デジタル印刷と後加工システムの最新動向
掲載日: 2009年08月07日
※デジタル印刷に適した後加工技術とは何か。
デジタル印刷で成功するには、ITやWeb・ネットワーク技術を駆使した独自性のある提案、あるいは発注元にとって魅力のあるソリューションなどが必要である。
これらの課題に必要なITやWeb・ネットワーク技術、デジタル印刷に適した後加工技術、および成長するデジタル印刷のビジネスモデルとは何か。
テキスト&グラフィックス研究会では、「効果の高いDMを生み出すデジタル印刷手法 <成長するデジタル印刷とビジネスモデルを考える>」と題したセミナーを開催し、日本フォーム印刷工業連合会専務理事の山口実氏に、「デジタル印刷の後加工システム」について話を伺った。
■デジタル印刷の商品価値向上
デジタル印刷の商品価値を向上させるには、カラーやフルバリアブルということだけでなく、後加工により製品としての付加価値をつけることが重要である。メーリング加工、コーティング加工、ブック加工、ミシン加工、筋入れ加工、折加工など、一般印刷と同様な加工が必要である。
加工によって商品価値を向上させなければ、一般印刷でもデジタル印刷であっても成長することはできない。デジタル印刷は、さまざまな後加工技術と連携することで、今後も活躍の場を広げていくだろう。
■デジタル印刷用UVニスコーティング
UVニスコーティングによって、デジタル印刷物の光沢出しをおこない、高級感を演出することができる。全面ニスや部分ニスによって、訴求力を強調する。また、ニスコーティングは、デジタル印刷物の表面保護にもなる。ほかに、産業廃棄物にならない環境対応の表面加工、ニスコーティング加工による圧着DMもある。
■デジタル印刷用ラミネート加工
ラミネート加工によって、デジタル印刷物の光沢出しにをおこない、高級感を演出することができる。PP貼りによって表面保護と光沢加工がおこなえる。デジタル印刷では接着強度が問題となっていたが、専用のサーマルラミネートフィルムにより対応するものも発売されている。
■デジタル印刷用ラベル加工設備
ラベル業界でもデジタル印刷機が導入されつつあり、デジタル印刷に対応した加工システムが増えつつある。
ABGのOmega Systemは、ラミネートフィルム加工、UVオーバーコーティング加工、刃型加工、粕上げ加工、巻き取り加工が可能である。
CARTESLASER 350はレーザー加工機で、60m/minで、ダイカット・キスカット(ハーフカット)が可能である。
■デジタル印刷用製本加工
デジタル印刷の製本加工には以下のようなことが求められる。
オフセットで印刷したものと、デジタル印刷(バリアブル印刷)したものをまとめて製本したい。モノクロやカラーなど、複数のプリンタからの出力物をまとめて製本したい。また、デジタル印刷の特徴に応じた製本ラインを構築したい、金額に見合った生産性を確保したい、という要請がある。
■オフライン製本システム
オフラインであることのメリットとして、後加工設備の処理能力を最大限に活かすことができる、複数プリンタの印刷物を後加工機1台でまとめて製本することができる、ということがある。
[バーコードを使ったオフラインシステム)
ホリゾンのオフラインの中綴じ機は、バーコードを使ったオフラインシステムである。通常のオフライン製本機をベースに、バーコードの読取機能を付加し、パソコンによるデータ照合をおこない、プリント順が正しいこと、乱丁落丁がないこと、異なったページが混入しないことを保証している。

[ピツニボウズとホリゾンのコラボレーション]
drupa2008では、ピツニボウズ社アンワインダー+カット装置 (API-50C)+ホリゾン社中綴じ製本システム (StitchLiner5500)による製本ラインが展示されていた。ロール紙からシートカットして、中綴じ製本を行い、三方断裁する。最大5,500冊/時の生産能力がある。
[Smart-binder SB-3]
Smart-binderはIBIS社のオフライン製本システムで、糊付け製本加工をおこなう。バーコードで管理している。
[オフラインくるみ製本 ]
ホリゾンのBQ-270は、無線綴じのくるみ製本機である。デジタル印刷の本文を1冊毎に区分し、先頭ページと最終ページにバーコートを印字する。1冊毎の表紙ページにも、識別バーコードを印字する。バーコードによって本文と表紙とのマッチングをおこなう。
■インライン製本システム
インライン製本システムのメリットには、人手を介在しないたね人的ミスがない、自動化できる、省スペースということがある。
デメリットには、プリンタ速度に依存する、印刷のバラつきが製本精度に影響するということがある。
インライン製本に適した製品には、事務用極小ロットの製本、セキュリティー性の高い製本、機械同梱のマニュアル等(添付商品と同期を取った製本)がある。
[Smart-binder In-Line System]
Smart-binderは、オフライン製本だけでなくインラインでも使われている。ロール紙をカットして、製本をおこなうシステムである。
[Perfect Binder Amigo Digtal]
Hunkeler社、MullerMartini社の装置を組み合せた連続紙プリンタ用インライン無線綴じ製本加工システムである。
■デジタル印刷における後加工での障害
後加工の最大の留意点は、1枚でも失敗すると欠番処理など前工程での再処理が、必ず必要になることである。後加工での障害として、加工機による印刷面の傷、トナーのはがれ、用紙の含水分低下で発生する静電気、熱による用紙の波打ち・そり(トナー方式)、用紙に対する印刷位置精度の低下などがある。
折加工では、ベタ印刷面の折り目による割れ。圧着メール加工ではフューザーシリコンオイルによる圧着糊接着強度の低下。ニス加工・後糊メール加工ではプリンタートナーとオーバーコート基材との相性、くるみ製本加工ではフューザーオイルとホットメルトの相性など、加熱による用紙変化に起因する障害が見られる。
■デジタル印刷における品質検査
デジタル印刷の品質で最も重要なことは、すべてのページがバリアブルであり、特定のページであることを認識する必要がある。そのためにバーコードなどを利用した検査が必要である。
また、1ページごとにかすれや汚れがないかを検査する。可変情報プリント用検査システム「PVS-2010」は、毎秒10,000字の照合が可能である。連続用紙では毎分 90mで漢字、数字、バーコードなど文字のかすれや汚れを検査することができる。
■デジタル印刷の発送物管理
DMなどデジタル印刷の発送物管理はもっとも重要である。ピツニボウズの発送物管理システムは、検査装置のログと顧客情報を照合してサーバーに保管する仕組みである。顧客担当者は、Webブラウザから簡単にこの情報を確認することが出来る。
■印刷産業界で進むデジタル印刷
デジタル印刷はこれからもますます成長していくだろう。
そのためには、従来以上にデジタル印刷に対応した多品種少量生産型の加工設備と加工材料が必要である。また、オフセット印刷機とデジタル印刷のシームレスなワークフローや、ハイブリッド印刷も増えていく。さまざまなメディア(媒体)へのデジタル印刷も増えていく。
(テキスト&グラフィックス研究会)