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コンテンツ資産に付加価値を与えて価値を向上

掲載日: 2009年08月10日

企業にとって蓄積されたデータは資産である。特にデジタル化されたコンテンツ資産は再加工が容易であるという点で利用価値が高いが、それら資産の活用方法としては部品再利用的なものも多い。

データに別の情報を付加したり、複数のコンテンツを組み合わせることによって、全く違うコンテンツとしての価値を生み出している企業の取り組みについて紹介する。

地図・位置情報+アイデア=ユニークサービス

ヤフーではLatLongLab(以下Lab)において地図・位置情報をテーマにした、さまざまなサービスを公開している。同社は2008年に地図会社のアルプス社と合併しており、元データとしてアルプス社の地図データを利用している。

Labの特徴は、新規性・ユニークなプロダクトを重視している点である。地図・位置情報をベースに、ほかではやっていないアイデアや一風変わったユーザーインタフェースを組み合わせることで、イノベーターに刺さる(=ココロに残る)サービスを提供するのだという。

例えば「動け道案内」というサービスがある。従来テキスト情報でしかなかった道案内に動きを組み合わせることで、インタラクティブに見せることができる案内データになっている。

また旧アルプス社が保有していたデータを最大限活用して10年前の地図と現在の地図を比較して見ることができる「TOKYO decade」というサービスも開発した。これは古いコンテンツを今のデータと組み合わせることで新しい価値を生み出したサービスである。

同社陸口氏によると、Labの活動は野球に例えることができるという。Yahoo!地図は一軍、Labはバッティングセンターである。一軍では失敗できないが、Labでは失敗してもいいからどんどん打ちまくる。こうしてリリースされたサービスや技術については、正規プロダクトとして採用されることもある。

Webで収集したデータに付加価値を

ゴーガでは、検索エンジンがクロールしたデータをベースにして、利用者が使いやすいような形に再加工した検索サービスを提供している。

公募情報を収集して掲載する検索サイト「調達.org」は、今まで他業者が有償で提供していたものを無償で提供するものである。各省庁や団体が公開している公募情報を組み合わせて一つのサイトで検索できるようにした。サービス開始後3カ月でデータ量としては1万件程度になっている。

また高速道路の料金を検索する「高速.jp」では、ネットワークや車種により1000万以上の組み合わせが発生する高速料金に対して適切な検索結果を公開していることに加えて、どこよりも早く最新の料金情報を掲載すると高い評価を得ており、ナビタイムの情報提供元として採用されている。

同社小山氏は自社での取り組みについて、世の中には集約されていないデータがたくさんあり、それらのテーマを一つに決めてデータを収集していくことでインターネット上で価値あるサイトを提供することが可能であると考えているという。また今後の検索における全体的な方向性として、「人は検索しない方向になるだろう。ユーザーは自分から検索しなくても、気づくと情報が手に入るようになる。裏側の仕組みとしてはテキスト以外の検索も含めさまざまな技術が使われるようになるが、人が意識的に検索する機会は減っていくだろう」と述べた。

(『JAGAT info』2009年8月号)

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