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スマートフォンで役に立つアプリをダウンロードして利用する人は多い。無料通話のLINEやマクドナルドのクーポンは有名だ。公式アプリとしてクーポン配布や新商品案内などのコンテンツを提供し、販促やブランディングにつなげている企業も増えてきている。
店舗への集客に加え、新たなニーズ創出手段としてアプリを活用しているのが「カメラのキタムラ」を運営するキタムラだ。
写真業界では、2000年ごろよりデジタルカメラが普及したことでフイルム印刷の需要が減り、急速に市場が縮小した。さらに最近ではデジカメに代わりスマートフォンで気軽に写真を撮る人が増え、データとして保存したりSNS上で共有することが増えたため、写真としてプリントする人は一層減っている。
そこでキタムラは、スマートフォンを「通信機能のついたデジカメ」と位置付け、新たな写真の需要を増やす手段としてスマートフォンからのプリント受注体制を強化した。店頭でスマートフォンから直接プリントができる機械を導入したのもそのひとつだ。
さらに2011年よりスマートフォンからプリント注文ができるアプリ『プリント直行便』を開発、運用をスタートした。
「プリント直行便」は、スマートフォン経由でどこからでも写真プリントの注文ができるアプリだ。「写真プリント注文」「近くの店舗を探す」機能に絞り、シンプルな操作で簡単に注文ができるようにしている。
さらに宅配か店舗受け取りかを選択でき、店舗を選択した場合はGPS機能で現在地に近い店舗を表示する。店舗を指定すれば注文後、最短10分で仕上がる。
同社の坂井田氏に話を伺ったところ、アプリ利用者の約9割が女性だという。子どもの写真をプリントする需要が高く、卒業式、入学式、運動会などのイベント時期に利用が増える。そしてほとんどが店舗受け取りを選択するという。
「キタムラの強みはリアル店舗があること。価格では1枚10数円の安価なネットプリントサービスにかなわない。店頭でスタッフがアプリの販促や使用方法の説明をすることで利用を促せる」と坂井田氏は自社の強みを分析する。また今年に入ってから販促用の折り畳み式チラシを導入し、アプリの使用方法を持ち帰ってもらえるようにしたこともユーザー獲得に貢献しており、改めてリアルの強みを感じたという。
同社では、店頭でのスマートフォンプリント注文およびスマートフォン経由の写真プリントで年間10億円の売り上げを見込んでいる。
クロスメディアビジネスを考えた場合、スマートフォン、アプリという選択肢は今後無視できないものになっていくだろう。キタムラの例を見ると、難しい仕組みよりも本当にちょっとしたこと、これだけで便利になることをアプリ化することがビジネスを拡げる秘訣のようである。印刷会社はクライアントと近く、そのちょっとしたことに気付ける可能性が高い距離にいる。
スマートフォンアプリ市場動向と販促活用事例
~スマホコンテンツ概況整理とHTML5アプリ、カメラのキタムラの販促事例
(JAGAT 研究調査部 中狭亜矢)