JAGAT Japan Association of Graphic arts Technology


本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

東京メトロで新たに取り組むデジタルサイネージ メトロアドエージェンシーに聞く

掲載日: 2009年09月01日

車両メディアからはじまった東京メトロにおけるデジタルサイネージの取組みは、開始1年が経った。今年秋には新たにネットワーク化したサイネージ商品を投入する。

メトロアドエージェンシーは、東京メトログループのなかで車両や駅構内広告等、地下鉄に関する広告事業を展開している企業である。高い視認性で特に効果が期待される交通広告分野におけるデジタルサイネージの取組みについて、同社 媒体本部 媒体管理局 駅メディア部長の小針史朗氏、媒体本部 媒体管理局 車内メディア部 車内メディア部長の太田和之氏にお話を伺った。

順調にスタート、開始後1年で高い認知率

東京メトロでは、昨年6月より有楽町線・副都心線を運行する車両の各ドア上部に設置されている「Tokyo Metro ビジョン」を展開している。副都心線開業と同時にサービスを開始し1年あまりが経過したが、ユーザーの認知度は高い。ある民間の調査では、デジタル サイネージの認知度は「Tokyo Metro ビジョン」がもっとも高い結果となった。

鉄道系ではJRが2002年よりトレインチャンネルを開始して以来、東京急行電鉄のTOQビジョン、埼玉高速鉄道のSai-Net Visionなどが導入されており、同社では、いわば後発として車両向けサイネージに取り組むかたちとなった。サービスの開始にあたっては広告販売面での不安があったという。

まず車両にサイネージが設置されている10000系と呼ばれる車両は、現在有楽町線・副都心線の全てに採用されているわけではない。旧型車両や他社乗り入れ線の車両も含めると、2・3本に1本くらいのペースでの運行になる。また、副都心線は銀座線や丸ノ内線と異なり他社との相互乗り入れをおこなっているため純粋な「東京メトロ」路線ではないことから、イメージ的な問題もあり他の商品と比較して広告を販売するのに苦労するのではないか、という声があった。しかし実際に開始してみると、料金面でキャンペーンを行なったことなどもあり、予想以上に好調な売れ行きとなった。

放送されるコンテンツは映像系のものが主であり、TVCMに文字情報を付加したようなコンテンツが多い。インフォマーシャルをはじめ星占い、天気予報、ニュースなどのコンテンツは流しておらず、純粋なCMと業務用映像のみを放送している。配信はネットワーク化されており、2-3日に一度のサイクルで新たな内容に入れ替わる。新木場、氷川台、池袋の車庫に車両が入ったタイミングで自動更新する仕組みである。

交通広告という強み

駅や電車は、多くの人が通勤・通学などで毎日ほぼ必ず利用する。例えば副都心線では1日平均約20万人が利用しており、交通広告はこれらの人々にリーチすることができるという点で強みを持つ。さらに、路線や駅によって女性利用率が高い、遠方から通勤する人が多い、など、異なるターゲットを対象にした情報伝達がしやすいという特性を持つ。

さらに地下鉄は、地下を走るため外の景色に目が行かず広告に注目が集まりやすい。また東京メトロ線は主に都心を走っている路線のため、朝夕の通勤時間帯以外にも日中の中間時間帯にも利用されているという特徴がある。交通広告が持つこれら特性は、時間帯や場所によってコンテンツ内容を変えることができるデジタルサイネージとの親和性が高い。

今後の展開

東京メトロは、10月1日より駅のホームをネットワーク化したものとしては国内最大規模となるデジタルサイネージ「M Station Vision(丸ノ内線ステーションビジョン)」を開始すると発表した。これは東京駅、銀座駅、赤坂見附駅、新宿三丁目駅、新宿駅、中野坂上駅の各ホームにそれぞれ12台、合計72台設置するディスプレイをネットワーク化して電車を待つ利用者に対して動画を中心としたコンテンツを放映する。M Station Visionでは音声が出るのが特徴で、これは関東では初めてであるという。

1172_02.jpg
東京メトロWebサイト(リリース より)

広告のスポット売りにも対応する。通常の車内広告であるTokyo Metro ビジョンが半月単位での販売なのに対して同サービスでは1日単位、時間帯での販売が可能となっている。また時間帯や曜日によって配信内容を変えられるため、例えば飲料メーカーが朝はコーヒー、夜はアルコール飲料のCMを流すなどターゲットに対して効果的な配信をおこなうことができる。

今後のクロスメディア的な展開について尋ねたところ、ケータイやPASMOとの連動、フリーペーパーやポスターなど紙メディアと連携した取組みについては今のところ予定はないという。ただM Station VisionとTokyo Metro ビジョンはそれぞれ単独に販売するが、将来的にはコンテンツ連携した広告展開の可能性はあるようである。

小針氏によると、「しばらくはM Station Visionに力を入れていきたい。9月に開始されるテスト運用を含め今年度中にクライアント側のニーズを掴んでいき、来年度には新たな活用方法や効果的な広告販売手法の開発など次のステップへ進みたい。」とのことであった。

(C) Japan Association of Graphic Arts Technology