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自社の現状に基いた標準原価の求め方を紹介する。
(1)直接部門と間接部門を定義する。
直接部門とは利益を生み出すべき部門のことでプロフィットセンターという言い方もされる。
間接部門とは直接部門を支援する位置づけの部門で自らは利益を生まない部門である。コストセンターという言い方もされる。(図1)
図1.部門定義例
(2)(製造)部門別の年間直接作業時間を設定する
労働時間は、勤務時間、実働時間、直接作業時間の3つに分類することができる(図2)。
図2.作業時間の分類と稼働率
勤務時間とは出社してから退勤するまでの時間である(残業時間を含む)。勤務時間から昼休みなど所定の休憩時間を引いた時間を実働時間と呼んでいる。そして、実働時間から朝礼や会議、朝の準備作業、終業時の後片付け、版待ち・紙待ちなどの待ち時間、機械故障・メンテナンスなどの時間を引いたものを「直接作業時間」と呼んでいる。「実働時間」に対しての「直接作業時間」の割合が高くなればなるほど時間コストは低減する。「年間コスト」÷「年間直接作業時間」によって、1時間当たりの基準コストを算出する。
(3)(損益計算書等の)費用科目ごとに各部門の負担金額を決める
人件費や設備の償却費など実費が明確にわかるものは実費を水道光熱費や通信費など部門別に実費を分けられないものは部門別の配賦比率を定める。
配賦比率には人員比率や部門別の占有面積比率などを用いることが多い(図3)。
図3.全社年間コストの部門配賦基準設定例 (単位は千円)
※金額自体には特に根拠はありません。
(4)間接部門のコストを直接部門に割り振る
総務、経理などの間接部門のコストの配賦比率を定める。(図4)
図4.間接部門コストの配賦基準設定例
※配賦比率には人員比率や直接部門の経費比率などを用いることが多い。純粋な部門コストだけでアワーコストを算出し、間接部門のコストを配賦しないという会社もある。理由として、よりダイレクトに生産性を評価したいということがある。
(5)変動費を割り振る
材料費や外注加工費などの変動費を直接部門に割り振る。通常は実費を割り振る。アワーコストを算出するときには変動費を含めずに加工高で算出するのが一般的であるが、部門によっては変動費を含めることがある。例えば製本部門では、製本材料は受注単位で切り分けることができず、かつ通常は売上も材料費と込みで計上するので変動費を含めて計算する。
(6)部門コストを設備別、作業別に割り振り、それぞれの基準時間コストを算出する
オフセット印刷機の例を紹介する(図5)。
(クリックで拡大します)
・減価償却を定率で行う場合、年度の偏りが大きくなるので、定額償却(購入金額÷耐用年数)で計算した値を設定している。金利負担分も考慮したい。
・準備時間や印刷速度は便宜的に標準的な値を設定している。ベタが多い、あるいは薄紙、厚紙など印刷物の仕様による変動は割増設定などで吸収する。
・同じ菊全4Cの機械であっても原価が同じであるとは限らない。営業との仕切り価格として運用する場合は、機械の個体差があると支障があるので、1台基準機を設定して、その原価を仕切り価格とすることが多い。
(研究調査部 花房 賢)
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