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さようなら、上滑りの広告モデル 記事No.#1601

掲載日: 2009年06月29日

雑誌ビジネスを統計的に見ると、この12年ほどの売上は毎年下がる一方で、将来性がないビジネスに思われることもある。実際は約20年前の水準に戻った様子で、これはもっと下がるのではと見られている。

 

雑誌ビジネスを統計的に見ると、この12年ほどの売上は毎年下がる一方で、将来性がないビジネスに思われることもある。実際は約20年前の水準に戻った様子で、これはもっと下がるのではと見られている。しかし1996~1997年のピークの半分になったとしても、1980年頃の水準なら書籍を若干下回るくらいのところであり、広告も含めれば1兆円ビジネスである。これはこの20年間に雑高書低といわれていた以前の、書高雑低というバランスに戻るということである。

雑誌が縮小する理由は、第1に少子高齢化、第2にデジタルメディアが挙げられるが、後者はマスメディアの広告価値下落が大きな要因で、読者が離れていっているとは限らない。読者が離れる雑誌も多くあるが、それは読者不在の作り方をしているからであって、それが成り立ったのは広告クライアントの方を見ながら雑誌づくりができた時代が長かったためである。雑誌という見ごたえのあるメディアを商品の認知に使うことが有効な時代から、商品の認知はデジタルメディアの方が奥深くできるように変わったと言える。 

現在、雑誌業界で起こっていることは、雑誌売上減による町の小さい本屋さんの廃業と大型書店の増加の中で、雑誌を販売するところが少なくなったということと、広告モデルで成り立った読者不在指向の雑誌の淘汰である。淘汰される代表が総合雑誌、週刊誌などかつて一時代を築いた分野で、立派な編集者とはいえ若い読者とは意識の乖離がどうしようもないところまで行ってしまった。しかし、他方では若い読者を捉えいている雑誌もあるし、若い読者が集う場所も育ってきている。 

TSUTAYAは会員の登録が日本の総人口の25%、20代に限っては56%もあり、商品の売り上げをみてもゲームは21世紀に入って下降気味なのに対して、Bookは一貫して取引額を伸ばしてきた。冒頭のように雑誌はマクロ的には連続下降しているにもかかわらず、TSUTAYAは過去6年間に雑誌が前年売り上げを割ったことが一度もないという。そしてまだいけると踏んでいる。

TSUTAYAの会員がカードで買い物をすると、誰がどのようなものを買ったのかという統計がとられ、Amazonのように「コレを買った人は、こんなものも買っています」という関係もリアル店舗で分析するので、さまざまなマーケティングの工夫がされている。従来の書店も出版社もほとんどマーケティングというのをしてこなかったのとは対照的なビジネスの仕方である。例えば出版社が来月号にどんな特集をしようとしているかという情報を集めて、店舗の方で何部欲しいかを申請させるようなマッチングも行い、配本の最適化を管理している。 

これらの動きを特定の雑誌で3年間続けて行い、店舗の売り上げ増加と返本の低下ができることを証明し、このやり方を今年は大きく広げようとしている。そうすると、店舗側はバイヤーとしてのセンスを高めることができるだろうし、出版社も特集企画に対してどのような年齢分布、地域分布で反応があったのかを知ることができるのかもしれない(少なくともTSUTAYA自身は分析している)。つまり出版から購入者までの実データが取れるのである。この担当の方の話では、老舗出版社や広告代理店の考える企画がハズしていることがあるということがはっきり分かるようだ。 

TSUTAYAは、お買い物のポイントのアライアンスをいろいろな業種と進めており、いくつかの提携先ではそこの店舗での購買履歴データもからめた施策が可能になっている。プロダクトアウトで量産したものを、大量広告で売ることが困難になったのは不況のせいではない。人口が減少傾向になるからこそ、利用者・生活者に密着したマーケティングが重要になるし、IT+ネットはますますそういった努力をする企業が活用するツールになっている。


 

 

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