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最近の印刷会社のポストプレス部門は、以下のような状況にある。
設備の時間原価は、通常はその設備に関わる「年間コスト÷年間稼働時間」で計算するが、ポストプレス部門の場合、設備の稼働時間もあいまいで、多能工化が進むと機付き人員の人件費も把握しづらくなる。
そこで、まず作業工程と担当者とそのスキルおよび各作業への従事比率を洗い出す(図1)。
厳密さを追求すると作業が進まなくなるので、スキルについては3段階程度に分ける。例えば◎イレギュラー対応、トラブル対応ができる、○通常の運用は問題なくできる、△補佐であればできるのようなパターン分けで、もし社内に職能基準があれば、それを用いるとよい。
記号の大きさは、作業に従事する時間の長さを意味しており、時間が長いほど記号のサイズが大きくなる。実際のデータが取れていないケースが大半なので、おおまかに整理してみて、最後は前後左右のバランスをみながら調整し、パーセンテージで表現する。個人の合計が100%となるようにする。
この結果をもとに、それぞれの工程のみなし機付き人員を設定する。ここで注意が必要なのは、機械の稼働率と人の稼働率が必ずしも一致していないことである。特に“綴じ”の工程などは人数が多ければより効率的に作業できるが、少なければ少ないなりに作業ができる。負荷の掛かるタイミングだけヘルプに入るなど、人の配置はフレキシブルである。
それから、「穴あけ」「ミシン」などの細かい作業項目は、ざっくり「その他加工」としてまとめて時間原価を計算するケースもある。ポストプレス部門には稼働率が低い細かい作業が多く、それらは事前に稼働率を読みにくいし、細かく時間原価を設定すると、その後の運用も面倒になるので「その他加工」としてまとめてしまう。
余談となるが、こうした作業は設備更新がされていないこともあり、ベテランの管理者が担当されていることが多い。そのときの考え方として、人件費は固定費なのだから仕事がある限り社内でこなしたほうが良いと捉えるか、その作業をすることによってマネージャーとして本来すべき業務ができなくなるので廃棄したほうがよいと捉えるかの二通りの考え方ができる。どちらが正しいかは正直どちらとも言いづらい。
こうして、作業工程別の稼働時間と人件費を割り振れば、印刷機などと同様に「年間コスト÷年間稼働時間」で作業工程別の時間コストを算出する。
これまで述べてきたようにポストプレスの原価については、どうしても仮定の部分が大きくなるので計算値を出した後で検証が必要となる。
(『JAGAT Info』2013年6月号・教育コンサルティング部 花房賢)