関係がある。やはり100、200部をどんどん刷らなければいけないので、準備時間も早く、ヤレもなく、すぐさっと出さないといけない。
印刷機は、シーズンや朝晩、温度などによってコンディションが徐々に変わってくる。あるいは、ブランケットのへたりとか、ローラーの減り具合とか、いろいろな要素があるが、印刷機の色は変わるという前提で考えなければならない。これは印刷機のメーカーが言っているのだから間違いない。色は一定ではない。どんなに管理してもぶれてくる。
印刷機のオペレーターには、ハイデルベルグでは「ここからここの水準で管理してください、ある幅のところでいつも一定になるようにしてください」と言っている。そのぶれに従って、本来はCTPの網点を変えなければいけない。
例えば、いつものセッティングで「ちょっと赤が多くなったな」と思うと赤を一生懸命下げているが、それはそういうコンディションになってきたのだから、赤のCTPのカーブを多少下げるような設定に、印刷側からフィードバックする。そのような仕組みがある。そうすると、1つの仕事あたり大体200枚、ヤレが減った。紙は一番高いので、結構大きいと思う。それくらいの効果があった。(図12)
CTPのほうにフィードバックしなくても、印刷機を止められるなら止めて調整するのが本来はベストである。ただ、止められないので、がんがん回さなければいけないので、どうしてもCTPのほうに任せることになる。そうすると、印刷機のオペレーターはいつもの設定で刷ることができる。これは紙代に影響するので大きかった。
あとは予定組み、スケジュールである。これは工務の方で、初めはホワイトボードに細い紙をいろいろ貼ってスケジュールしていたが、Prinectのスケジュールソフトを導入した後、その人のそういう作業が2時間くらい減って、他のほうに使えるようになったというようなデータが出た。(図13)
例えばCTPが2台あって印刷機が3台あって、今はどんな状態にあるということが、工場内でも、外出先からでも見られる。さまざまなところから状況を見ることができるし、スケジュールも、これは生産機軸で見ているが、設備が出てきて、やったもの、これからやるものといった形で出ている。
あとは、製品は納品してなんぼなので、逆にデリバリーのほうから遡ると、ちょうど印刷中だとわかる。これをクリックすると、どんな仕事でどんな絵柄なのかが見える。
今の時代は、進捗を見るだけで色は関係ないので、Androidにも対応した。営業がクライアントと話しているときに、Androidを使って進捗を見る姿はもう現実になっている。印刷機と生産管理がオンラインでつながっていて、こういうことができるようになっている。
それから、日報も結構大変である。これは印刷だけだが、ポストプレス、製本も、必要であれば実績のほうも、日報は結構大切なデータとして経営者のほうに渡っている。もともと日報を1日の最後に書くのは5分くらいだったが、そういう日報も自動的に取得する。(図14)
名前、従業員番号、シフト時間、仕事を始めるのにログインした時間、ログアウトした時間、そして何をやったか、どのくらいかかったか、ヤレはどうだったかといったデータが出るので、日報を書かなくても自動的に生産管理のほうに行く。5分くらいだが、書く時間が減ったということである。(図15)
▲図7
▲図8
▲図9
▲図10
▲図11
▲図12
▲図13
▲図14
▲図15
今まではPrinect2007の話だったが、これからは2011の話である。IGASで見てもらったものをお見せする。(図16)は印刷通販の会社である。VLF(Very Large Format印刷機)をがんがん回して儲けている会社である。ここでギャンギングしている。
付け合わせというのは日本独自の文化である。1つの刷りが110部ということなので、極小ロットである。あとで(図17)をカットしていく。そういう、VLFの印刷機で100部というのが今は当たり前で、Webを通して仕事を取っている。これで周りの印刷会社がどんどん潰れている。
(図16)の通販印刷会社もそうだが、ハイデルベルグは、いろいろな顧客のところに行って「これをやろう」
とはあまり勧めない。これはどちらかというと頂点の限られた顧客だけができるものだと思う。どの顧客も「これは儲かるからやろう」とは、とても言えない。いろいろな仕組みもあるし、設備にお金もかかるし、工場も建て直さないといけないかもしれない。
このギャンギングというのは、我々日本からの提案でできてきた。そういう機能をこれから付けて出荷しようと思っている。正式にはdrupaでさまざまな機能を付加しながら提案していこうと思っている。(図18)
(図19)(図20)
▲図16
▲図17
▲図18
▲図19
▲図20
▲図21
郡司:トンボなしなのか。JDFでやって断裁ということか。
武口氏:トンボは要らない。従来の概念を全部捨てないと、追いついていかない。これを考えたのはドイツの大学生である。ドイツの投資家がそれにお金を出してこういうことを作った。日本でも2社、3社こういうことができるのではと思っているが、全部ではない。
Webのページだが、先ほどまでの話のオンライン入稿ではなくて、Webショップである。いろいろなデザインをサポートしている。リピートのオーダーや新規のオーダーなどいろいろあるが、こういう仕組みを今作っている。
これからいただいた仕事がPrinectにどんどん入ってくるが、ギャンギングに限って言えば、いろいろな紙があるし、納期もあるし、色数もいろいろあるので、選ばなくてはいけない。
絶対必要なのは、同じ紙同士ということである。例えばOKトップコートというのを選ぶ。すると、その仕事だけを集めてくる。これは簡単である。その仕事を、面付けのモジュールが裏に出てくるので、これから印刷したい印刷機のほうにドラッグ&ドロップして持ってきてもらう。
どのルールでギャンギングするかは、ブラックボックスになってくるのではないか。もちろんサイズや、紙の縦横などいろいろなルールがあって、そのルールに従って自動的にギャンギングする。全部違うジョブ番号だが、1つのプレートにギャンギングされる。これは、私も驚いたが2、3秒でできる。ここからCTPのほうに行くと、すぐに出力が始まる。
一番大事なのは製本である。通販会社もここで一番時間がかかっている。印刷はどんどんできてくるが、断裁がネックになっているので、この辺はJDFで出して、この面付けのように、どこでカットするのか、どんな順番でカットするのかという指示が来る。
ポーラで今使っているが、ポーラのコンピュータのプログラムが自分でプログラムを作成して、まずはここで切って、右に回転90度して今度はここで切って、という順番で、断裁のオペレーターは画面を見ながら、見ているとロボットのようだが、そのとおりに回してどんどん切っていく。
ここまでやって、切ったものをどう管理するか、どうジョブ付けしていって、出荷されたという信号をどうやってお客さんに知らせるかなど、その一連の流れをもっと自動化したいと思って、今やっている最中である。それをdrupaめがけて、びっくりするような自動化ができるのではないかと思っている。
Prinectは製品名では言えない。Prinectとしか言えない。この中で100以上の製品が動いているので、製品名では言えないが、全部がPrinectである。ここだけをやりたい、面付けの自動化だけやりたい、あとはコモリでやるのも、もちろんOKである。こことここだけをやりたいというのもOKである。工程管理全体と言われると、この赤い線で括ったように統合していかなくてはいけないが、ほとんどモジュール式でできるようにしている。
どうしてもオンラインでつながらない印刷機とか製本機の場合は、ハイデルベルグではデータターミナルと言っているが、タッチパネル式のモニターを立ててもらい、スタートしたらこのボタン、仕事が終わったらこのボタンを押してもらう。そこだけ手作業だが、昔の機械の場合はそういうことをやっている。
Prinectの世界は、本当に語るときりがない。お客さんと話をしながら、「それならこの製品だろう」といった形の提案になるので、コンサルが必ず入る。これからウルトラショートランの時代なので、Prinectを使って是非儲けていただきたい。
郡司:オフセットオンデマンドという言葉が通用するかどうかわからないが、ハイデルはそういうものに関してどう考えているのか。
武口氏:あれはあれで、ありではないか。ただ1つ言いたいのは、オフセットだけを言っているわけではない。この間リコーと契約もしたし、その他、5社のPODのメーカーと直接つないでいる。それで作業シートのフィードバックももらっている。PODという使い方は、100部以下とか、あるいは可変とか、その辺を日本でどうするかだろう。
2011年11月10日TG研究会「小ロットを前提にした印刷ワークフロー」より(文責編集)