JAGAT Japan Association of Graphic arts Technology


本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

日本を地球のオアシスに!

掲載日: 2009年07月07日

1026.jpg

日本の従来の観光の常識から感性のスイッチを切り替えること無しには日本の神秘を売り出すことは出来ないだろう。

「地元」の価値発見については歴史を振り返ることがよく行われる。つまり古代から、あるいは江戸時代の庶民文化などにルーツを求める方法だ。これで時代を超えた本質的な長所はつかめるかもしれないが、それがそのまま現代に活きるとは限らない。日本人でも海外旅行をする人は非常に増えて、その人たちが旅でどのような満足を得ているか捉えると、現代の世界的な視点で「地元」の文化的な価値を含めた表現が可能かもしれない。つまり地域の長所を他者評価で表現する必要があるということだ。

以前読んだもので、日本に来た外国人が「ようこそ! 日本へ」というフレーズは意味不明のアピールだといっていたものがあった。また欧米の人にとっては北海道の自然や雄大さは「アタリマエ」すぎて魅力を感じないとか、猿が温泉に入っているのが外国で話題になったり、当然ながら日本人とは異なる感性で日本を見ているし、さらに日本の地方に住み着く人々も現われていて、エッセイなどで彼らの感覚を表現している本なども出ている。

フランス語のミシュラン観光ガイドで紹介されている日本の温泉は9箇所で、さらに3つ星は一箇所「ひょうたん温泉」のみである。これは別府にある700円の共同浴場で、温泉マニアの日本人でもあまり知られていないといい、日本人の温泉感とは大きな違いがある。

日本の温泉のイメージは時代と共に変化していて、今の典型的なものは概ね第2次大戦後にできたもので、「おもてなし」、食事の素晴らしさ、設備の立派さも、外人に対しては空振りになる場合もある。現にフランス語や英語のミシュランには日本の有名な温泉地である草津、箱根、伊豆、道後、有馬などは採りあげられていない。

外人の日本に対する興味のひとつは「神秘」であり、北海道が日常的過ぎるのと対照的に、日本人が日常的に思えるものにも魅力を感じる場合があるようだ。これは外人の感性の問題だけではなく若い日本人にもあてはまるだろう。戦後の団体旅行が今日の若者にはチンケになったように、若者の観光感は変わっているからだ。海外旅行にしても欧米の首都や大都会をまわるだけではなく、もっと別の雰囲気を求めて出かける人が増えている。

神秘の正体が何かはわからないであろうが、マーケットとしてみると足元の若者と、世界の旅人の両方から、他者評価してもらえるようになると、次第に感性の共有ができるかもしれない。日本の従来の観光の常識から感性のスイッチを切り替えること無しには、せっかく日本が地方の開発をせずに保存できた日本の神秘を売り出すことは出来ないだろう。

日本でも「日光を見ずして結構というなかれ」といったが、世界にも「ナポリを見て死ね」「天国に最も近い国ニュージランド」「永遠の都ローマ」などいろいろな観光のキャッチフレーズがある。雄大さ以外は日本に劣るところはない、くらいの自信を持って、「地元」の価値も、世界のキャッチフレーズになるくらいに練り込んでいく必要があるだろう。

(『印刷白書 2009』より一部抜粋)

関連情報

『印刷白書2009』  2009年6月刊行
特集:地域活性化「と」印刷産業 ・・・地域ブランドをいかに育成し、地域本来がもっている内向的、保守的な側面を勘案しつつ、拡販していくかが重要視されている今日、印刷産業や、広告業のようなクリエイティブな役割を担う業態が地域活性化の”一助”になるといっても過言ではない。

(C) Japan Association of Graphic Arts Technology