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POPやポスターのノウハウがあるところが積極的にデジタルサイネージに取り組むべきである。
雑誌が減っていくのと反対にフリーペーパーが嵐のように乱立したが、書店で人々が自分の好みで雑誌を選ぶようにはフリーペーパーは手にとってもらえない。フリーペーパーの配布は街角や通路にラック置きされているか、商品とともに強制的に渡されるようなものである。R25のようにブランドが出来てしまえば、リピートでピックアップしてくれる人もいるが、無名のフリーペーパーをラックから手にとってもらうのは大変であろう。そこでフリーペーパー自体の販促が必要になる。
フリーペーパーの存在を知らしめる努力として、ラックに紙のPOPをつけたり、ラックの後ろにポスターを貼ったりすると、もっていってもらえる率が高まるという実験もあった。POPもポスターも古くからある手段ではあるが、出番はまだあるということになる。PAGE2009の際にデジタルサイネージにFeliCaカードを組み合わせたスタンプリレーをしたところ、サイネージの画面で説明をしているのに、なかなか利用してもらえず、画面の枠に紙でPOPをつけたら利用率ががぜん上がったことがある。飲料の自動販売機でもシールを貼ったり、さらにぶらぶらするPOPをつけたりしているが、やはりそうした方が効果があるのだろう。
このことを思い出すと、いつも新たなメディアが登場するたびに、期待がされすぎたり、場合によっては神格化されてしまうという過ちを避けられるかもしれない。マーケティングの世界ではホリスティックという言葉が使われ、一般にはクロスメディアというのも同じようなことだが、メディアは組み合わせて使うところに効果が出るものである。これはデジタルになる前から実はそうであったのだが、アナログ時代は各メディアごとのタテのつながりで閉じていたので、ヨコに関連付けをすることが難しかった。
2009年はデジタルサイネージが非常に多く導入されようとしている。この世界は大まかに大中小の3つに分れ、駅や商業施設など大勢が集まるところに大きく出すディスプレイと、お店に設置するTVの大型ディスプレイ的なものの、ノートPCやデジタルフォトアルバムのような小型で商品棚に置くものがあり、台数的には小型の伸びが大きくなる。これらの活用もデジタルサイネージ単独で考えることは立ち上げの遠回りになるだろう。
デジタルサイネージは、コンテンツと、配信スケジュール・ロジックと、ネットワークなどが運用の鍵のように思われるが、デジタルサイネージそのものが売り場などにうまく融合して、店内でよいシナジー効果をだすようにする、もうひとつ上位の全体的な運用を考えておく必要がある。その意味ではPOPやポスターのノウハウがあるところが積極的にデジタルサイネージに取り組むべきである。
(テキスト&グラフィックス研究会 会報283号より)