本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
郡司:1つのRIPに対して、いろいろなサイズの枚葉の印刷機がつながっていたり、インクジェットがつながっていたり、トナー式がつながっていたりして運用ができるとのことだった。
東和印刷の例でもそうだが、RIPとして使うのは良いが、例えば1つのジョブをこういうふうに振り分けるというのは実際あるのか。
三浦氏:先ほど紹介したものに関しては、すべてジョブ単位で分かれている。
郡司:このジョブはデジタル印刷で、このジョブは何とか。
三浦氏:そうである。年賀状に関しては箔押しがあるとか、これはオフだとか、ものに応じてジョブが分かれていて、かつつなげるという使い方である。
郡司:各社にお聞きしたい。非常に高性能なRIPが1つあって振り分けるのと、非常に性能の良いものが個別にトナー式の印刷機に付いているのでは、どちらのほうが良いのか。
国井氏:アグファでは、プリプレスをワークフロー化していくのは早かった。最初のApogeeというのはそうである。アグファとしては、出力ごとにばらばらに付いているRIPをただ使っていくのではなく、なるべく1個のワークフローに全部を統合していく。
郡司:統合のRIPで出るメリットだが、そこで全部ジョブのMISができるので、見える化が簡単ではないか。
国井氏:データの検査もそうである。入稿して、窓口が1つで、RIP前のデータを同じ品質に揃えていく意味では、そこを一本化したい。RIPも、今でもRIPのバージョンが違うと結果が変わってくるので、RIP前のデータもRIP後のデータも全部同じ結果を求めるとなると、一本化していったほうがいいと思う。
郡司:具体的にドイツでそのように運用している印刷会社はあるのか。
国井氏:みんなそうなのではないか。
郡司:うまくいっている会社は何とかデジタル印刷株式会社というような別会社が多いような気がするが。
国井氏:デジタル印刷に関しては、我々もまだ一緒の効率が良いとは思っていない。ただ、そういう仕様にはなっている。
郡司:富士フイルムはどうですか?
熊谷氏:ハイブリッドに関しては、XMFのもともとの開発コンセプトが、オフもデジタルもというところからスタートした。それにしたがって機能を追加してきた。最初はとにかく自動化でいろいろなデザインが出ると言っていたが、やはり、今はまだそこまで行っていないように思う。特に国内はそうだと思う。
一元管理をしたときにあまり意味がないのかというと、そうではなくて、例えばWebポータルのような仕組みを使うとなると、RIPが違ってくるとなかなか統制が取れない現実もある。
そういう意味で、一元管理するということは、RIPによって結果が違うことも含めて十分利用価値があると思っている。ただし、仕事によっても違ってくる。
特に、連丁機のようなものが最近出て来て、大量のバリアブルを大量に一気に刷る仕事の場合。例えば、我々も1分間200メーターいく連丁機、デジタル印刷機をIGASで出したが、そういうものが今のワークフローRIPでできるかというと、違うのではないか。ただ、連丁機で例えば伝票しかやらないのではなくて、伝票をやっている時間は期の終わりなどに固まっている。その他に関しては一般の商印の生産性を持たせていくことになると、今使っているような商印系のワークフローが重要になってくる。そこは一元管理したほうがいいと思う。
佐々浦氏:お付き合いさせていただいているお客様の声としては一元管理したいという声が多いが、現実はフローを分けているケースが多い。もう1つ切り口で、ハイブリッドをどこまで突き詰めるかになると、RIPがベンダーごとに違う。そうすると結果の保証性をどこまで求めるかが、課題だと思う。フローとしてジョブ管理と面付けまでは一元化できても、我々もトナー機用のRIPはないので、後ろのレンダリング以降が別になる。
そこで、今別途でやろうとしているのが、RIP後、画像化したデータをPDF化した、我々はプルーフPDFと呼んでいるが、これでどうかと考えている。ただ、これも画像解像度に限界があるので、そこの中でいろいろ試行錯誤しながら、結果の保証性と一元化の両立を目指しているところである。
武口氏:やはりハイブリッドだろう。デジタルを考えなければ、レンダラーをモジュール化しているので、同じテクノロジーのプルーフ用のレンダラーや、ハイレゾリューション用のレンダラーや、幾つもどこにでも置けて、それを一括管理できるので、今はそうやっている。
デジタルをつないでいるが、Fieryが多くて、どうしてもRIPの違いが懸念されるので、できれば今Prinectレンダラーといっているが、それをデジタルに直接つなげさせていただけないかと考えている。
三浦氏:デバイスが増えてくるとRIPの管理が大変になるので、統合したいというニーズをいただくことが多い。Prinegyも、基本的にはもともとオラクルデータベースを持っていて、どちらかというとジョブの管理サーバという意味合いが大きいように思う。
同じようにモジュール化されているので、入力処理が増えても、レンダリングが増えても、Prinegyは必要な部分だけアメーバのように形を変えて、データベースは1本でやることももともとできる、得意なRIPだったので、1つのジョブの中に面付けのパターンをたくさん持てるという機能をもともと持っていたので、お客様からは、ここのところをご評価いただいている。
郡司:私もPrinegyを見て、コンセプトが、結構いいというイメージがあった。先ほど聞いたときに、データベースパブリッシング機能も結構いけるという話だったが、ネイティブが入って直しもそれでするというイメージなのか。
三浦氏:処理をするのは、最終的にはネイティブではなくてPDFになるので、ネイティブも入稿できるというのは単に移動ができるということである。
郡司:細かい話になるが、PDFを入れ込むと、スクリーンのものはネイティブに変えてしまう。自分のところのネイティブに変えてしまうので、自由自在に変更できるので、ラストミニッツチェンジが可能という感じである。Prinegyもそういうことか。
三浦氏:入力処理をしてPDF化するが、ネイティブのPDFというか、純正のアドビのPDFを作っている。
郡司:先ほどアグファはRIPしたものを面付けるなど、RIPしたものに対してこだわりがあった。しかし、マルチパーパスで考えると、例えば中綴じ量が少し変わったり、ドブの幅が変わったりして面付けは変わると思う。そのあたりは、RIPする前のデータを貼り付けて一挙にやったほうが早いのではないか。
前は、例えば1bitTIFFなど一番いいと言われていたが、価値観がだんだん変わっていくのではないか。
国井氏:確かにRIP自体は早くなっているが、RIP後に面付けしたいというのは、ページ毎の校了を早く取っておきたいからである。そして、校了を取ったページはもう触りたくないのが正直なところだと思う。それが面付けを変えたことで一緒になってRIPされてしまうのは困る。
1個のページが、RIPが済んだ状態の校正をとってもらって校了されているとなったら、もうこのページは絶対触りたくない。それが他のページと連動して同じ台に入るからというのでまた再RIPをするのは困るので、どちらかというとスピードよりも確実性というか、流れ的にもどんどん校正を進めておけるので。
RIP済データは、きっちり切られているわけではなく、部品で持っているので、後で位置の調整などをしても、絵が切れるということはない。前と後でやっても作業上の結果にはあまり影響がないと思う。
郡司:それでは皆さんから質問を受けたい。
質問:小ロットを前提にした印刷ワークフローを導入して、うまくいっているところと苦労しているところがあると思う。その2つの間で何が違うのか。また、小ロットを前提とした印刷ワークフローを導入する際の成功のポイントをどのように捉えているのか。
佐々浦氏:もともと我々のワークフローを使っているお客さんは、小ロットからスタートしたわけではない。オフセットのCTPのワークフローを突き詰めているうちに、世の中が小ロットになってきたので対応せざるをえなくなったのである。うまく使ったというよりも、うまく使わざるを得ないというところだと思う。
一方で、もう1つのデジタル印刷という切り口で小ロットになった場合、Trueflow自身がデジタル印刷に直接ドライブするという形ではないので、そこのところは今後、統合ワークフローで取り組んでいく形だと思う。
小さいところで行くと、ハイブリッドという形の中で、TrueflowはアウトラインPDFを使っているケースがあって、そういうところでいくと、やはり仕事の特性によるのだと思う。小ロット主体の会社にTrueflowを入れても全然意味はない。そういうところは既製のワークフローでいいと思うし、ハイブリッドになったときには、本当の活用というのはこれからだと思う。
郡司:TruePressJet520は小ロットをかなり狙っていくのではないか。
佐々浦氏:あれはバリアブル系なので、1個1個の見かけは小ロットだが、ボリュームは大きい。10万枚とか。
郡司:今までは宛名印刷みたいなものでやるだろうが、これからは違うところも狙うのではないか。
佐々浦氏:ただ、ロール系は、枚数は多い。100部単位で20ページのものを1日何十ジョブ連続でやるとか、そんな感じである。
武口氏:一番苦労しているのは、Prinectを導入していただく前に、CTPが入る際に何らかのワークフローを持っていて、Prinectを導入するにあたってお客様の組織が変わる、あるいはPrinectの営業の人数が要る。
そういう意味では、組織をまずどうしようかというところから始まるので、現場からの反対がすごい。それを説明したり、「これからこういう夢があるのだから、給料を上げたいじゃないか」とか、そういうことを一緒になってやっていくのが一番、機械どうのこうのより大変である。
郡司:絶対反対はあるに決まっている。「やるぞ」と宣言した途端に「実情を考慮しながらやってほしい」とか、そういう話になってしまう場合も結構あると思う。
武口氏:やはり経営者の一言がないと我々は動けない。
郡司:たしかに、経営者の断固たる決意みたいなものが大きい。
武口氏:それと、真下にいる権力を持ったマネージャーである。必ずそういう人を立てていただくようにして、その人の意見は社長の意見とする。我々はその人とやり、あとは現場とやるので本当に人が大変である。
ただ減らしただけではなく、その人は今度こういう部署に行ってこういう役割があるとか、そういうことも話さないといけないので、本当に人である。
三浦氏:我々も似ているところがある。特に、Web to関係だとベンダーのやり方も変わってくるし、反対がすごく出るケースと、営業からすごく受け入れられるケースがある。これは製版のところも全部つながっているので、大体、チームを組んでいただいて、営業と制作と製版とか入れていただいて、それで立ち上げていくということをできるだけさせていただくようにしている。
先ほどMarketMoverの話もしたが、横軸のチームを組んでいただくというのは、立ち上げの中では大切なことだと思う。
郡司:コダックはデジタル印刷機というと非常に高い感じがある。むしろCTPの小さいほうが小ロットに入っているのか。
三浦氏:最近はコニカと一緒にやっている。
国井氏:我々のお客様でうまくいっている会社を見ていると、まずデータをきちんと作りきれるということ。検査をしっかりして、しっかりした印刷用のデータに作れる会社である。そこのところに相当力を入れて自動化とか、その辺の仕組みをしっかりされている会社はうまくいっている。
また、各現場にしっかりした責任者がいること。その方が全部の流れとか仕組みをきちんと管理してリンクしているところである。
また、オペレーターの多能工化がある。単純に、ここに人が足りないからこちらに移動する、人をあちこち働かせるという意味だけでなく、他の部門の仕事を知ることで改善が出てきて、会社全体の大きな改善につながるので、多能工化の推進をされている会社もやはり成功されている。
熊谷氏:大体皆さん同じ悩みを抱えられているように思う。
一番大事なのは、ワークフローを変えるということは会社の仕組み自体を変えなければいけないのである。先ほどデジタルプルーフしかない、道具だけがデジタルに変わったという話がハイデルからあったが、まさにそのとおりで、フローを変えなければならないとなると、人の移動が増える。
例えば、「こうやると、この辺の人がこうやって、人が効率よく動く」などと言っても、現場の人に関して言うと「俺は要らなくなるのか」と勘違いされるケースも当然ある。一番大きいのは経営者の意識、「やっていくんだ」という強い意識が大事である。それと、技術的にも実行できる方がいらっしゃるというところが一番大きいと思う。
2011年11月10日TG研究会「小ロットを前提にした印刷ワークフロー」より(文責編集)