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PMPシステムとは「社内仕切り価格」という物差しを、売値と原価の間に設けることによって、営業および各製造部門の売上高、加工高、利益の期間実績を目標と対比しながら把握できる仕組みです。
・営業に対する製造の社内販売価格(製造売上)
・営業にとっては、製造からの購入価格(営業仕入)
・同じ仕様の仕事であれば、作業者/作業時間/受注価格に関わらず常に一定
・営業は製造の原価を基準にするのではなく、仕切価格(つまり仕入価格)を基準に自部門の利益を評価する
・製造は、営業の販売価格を基準にするのではなく、仕切価格(つまり営業への売渡額)を基準に自部門の利益を評価する
販売価格と製造原価の間に「仕切り価格」というぶれない物差し(基準)を設けることで、利益の貢献について営業と製造を区別できる。
印刷業一般に行われている実際原価計算との違い
【一般的な実際原価計算の考え方】
①原価=直接作業時間 × 標準アワーコスト
一品別に記録された仕事1点ごとの直接作業時間に標準アワーコストを掛けて算出。
算出された「実際原価」と営業の請求値段(売価)との差額を見て、売価や利益の妥当性を検証
【問題点】
・実際の直接作業時間(稼働率)は想定した時間とは異なる
・同じ仕事はいつも同じ機械、同じ作業者が担当するとは限らないし、機械や作業者が違えば仕事は同じでも作業時間は異なるので算出される原価のばらつきが大きい
・一品原価の積み上げと期間の実際原価とが乖離しがちである。
・原価がばらつくのと同様に売価も顧客との交渉のなかで様々な理由で変動する。したがって粗利が少なかった場合に、売値が低かったのか原価が高かったのか判断がつきにくい。
これらの問題点は印刷業は受注生産で個別対応となるため作業を標準化しにくいという特性のためでもある。
◇一品別の損益
【製造サイド】
・「仕切価格」を製造の売上高として計上
・一品別の実際原価の把握は必須ではない
【営業サイド】
・一品別に粗利益(=売価-仕切価格)が算出される
⇒一品別に営業の努力成果が見える
◇期間(月次等)の損益
【製造サイド】
・実際に計上された原価(労務費、材料費、諸経費)を集計(製造固定費+変動費)
・期間内の仕切価格(営業への売上)を集計
⇒期間損益として、製造部門の「利益」が部門別に把握できる
【営業サイド】
・営業部門の粗利益(=売価-仕切価格)が算出される。
・粗利益から期間内の固定費を引くことで営業部門の「利益」が見える
【全社】
・営業の利益=販売価格-仕切価格-営業固定費(間接部門経費配賦後)
・製造の利益=仕切価格-外部購入価値(材料費、外注加工費など)-製造固定費(間接部門経費配賦後)
・全社利益=販売価格-外部購入価値-全社固定費
・期間単位(通常1ヶ月)で、決算数字に近い値で部門別利益状況が把握できる
・営業は受注一点ごとに粗利益がどの程度達成できているかが確認できる
・経営者に自社の価格政策や合理化目標の基準を提示できる
・営業部門、製造部門の管理者に目標の基準を提示できる
営業:粗利益の確保は、売値(Price)の拡大努力(ing)で決まる
(仕切=仕入は一定)
【設定手順】
○仕切基準の算出
①直接部門と間接部門を定義
-自社の組織図を元に部門設定を行う
・直接部門:利益を生み出す部門(プロフィットセンター)
・間接部門:直接は利益を生まず、直接部門を支援する位置づけの部門(コストセンター)
②製造部門の年間の直接作業時間を設定
③全社予算の作成
④部門予算の作成
-全社固定費を科目の特性に応じて部門へ配賦
-間接部門の固定費を直接部門へ配賦
-全社利益を部門に配賦
-変動費を配賦
-部門別目標売上高の算出
仕切基準=部門別年間目標売上高÷部門別年間直接作業時間
○標準工数の設定
各作業単位に標準工数(作業時間)を設定する
○仕切価格の設定
仕切価格=仕切基準 × 標準工数
・仕切基準:直接作業時間当り売上高または加工高
・標準工数:標準仕様における標準時間
【設定例】
○DTP部門の例
年間目標売上高 :139,078 千円/年
年間直接作業時間: 28,080 時間(6人分年間総計)
直接作業時間当り目標売上高:
139,078 千円 ÷ 28,080時間 = 4,953円/時・人
仕切基準:4,953円/時・人 = 82.5円/分・人
標準工数:DTPレイアウト A4/頁 35分
仕切価格:82.5円 × 35分 = 2,888円
※この数字はあくまでも例であり、意味を持つものではありません。
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