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JAGAT会員対象の「印刷産業経営力調査」から、新技術/サービス/システムの導入状況、今後の導入意向についての結果を紹介する。
JAGATが毎年、会員企業を対象に実施している「印刷産業経営力調査」とは、メーカー・ベンダーを除く印刷会社および印刷関連会社の状況を(1)経営面、(2)戦略面、(3)設備面の3つの側面から総合的に分析するものである。調査概要 / 報告書
2010年度の調査結果から新技術/サービス/システムの導入状況、今後の導入意向についての結果を抜粋して紹介する。震災の影響もあり回答企業数は112社と例年より減少している。
図1は現在導入が多い順に並べたものである。第1位はカラーマネジメントシステムで58.0%(前年67.1%)、第2位が高精細印刷で43.8%(同46.2%)、第3位がバリアブルデータ印刷で38.4%(同37.3%)であった。ここまでの順位は昨年、一昨年と全く同じである。以下ユニバーサルデザイン26.8%、XML自動組版21.4%、電子書籍19.6%となっている。
昨年から大きく率を上げたのは、ユニバーサルデザイン(5.9%増)、電子書籍(8.8%増)、デジタルサイネージ(4.9%増)である。電子書籍は昨年の10.8%からほぼ倍増している。実務として電子書籍を取り入れている企業がすでに全体の2割近くあるという驚きの結果となった。ただし、満足度を見ると必ずしも高くない。現時点では先行投資の意味合いが強いと思われ、今後、印刷会社のビジネスにどう取り込んでいくか各社模索が続くのではないか。
導入した結果の満足度は、A:大変満足、B:やや満足、C:普通、D:やや不満、E:非常に不満の5段階評価で回答してもらい、A:5点、B:2点、C:0点、D:-2点、E:-5点という重みづけで点数換算した結果を満足度として算出している。導入率が10%を超えているもので、平均満足度が最も高いのがバリアブルデータ印刷(0.67点)で、続いて高精細印刷(0.51点)、XML自動組版(0.50点)となっている。バリアブルデータ印刷はデジタル印刷の特性を活かす技術として早くから注目されていたが、ようやく技術とマーケットが合致してきた、あるいはうまくマーケットを見つけた印刷会社が増えてきたようだ。
図2は今後3年以内に導入を予定しているとの回答が多い順に並べたものである。第1位は電子書籍とWebToPrintで10.7%である。WebToPrintは昨年に引き続いてのトップであるが、電子書籍は昨年の10位からの急上昇である。昨年よりも数値は落ちているがカーボンフットプリントへの関心も引き続き高い(8.9%)。
図3は今後とも導入予定なしとの回答が多い順に並べたものである。第1位が資材料の発注にEDIを利用(12.5%)で、第2位がCG制作(10.7%)、続いてJDFワークフロー(9.8%)となっている。JDFワークフローについては毎年「3年以内に導入予定あり」「今後とも導入予定なし」のいずれの設問においても回答率が高い傾向にある。
全体として電子書籍への積極的な取り組み姿勢が窺える結果となった。