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私はJapanColor認証制度のワーキンググループに参加している。その関係でJapanColorのプロファイルの検討会にも参加していた。もう1つ、国際標準化の仕事もしており、今、RGBワークフローの国際標準を日本から提案している。
RGBワークフローでも、ICCプロファイルは非常に重要な位置づけになる。日本規格協会の下にRGBワークフローの国際標準の原案を作っている委員会があり、そちらの立場でもプロファイルの検討会に参加していた。
今日は特にJapanColor2011のプロファイルのガマットマッピングについて説明する。
ICCプロファイルとは、図1のような構成をしている。まずプロファイルのヘッダーがあって、そこに基本情報が書かれている。それ以外は、タグがついたデータのまとまりとして、このファイルの中に保存されている。それがタグテーブルで、どこにそのデータがあるかが参照できるような形になっている。
JapanColor2011のプロファイルには、図1右にあるような10個のタグのデータが含まれている。desc、ディスクリプションタグとはプロファイルの説明が書かれているもので、wtpt、ホワイトポイントタグはJapanColor2011の紙の白の値が含まれている。
それから、著作権情報や色域情報が入っているが、A2Bは0から2まで、B2Aが0から2まで、ここがICCプロファイルのメインの部分になる。この中の、青で書かれているA2B1とB2A0、B2A1が、たぶん皆さんがよく使うタグになると思うので、今日はここについて説明する。
A2Bというのは、入力したCMYKでどんな色が再現されるのかを算出するためのパラメータが保存されたデータである。B2Aは逆に、入力したCIELabで表される色を再現するために、どういったCMYKですればいいのかを算出するためのパラメータが入っている。
もう1つ、ICCプロファイルで重要なのは、レタリングインテントという、色変換するときの意図や目的を大まかに分類したものである。ICCでは3つのレタリングインテントを準備するようになっている。1つ目はPerceptual(知覚的)というもので、2つ目はColorimetric、(測色的)、それからSaturationである。
Colorimetricというのはよく使われるかもしれないが、これは色域内の色に関しては測色的に一致させて再現させる、そのための変換が記述されているものである。
例えば印刷で再現できないような、印刷の色域外の色が入力された場合、そこの色に一番近い色域の内角上の色に変換されることになる。そのために色域外の色が入ってきた場合は階調がつぶれてしまう、階調がなくなってしまうという問題もあるので、入出力の色域の差が小さいケースでよく利用されるものである。
一番多い例としては、プルーフ、色校正を出力するときである。これは印刷のターゲット入力に対して、色再現域の差がそれほど大きくないので、印刷で再現される色をプルーフ上で再現するために測色的な一致、Colorimetricを使う。
Perceptualというのは、階調を少し圧縮することで、色域外の色も出力の色域の中に、階調がなるべく損なわれないように圧縮をして再現させるときに使われる。この場合、入出力の色域差が比較的大きい場合によく使われる。
RGBで入力された場合、AdobeRGBやsRGBは印刷色再現域より広い色が入力されるので、そういった色の階調をなるべく損なわないように印刷色再現域の中に押し込んで色変換する。これがPerceptualである。
Saturationとは、圧縮をかけると彩度的に少し落ちてしまうので、例えばグラフィック等で少し濁った感じになり、見栄えが少し悪くなってしまう。色が、オリジナルの色の印象や色を残すよりも、より見栄えをよくして出力したいという目的のために準備されているものである。
主にグラフィックスの出力に適しているが、ICCでもここの定義については非常にあいまいで、あまり詳しく、こういう条件で作ることも規定されていないので、どういった色再現になるかは、プロファイルの作成者に依存してしまう。したがって、一般的に印刷用の用途ではSaturationはほとんど使われていないのではないか。
先ほどA2B0、1、2と数字があったが、0がPerceptualの色変換、1がColorimetric、2がSaturationを表している。
(図1)(図2)
▲図1
▲図2
まず、A2B1、ColorimetricのA2Bに関しては、基本的に、CMYKからそれで再現されるLabの色に対して変換を行うので、色再現特性データとして1,617色のCMYKの組み合わせのパッチを出力して、それを測定したデータを使う。
そのデータを使って、足りない部分を補完してやれば、基本的にはA2Bは簡単にできてしまう。ただ、実際には、測定データをそのまま使ってしまうと、かなり階調性がぐにゃぐにゃっとした感じのまま作られてしまう。
これは、特性データを取っているときにも面内ムラなどがあるので、先ほど1,617色のチャート図が出ていたが、例えばあのチャートの中で左上のほうは濃いめに出力されて、右下のほうが薄めに出力されてしまうと、それぞれのパッチが少し濃いめになっている色や少し薄めになっている色などいろいろ混ざってきてしまう。そういったものでそのままA2Bを作ってしまうと図3のグラフのようにぐにゃぐにゃしてしまう。
図3のグラフは少し見方が難しいが、横軸は入力のカバレッジを示している。これは10%上のカバレッジのデータに対して、差がどれくらいあるかというものをプロットしたものである。
例えば0のサイアンのところは、0%、すなわち紙白と、10%のサイアンのΔL*がどれくらいあるかというものをプロットしている。その隣の1のところは、1%と11%のサイアンのΔL*がどれくらいあるか。それをずっとプロットしていったものである。
これが、例えばJapanColor2001の場合は、かなりきれいに、スムーズに流れてきている。何を示しているかというと、例えばこれが横まっすぐになっていれば、全部L*がカバレッジに応じて等間隔に増加していっていることになるし、なだらかに下がっているような場合も、その間隔がある一定の割合で徐々に増えていっていることを示している。
したがって、このようにうねうねしているのは、間隔が詰まったり、少し開いたりがランダムに出てきてしまう特性があるので、これは諧調的にはあまりよくないので、改善するために、測定データに対してスムージングの処理をエックスライトにお願いしてやっていただいた。今使われているのは、うねりをかなり改善した形になっている。
下のほうは、ΔC*でどう変化しているかを見たものである。
これはΔhueで見ている。これも色相角が微妙に、例えばサイアンの色が微妙にブルー寄りになったりマゼンタ寄りになったりと、ふらふらしているものが、ある一定の方向で変化するようになっていくように改善されている。
こういったスムージング処理を入れることで、逆に、初期のバージョンの場合は実際に測定したデータに対してA2Bでもう一度予測したときにどれくらいの精度で予測できるかを評価すると、1,617色の平均色差で0.12、最大でも1.39と、もともとのデータをかなりよく予測できていたが、スムージングの処理をかけて多少ずらしてしまうために、スムージング処理後のデータを作ると平均色差が0.46、最大色差が1.73と、多少増えてしまう。
ただ、増えるといってもそんなに大きな色差ではないし、階調性のほうがより重要なので、このようにスムージング処理をかけた値でJapanColor2011のプロファイルを作るということになっている。(図3)(図4)
▲図3
▲図4
次はB2Aのほうだが、B2AはLabの再現したい色をどういうCMYKの色で変換するかで、LabからCMYKへの変換になる。この中にも大きく分けると2つのことをやらなくてはいけない。1つは、入力されるLabの値には印刷再現域外のもっと鮮やかな色も入ってくるので、そういう色も含めて全部入力された色を出力色域内へ変換するという、ガマットマッピングという処理が必要になる。
全部が出力の色域内に入ったら、今度はそのLab値を再現するためのCMYKに変換するという、色分解、カラーセパレーションという処理をかけて、それによってもともとの入力されたLab値に対応するCMYK値が決まってくる。
色分解のほうも、例えばLabの値が50、0、0というニュートラルグレーの色を出力しようとしたときに、それはCMYKでどういう組み合わせで出すかは一意に決まらない。ここにあるように、例えば墨は全然入れないでCMYの値を58.9、51.0、52.4というふうな組み合わせで出しても50、0、0という色が再現されるし、墨を50%くらい入れてCMYの値を27%くらいにしても、この50、0、0というのは出てくる。
これをある一定のルールで変換しないと、CMYKで分解した後の階調の連続性が保てなくなるので、墨版の生成条件と、総量制限、すなわち総インキ量の条件決めが必要になる。そういったものを決めて、その条件のもとでガマットマッピングされた後のLabの値をCMYKに分解するということが行われる。
今日はガマットマッピングの話なので、ガマットマッピングについて、さらに説明していく。B2Aの中でもB2A0とB2A1というものがあった。B2A0はPerceptual、B2A1はColorimetricだが、基本的にColorimetricは、色域内の色は測色的にきかせるために、Labの値としては動かさない。入力されたLabの値をそのまま出力したいので、この中は動かさずに、出力の色域外の色に関しては一般的には色差最少となる内角点に変換するというふうな処理を行う。
したがって、誰がやっても同じような原図が出てくるような、それほど難易度が高くないことになる。多少あるのは、色域外の色をマッピングするときの色差にL、C、Hで重みをつけたり、単純なΔEではなくてΔE2000を使ったり、そういった工夫は多少あるが、基本的にはそれほど工夫する要素は少ない。
一方のPerceptualのほうは、色域の中の色も階調性を維持するために少し圧縮をかけるし、色域外の色も、そういった圧縮をかけて入れていく。このときのいろいろな色の領域によって、どれくらい圧縮をかけて、どういう方向に圧縮をかけていくのかがポイントになっていく。ただ、どれくらい圧縮をかけたらいいのか、どういう方向で変更していったらいいのかは、プロファイルの利用目的によってかなり変わってくる部分がある。(図5)(図6)
▲図5
▲図6
ここでは、エックスライト社が最初に作ってきた初期バージョンのJapanColor2011プロファイルの評価結果をまず紹介しておく。
ここで緑と青と赤と、3種類プロットされているが、緑がJapanColor2001のプロファイルの再現色、青がJapanColor2011の初期バージョンのものである。赤は、富士ゼロックスが市販のプロファイルをいろいろ評価したときに、ディスプレイと近い再現ができるプロファイルを、参考のためにプロットしている。
ここでプロットされているのは、入力された色がもともとJapanColorの色域内の色の場合にどういう変化をしているかというものである。これで見ると、特徴的なのは、例えばこの辺の領域でJapanColor2001の緑の点が少し内側に入っている。こうしてみると、JapanColor2001は、特にこういう周辺の高彩度の領域で彩度を少し低めにマッピングしていることがわかる。
図8は同じものをL、Cの、明度と彩度の面にプロットしたものである。これで見ると、JapanColor2001は明度も低めにマッピングしているのがわかる。青と赤に比べて、明彩度低い方向にマッピングしている。
一方のJapanColor2011の初期バージョンは、例えばこの辺のデータを見るとわかるように、中低彩度領域で明度を高く、上のほうに全部向かっている特徴がある。
同じように、色域外の色がどこにマップされるかをプロットしてみた。これはかなり3つのプロファイルに差があって、傾向としてわかりにくいものになっているが、LCに同じものをプロットしたほうを見ると、青がみんな明度が高い方向にマップされているのがわかる。
それから、図9は同じJapanColor2001とJapanColor2011の初期バージョンとプロファイラーAのグレー軸のマッピングを見たものである。グレー軸の入力のL*に対して出力のL*はどういうふうにマッピングしているか、変換しているかを表している。
これで見ると、赤と緑はほぼ一致していて大体45度の傾きのライン上に乗っているので、JapanColor2001とプロファイラーAは、グレー軸に関しては、基本的には入力に忠実に出力しているということが言える。しかし、JapanColor2011の初期バージョンでは、中明度から高明度の領域にかけて、明度を少し上げるような変換をしているのがわかる。
こういった初期バージョンの評価結果として、この検討会に参加された印刷会社が実際の画像を変換させたときの評価結果というものをシェアしている。このときに挙がっていた意見としては、JapanColor2011のβバージョンは変換後に調整なしで出力するときは結構明るくきれいな仕上がりになっている。
これは、先ほどの傾向としても、明度を少し高めに持っていったり、JapanColor2001のように彩度を落としたりしていないので、出力したものの見た目は、少し明るくてきれいな感じの仕上がりにつながっている。
ただし、変換後のCMYKの値を見ると、反対色、補色成分が非常に小さかったり、もしくは全部なくなっていたりということがあって、CMYKになってからCMYKで色調整しようとすると、0になっているところはもう変えようがないので、調整がしづらそうだというような意見が出ていた。
変換後にディスプレイの印象と異なるというのは、色変換をすると中低彩度領域の色は全体的に明度をもっと上げているので、ディスプレイ上でプロファイルをかけてシミュレートさせると、全体的に画像がぱっと明るく変わってしまう。
そのために、RGBでレタッチしようとしてもディスプレイ上の色がプロファイルをかけたときとRGBの後では変わってしまうので、なかなか素人がレタッチするのは難しいだろう。熟練者でないとRGBのレタッチもしづらそうだという意見も出ていた。
それから、明るい肌色が少し飛び気味になる。これも明度が明るく変換されているので、そういった傾向につながっていくと言える。写真のハイライトが若干飛びすぎというのも同じである。
もう1つ、各社が気にしていたのは、JapanColor2001のAdobeが作ったプロファイルと比べてどうかである。JapanColor2001ならこうだったのに、今度のはこうなっている。それならJapanColor2001と同じになるのが本当にいいのかどうかという議論もあったし、JapanColor2001でさらに改善すべき点があるのではないかという議論もあった。
ただし、こういったところは、やはりプロファイルの使い方に依存する。いろいろな意見が出てきても、相反する部分も結構ある。例えば、明るくてきれいという意見もあるし、その後CMYKで調整しづらいからあまりよくないという意見もあり、両立できないところもある。この辺は、どういう使い方をするかをきちょんと考えて設計の方針を決めないと、なかなかうまくいかないだろう。
図13は、プロファイルを使うケースでよくあるRGBのワークフローにおけるレタッチの作業という点で考えてみた。RGBのワークフローは、今入稿される画像データはほとんどデジタルカメラで撮影されるので、RGBデータが主流になっていると思うが、そういったRGBの画像データをCMYKに変換するのが、このICCプロファイルになると思う。
CMYKに変換して、それで色校正を出力したり印刷するが、この間にレタッチ作業という、色を調整する作業が入ってくる。このレタッチ作業が、RGBの画像データの段階でレタッチする場合と、CMYKに変換した後にCMYKでレタッチするケースと、2つあるだろうし、両方やるケースもあると思う。
まず、CMYKレタッチが重視のケースは、この場合RGBのレタッチも多少最初に、例えばカラーバランスを整える、ハイライト、シャドーを調整することはRGBでやるが、例えば肌色の再現など細かい調整はCMYKにしてから調整するケースも非常に多いのではないか。
こういった場合は、プロファイルでとりあえず変換してしまって、その後CMYKで、プルーフを出して、お客さんの要望を反映させながらCMYKでレタッチをしていく。こういったケースの場合、プロファイルの変換に求められるのは、CMYKに変換した後にどれぐらいレタッチしやすいかである。先ほどあったように、例えば反対色が全部飛んでしまってその後調整しようがないものは、使いづらいプロファイルになってしまう。(図13)(図14)
▲図13
▲図14
また、RGBレタッチを重視するフローの場合。これもRGBでレタッチして、その後CMYKでも調整することもあると思うが、ここでは極端な例として、今国際標準化を進めているRGBワークフローの国際標準でどういうことをやろうとしているかで説明したい。
ここではまず入稿前のRGB画像の調整のところで、すべて印刷の最後の仕上がりを意識してRGBのレタッチをしてもらえるような環境を整えようと、今標準化を進めている。
撮影されたRGBの画像をレタッチして、そのレタッチ済みのRGBの画像を、プロファイルを使って、リファレンスプリンターでこのプロファイルのB2A0の変換をして印刷するとどういう色になるかという、簡易的なプルーフのようなもので出力できるようにしようというものである。
レタッチする人は、出力した色見本を見ながら、これで十分なのか、まだ少し直したいところは自分のRGB画像を直してもう1回出力する。最終的にこのレタッチする人が満足できるものになったら、色見本とプロファイルをつけて、後の処理に流してもらう。
そうすると、そういったRGBの画像をプロファイルにしたがって変換して、標準の印刷条件で印刷すれば、大体色見本と同じような再現になるし、色見本もついてくるので、それを見ながら色を管理して印刷してもらえば、ここでレタッチした意図通りの色が刷れるだろうとして標準化を進めている。
こういったケースに使われるプロファイルに求められるのは、RGBのレタッチ作業はディスプレイ上で行われるので、ここで色変換して出したらディスプレイと全く違う色になってしまうと、なかなかレタッチ作業が収束していかない。そうすると、こういうケースではできるだけディスプレイに近いような色再現が重要になってくる。(図15)(図16)(図17)
▲図15
▲図16
▲図17
いろいろな利用目的に応じて作るべきガマットマッピング、プロファイルは違ってくることがわかってきた。やはり利用目的に応じて複数のICCプロファイルが必要になってくるのだろう。
ただ、今回作るのは1つのプロファイルだけなので、最終的に検討会の中で議論して、変換後にCMYKのレタッチをするという前提のプロファイルをまずは作ることになった。
こういったプロファイル、CMYKでレタッチする前提のプロファイルとしては、今よく使われているAdobe製のJapanColor2001Coatedは実績もあり、かなり適しているので、エックスライト社に、基本的には2001のプロファイルと同じように作ってもらうことを狙いにして開発を行った。
あとは、実際のプロファイルの変換の特性を見てもらいたい。これは初期バージョンのほうである。L*C*の、それぞれの入力した値が色域内のどこにマッピングされるかを、矢印で表している。
赤がJapanColor2001の、これをターゲットにしようと決めた変換で、青が2011の初期バージョンのものである。色域外の色は明度重視、明度を維持する重視で、彩度を落としてしまうようなマッピングになっていたし、色域内の色も全部上向きに、明度を高めにマッピングするような変換になっていた。
それに対して、JapanColor2001は、少し彩度が高い色のほうでは圧縮をかけて彩度を落として、若干下向きに、明度も少し落とし気味にマッピングするような傾向があった。
この辺を、エックスライト社に何度か作り直しをしていただいて、最終バージョンは、色域の中の色は大体2001と同じように、明度を上げるのをやめにして、彩度圧縮もこの辺の領域で同じようにかけていくような形になっている。
色域外のところは、思い切り明度だけを維持したようなマッピングに比べるとずいぶん改善されているが、JapanColor2001に比べるとまだ明度重視の傾向があるような感じになっている。これは色相角が0度から30度なので、マゼンタから赤くらいの領域の色の特性である。
次は60度と90度なので、オレンジと黄色くらいの色相角である。ここも同じように色域内は、初期バージョンでは明度を高くマッピングしている。特に黄色は色域外で明度重視でマッピングしていた。
最終バージョンでは、色域内は大体2001と等価になって、色域外のところは、例えば60度のところは逆に彩度重視の傾向が残っている形になっている。これの最終版の評価会では、この辺の色のマッピング先が少し違うという指摘が出たが、最終的には各印刷会社の判断で、この辺の差はそれほど問題にならないとのことで、これでフィックスになった。
次は120から150なのでグリーンの領域である。ここも当初は色域内は明度が高めになっていて、この辺も明度重視が強かったが、色域内は大体同じ、色域外もだいぶ改善されたという形になった。
180から210も、同じである。こういった形で改善している。この辺はまだずいぶん明度が高めだが、こういう形である。
それから、ab面で同じようにプロットしたのがこれである。特徴的に、これは明度の高いほうから、L*90と70の点がどこにマップされるかを見た。JapanColor2001は、かなり明度の高い領域では、1次色の純色方向の色相角のほうに色相を回転させるという処理が入っているようだ。大きく、例えばこのあたりにあるサイアンに向かって色相を合わせているし、この辺はマゼンタに向かっている。この辺はイエローに向けて色相を少し回転させている。
それに比べてJapanColor2011の初期バージョンは、ほとんど色相角を動かさないでマッピングしている形であった。
基本的には最終バージョンになっても色相角自身はほとんど変えていない。ただ、先ほどのLCのほうでも出ていたが、明度重視でずっと彩度が落ちていたものを、少し彩度重視になってきたので、移される先が少し外側に伸びてきたという傾向がある。
これは中明度からシャドー側である。シャドー側のほうではJapanColorの2次色の純色方向に寄せていくような色相の回転をさせている。ここはJapanColor2011も比較的それに近いような色相回転が入っていた。ここに関しても、色相シフト量は、最終バージョンでも変更はほとんどされずに、彩度アップだけがされているような形になっている。
それからグレー軸の階調だが、初期のバージョンではこの領域が少し明度高めになっていたのが、最終バージョンではJapanColor2001と同じように、基本的にはグレー軸は入力に忠実に再現する形に変更されている。(図18)(図19)
▲図18
▲図19
今回作ったJapanColor2011のプロファイルは変換後にCMYK調整を行うフローを想定したプロファイルである。RGBのワークフローのように、変換して基本的にはそのまま出す使い方には、彩度が少し低めにマッピングされるので、そういった用のプロファイルはまた別途作りたいと考えている。
このプロファイルは、基本的にはJapanColor2001を手本に作ったので、最終的には、マッピングに多少差は残るが、特に色域内に関してはJapanColor2001同等のプロファイルになっていると思う。
2012年3月6日T&G研究会「JapanColor2011とICCプロファイルを解説する」より(文責編集)