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「標準」の意味とその活用-改善の起点は標準設定-

掲載日: 2009年07月23日

仕切り価格を設定すると自社の「標準原価」と「標準工数」が決まります。こうした「標準」資料は経営管理に役立つだけでなく、さまざまな業務の効率化に活用することができます。

 

PDCAに欠かせない「標準」

管理の基本がPDCAであることは、企業人なら誰でもが知っていることと思います。管理の目的は改善でありそのために、まず計画(Plan)を作って、その達成を目指して実行し(Do)、その結果を点検して(Check)、さらなる改善策を施す(Action)というサイクルを回すことになります。

ここで、管理の対象が生産性ならば、「計画」とは「目標値」になるはずです。単に「生産性を向上させる」というだけでは計画とはいえません。例えば「10%アップする」あるいは「現在の準備作業時間を30分から20分に短縮する」というのが計画です。そして、ある期間の実績データをとって、その結果「5%アップした」あるいは「準備作業時間が8分短縮できた」といった事実を把握し、計画、つまり目標値と対比することになります。この「目標」は「標準」とも言い換えることができます。例えば「現在の準備作業時間を30分から20分にまで短縮する」は、より正確に表現するならば「現在の『標準』準備作業時間30分を20分に短縮する」となります。そして、この場合に目標と対比される実績値は「平均値」です。

軽視されてきた標準とその理由

しかし、印刷業界では「標準」というものが軽視、あるいは無視されてきました。印刷物は1点1点製品仕様が違うから「標準などはありえない」、したがって、「『社内仕切り価格』(生産現場が営業に売り渡す標準価格)など不正確で意味が無い」、「仕事によってばらつきが大きく標準工数は設定できない」ということが言われてきました。
もし本当にそうならば、営業マンが事前に見積り書を作成することはできなくなります。実際には、ある製品仕様ごとに設定した料金(単価)表を使っているはずです。この単価とは設定方法がどうであれ、意味合いとしては「標準」あるいは「目標」に他なりません。
「標準工数(標準時間)」がなければ日程計画が立てられません。各仕事を終えるのにどのくらいの時間がかかるのか予測できなければ計画など不可能です。実際には、たとえ明文化されていなくとも工務の担当者の頭の中に経験値として蓄積されているデータが使われているはずです。この経験値こそが「標準工数」といえます。

いまこそ「標準」を管理に活用しよう

では、こうした「標準」資料の活用方法にはどのようなものが考えられるでしょうか。見積りと日程計画のシステム化(自動化)の二つが考えられます。これらを実現するには、「標準工程手順」というもう一つの「標準」資料が必要となります。「標準工程手順」とはある仕様の印刷物を製造するときに、どのような設備を使ってどのような手順で行うかという標準ルールとなります。例えば、枚葉と輪転のどちらの印刷機を用いるか、あるいは全判と半裁のどちらの印刷機を用いるかといった判断基準です。
ここで、工程管理の仕事の要素について整理しておきます。(「工程管理をするために必要な要素」を参照のこと)

「標準原価」、「標準工数」そして「標準手順」の3つの標準資料をベースとした業務管理システム(MIS)の全体像は以下のようなものとなります。

 

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