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Mobile World Congress 2013(MWC2013)は、携帯電話業界としては世界最大級の展示会である。MWC2013は過去最高の参加者数、出展社数となった。
ここ数年、スペインのバルセロナで開催。2013年以降の5年間は引き続きバルセロナでの開催が決定している。モバイル通信業界の主要プレイヤーが集結するため、各企業にとっては自社製品をアピールする絶好の機会となっている。参加企業は各ブースに、あるいはブースとは別に商談席を設けるなどして、これに臨んでいる。大手企業には、展示会外のホテル等を借り切って、プレス向け発表や招待客向けイベントを行うところもある。
MWCの講演プログラムにおいては、扱うテーマの幅が昨年よりも拡がった。新規で追加されたテーマキーワードでは、「NFC Services」「Big Data」「Small Cell Networks」「Consumer Behavior」などがあった。
複数の時間枠で講演が設定される注目テーマには、「Business Transformation」「Apps」「Health」「Connected Living」などがあった。
話題となり注目を集めていたのは、新OSに関してであった。Mozillaが市場投入予定のFirefox OSは、多くの通信事業者、端末メーカーからの支持を受けた。「ウェブこそがプラットフォーム」と主張し、複数レイヤの企業間でのコラボレーションを提案した。日本でもKDDIがFirefox OS搭載端末の採用を発表している。
ブラウザベースのOSに期待が集まる背景としては、自由にやれるのが良いという考え方があるようである。つまり、これまでAppleのiOSプラットフォーム、GoogleのAndroidプラットフォームのどちらかにアプリ、サービス、コンテンツを載せていたわけだが、プラットフォームのコントロールが強いために、いつリジェクトをされるかわからないといった状態でサービスしなければならなかった。しかしウェブは基本自由な空間である。HTML5で表現力は高まり、色々なことをやれるようになった。AppleにもGoogleにも縛られず、自由なサービス設計をやれるのではないか、という期待がFirefox OSに寄せられているわけである。
OTTプレイヤーたちは、パートナーシップを謳っていた。ユーザはアプリやサービスを選んで利用するため、OTTが現在のスマートフォン利用シーンを形成していると言える。OTTでも競争が激化しており、そのため新たな販路を捜している。
LINEはNokiaとの提携を発表した。新興市場向け端末「Asha(Nokia独自OS搭載)」へ、LINEアプリを搭載する。キャリア、端末側はOTTを活用して自社を差別化したいと思っていて、OTT側は新たなユーザを獲得し、なおかつ末永く使ってもらいたいと考えている。
OTTの多くが、通信事業者や端末メーカーとのパートナーシップについて前向きに語り、そして動き出している。このような流れは、昨年は見えていなかった。
API(Application Program Interface)の活用が重要となってくる。APIを理解し、うまく活用していくことは、これからのスマートフォン時代に避けて通れない話になっている。自社ですべて用意せずとも、有用なデータ、サービスをAPI利用で設計してユーザに利便性を提供する。
フランスの通信事業者Orangeは、メッセンジャーサービス「Joyn」のAPIを公開した。これにより、他のアプリ会社がJoynの機能を利用できるようになる。音楽配信サービス「Deezer」は、Joyn APIを利用している。そのため、楽曲を聞いたユーザが、その曲の存在を友人にシェアしたい場合、端末にあるアドレス帳から友人を捜してそのままSMSでシェアできる。
端末メーカーらの出展、展示発表については国内メディアでも多く報道されている。
各国間でスペック競争になっているところへ、韓国サムスンだけは新しいユーザ体験をつくろうといった、一歩先へ進んでいる姿勢であったようだ。シニア向けスマートフォンについては海外にも数点の事例はあるのだが、日本製品による作りこまれたものは海外に例がない。この点では日本製品もインパクトをじゅうぶん与えていた。