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制作と印刷の明確な分離で効率化とコスト削減を実現する 日本ヒューレット・パッカード(株)

掲載日: 2009年09月13日

ITソリューションベンダーの世界企業であるヒューレット・パッカード社では、業務改革の一環として印刷物購買スキームに関して印刷と制作における新たなルールを設け、より効率的な印刷発注を実現する仕組みを導入した。

ワールドワイド統一のスキームで印刷物購買の改善を図る

企業内のコミュニケーションの多くは電子メールで済まされるようになり、社内で活用するドキュメントも電子化が着々と進んでいる。企業内で紙を使用することそのものが、急激に減少してきている。

こうした動きは社内のみならず、外部に対しても進んでいる。その多くはインターネットを活用したものであり、製品のプロモーションなどにおいて、ウェブサイトや電子メールを活用して様々な情報を提供することがごく当たり前のものになった。そうした反面、印刷物の効果についてはだれもが認めるものであり、短絡的に電子化=印刷物の放棄にはつながっていない。特にプロモーション・ツールやセールス・ツールの多くは紙で提供されており、その多くが外注で制作されている。

印刷物の有用性は評価されているものの、電子化の進展と企業のエコ活動の取り組みから、印刷物の発注や紙の使用そのものについてはますますシビアになってきている。印刷会社や制作会社にとってのクライアントである企業側のこうした取り組みは、すぐさま印刷業の存続に関わるものではないが、制作体制の見直しや業務体制の改善を促すものとなっている。そうした印刷と制作の体制に新たな仕組みを提起しているのが、日本ヒューレット・パッカード( 日本HP)のプロジェクト「SmartPrintProgram」(SmartPrint)だ。

ヒューレット・パッカード(HP)は、サーバーやPC、プリンターを取り扱う世界企業である。一般のユーザーにとっては、あくまでPCやプリンターのメーカーだが、HPにはもうひとつの顔がある。オンデマンド印刷、デジタル印刷の草創期に登場したデジタル印刷機のひとつ、「HP Indigo」(インディゴ)を擁する印刷機器ベンダーであることは、あまり知られていないだろう。

SmartPrintとは、そのHPが社内の印刷物購買に関わる一連のバリューチェーンの改善を目的に取り組んできたもので、2004年から導入しているワールドワイド統一の購買スキームだ。印刷物取引フローを見直し、より合理的でより効率的なフローを、品質を下げることなく実現するものだ。

印刷オペレーションの改善、高効率化を図る

SmartPrintを導入すると、Indigoを始めとするデジタル印刷機を活用して、印刷のオペレーションそのものを変えることが可能となる。カタログ印刷のオペレーションを例にとって説明しよう。

これまでの方法では、製品リリースの初期からEOL(End Of Life)まで、全体を通じて量産体制をとることでカタログ製造コストの削減を図ってきた。

リリース初期からオフセットで大量に印刷発注する。初期の不安定な期間を抜けると、安定的な量産供給期に入るが、途中で在庫がなくなったところで、再びオフセット印刷で大量に増刷することになる。途中までに順調に在庫ははけてはいくのだが、EOL期間に入ると調整が困難となり、在庫が残り、ついには廃棄となってしまう。
オフセットでの大量印刷でコストを抑えても、抱えた余剰在庫を廃棄することで、結果的にはコスト・セーブにはなっていないという結果が待っている。初回の納品時から在庫スペースが必要になるのも問題だろう。

SmartPrintにおいては、市場動向の見極めが難しいリリース初期には、オンデマンド印刷で対応する。その後、市場に製品が安定供給される量産供給期間に入ったところで、オフセット印刷を活用して、コストをセーブする。最後にEOL 期間に入ったところで、再びオンデマンド印刷に切り替えることで、需要に合わせて不要在庫を抱えないように調整する。オンデマンドとオフセットをうまく組み合わせて活用し、コスト削減を現実的なものとできるわけだ。

導入効果は360 万円/月のコスト・セーブ

同社がSmartPrintの導入を開始したのは2007年の後半だった。導入した効果について グローバル購買本部の朝山佳子氏は、同社の製品カタログ「プロダクトセレクション」の制作で明確な数値として現れたと言う。同カタログは毎月発行しているもので、毎回ページ数などにもバラつきがあり、一概に比較できない。2007年12月号と、導入後の2008年2月号の2つがたまたま同じページ数であったため、この2つの制作費を比較したところ、360万円のコスト・セーブができていたことがわかった。これを単純計算すると、同カタログ制作だけで年間4,320万円のコスト削減が実現できるというわけだ。

社内部門ではあるがIndigoユーザーでもある、同社イメージング・プリンティング事業統括グラフィックビジネス統括本部ビジネス推進&製品本部の本部長・小池亮介氏は、その立場から、オンデマンド印刷の効果を次のように語っている。「Indigoを使ったオンデマンド印刷は、予算の管理がしやすく、コスト削減においては大変メリットがあると思います。(SmartPrintは)印刷会社の立場で考えると大変厳しい面があると思いますが、経費削減にはシビアな企業も多く、現実的に考えなければならないことではないかと思います」。

制作サイドも今後改善

本来、制作会社と印刷会社は切っても切れない関係にある。制作過程を考えても、最近では校正を社内のプリンターで済ませることが普通になった。そうは言っても、納得のいく仕上がりになるまで、色校のやり取りが複数回に及ぶこともある。制作過程に限らず、制作費用に関しても、クライアントの要望に応えられるように、相互に協調して調整するのも珍しいことではない。

制作と印刷を完全に分離したこの手法は、発注側にとってはたいへん合理的なシステムと言えるが、これにより、仕上がりに対して発注側に責任がシフトすることになった。その点において、VAというシステムを導入し、コントロールを外部の専門会社(PMV)に委託することで、リスクを軽減したSmartPrintは賢い仕組みと言えるだろう。
また、現段階では、印刷会社にのみ、認定、登録、さらに入札という条件を課しているが、この点については今後、制作部門のコラテラル(フライヤー、カタログなどの販促ツール)に対してもメスを入れる予定で、さらなるライトサイジングを図るとのことである。

新しいルールでは、新規参入企業にとって入札という公平なチャンスがある。また、既存の取引企業にとっては、自らの技術やビジネスに改めて目を向ける機会ともなり得るだろう。

(『プリバリ印』2009年6月号より抜粋)

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