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印刷会社がクロスメディアビジネスで成功するためには、何かひとつでも差別化できるポイントが必要だ。その際、動画制作は大きな武器になるはずである。
■私事ではあるが、1990年代には動画の編集機がデジタルになって(ノンリニアビデオ)、大幅に安く、取り扱いが簡単になったので、「印刷業のビジネス拡大には動画が打ってつけですよ」と印刷会社に動画を薦めていた時期がある。そのとき動画ビジネスを始めた印刷会社は、結婚披露宴のビデオ編集とか、DVD制作の仕事が多かったのだが、ビデオビジネスにくっ付いてパンフや席次表の印刷やアルバムの制作が付いてくるというビジネス拡大につながったものである。
そのときにコラボレーションしたのが(手伝っていただいた)のがRompexという会社で、今思えば大手の特撮モノや有名アーティストのプロモーションビデオまで手がけ、つくづく怖いもの知らずだったと恐ろしくなる。
■時は移り、ノンリニアは当たり前、パソコンで編集できるどころかスマホでビデオ編集できるようになってしまった。
そうなってくると、誰でも「スマホで動画が制作できるのでは?」と思うわけで、ちょうど新聞社が記者にiPhoneを持たせて、記者が撮影できるようにしようとしていることを思えばご理解いただけるはずだ。しかし、ここでiPhoneとわざわざ言ったのは、iPhoneのHDRが優れものなので、記者がライティング等に気を配らなくても、そこそこの写真が取れるからなのである。普通のスマホではOK確率が合格点に達するかどうかはなんともいえない(iPhoneに比べれば低い)。
確かにiPhoneは動画機能もすばらしく、撮りっぱなしでもマニュアル代わりの一分動画等には最適である。つまり魚のさばき方などは、文章や口でいくら説明するよりも、やっているところを撮影して見せるのが一番早い。寿司の握り方、ボルトの締め方、掃除の仕方などなど、iPhoneで撮影した動画の使い道は多い。
■しかし、動画というのは静止画にはない独特のセンスや決まりごとがあり、私もノンリニア編集機に携わって、その辺を思い知った次第である。
たとえばBGMの切れ目にフェイドイン/フェイドアウト(画面切り替え)しようとして、デジタルなのできっちりしたタイミングで行えるのだが、そうすると不自然だったり、ギターでボロロン♪というところのどこで場面を変えるのか?難しいところが山ほどあったのを覚えている。パンだってチルトだって(カメラの振り方で横振り/上下振り)ただやたらに行っても魅力的な動画から程遠くなってしまうのだ。微妙にずらしたほうがすっきりくる場合が少なくない。
そんな状況を察してか、前述したRompexではiPadを使って、編集を極力なくした一分動画の撮り方指南を始めた。私も経験したことであるが、プロのセンスが少しでも入ると、動画の質が見違えるようになるものだ。iPhoneで撮影してもきらっと光る動画ができるというわけだ。
その他にRompexでは価格が安くなってしまった現代に合う、動画作成として編集を極力なくした撮影方法で動画作成を請け負っている。動画作成というのは編集工程が複雑になるほど見積もりが跳ね上がるのである。これもRompexならではの発想なのだが、動画(映像)の世界は、高価なCF(コマーシャルフィルム=TV CMビデオ)を制作する仕事は現在でも高価な価格のまま維持しているのだが、Web用の動画やちょっとしたマニュアル要の動画は本当に安くなっている。昔のままでやっていては利益を圧迫するだけなので、簡単動画用のフローでやればいいのである。そして、そのフローなら印刷会社が参入したってまずいことはない。どんどん参入すべきだし、Web制作のHTML関連のノウハウだけでは、差別化は不可能である。画像のセンスがあるのだから、それを活かすべきだろう。
■ましてや印刷会社はカラーマネージメントのノウハウがある。こんな技術はビデオ業界にはあり得ない。ちょっと工夫するだけでビデオとパンフの色が合う。iPadの再現色域はB点が若干上に上がっているが、これイコールCyan色が出るということであり、この辺をうまくやることだって簡単なのだ。
動画は加算混合であり、コマが重なり合うと輝度が上がるので、色を合わせる場合はパンフの彩度をちょっと上げる工夫をすればビデオとは合いやすいはずだ。
■こんなことはちょっと考えればできるので、是非動画をビジネス拡大のツールに使っていただきたいと願う次第である。
そんな気持ちを込めてCM研究会では簡単動画にフォーカスしたセミナー「6秒動画、1分動画」 を開催する。TwitterをはじめとしてSNSには最近続々と動画機能が追加されているが、そんな状況をまず理解していただき、Rompexにはプロが教える一分動画のコツをお教えいただく。目から鱗の話も多いと思うので是非役に立てていただきたい。
そしてプロトリーフという園芸用土などの製造・販売を手掛けている会社の動画事例である。このようにすでに動画ビジネスは始まっているのだが、印刷会社のノウハウをうまく活かせば、今からでも参入は遅くないはずだ。 動画のススメを強く訴えたい。
(JAGAT 研究調査部 部長 郡司秀明)
■関連セミナー
2013年11月26日(火) 14:00-16:30
「6秒動画、1分動画」