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パーソナルURLでDMがペーパーポータル化する

掲載日: 2009年09月18日

PURLはDMを発送した企業などが自社のホームページアドレス(URL)に続けて受取人の氏名などを記載するもので、これをインターネットに接続したパ ソコンに入力すると、DMを受け取った個人向けページが開くので、One to one DMがペーパーポータル化する。日本では未だなじみの薄いが、米国の先進的な印刷会社では広く利用されていた。 

米国の先進的な印刷会社では、日本では未だなじみの薄い「パーソナルURL」(略してPURL:パールと発音)がOne to one DMに広く利用されていた。

PURLはDMを発送した企業などが自社のホームページアドレス(URL)に続けて受取人の氏名などを記載するもので、これをインターネットに接続したパソコンに入力すると、DMを受け取った個人向けページが開くというものである。

これによって、今まで片方向であったDMがインターネットのポータルの役割をもつことができるようになる。以下に概説を記載する。

(1)Direct Marketing におけるデジタル印刷DM の位置づけ

今回の米国の訪問先にみられたデジタル印刷を活用したDM配信は、いかに広範囲の対象顧客に印刷物を配信するかを競うマスマーケティング的な発想のDMとは、その果す役割や意味が本質的に異なる。

大きな違いは、デジタル印刷によるDMが、E-mail配信と並び、ダイレクトマーケティングにおける顧客との有効なコミュニケーションツールとして位置づけられている点である。その狙いはいかに一瞬で顧客の興味を喚起して、Webへのアクセス(または、コールセンターへの問いあわせ)によりフレッシュなデータベースを維持し顧客とのコミュニケーションを強化することにある。

 

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図 パーソナルURL 付きDM がWeb ポータルに

(2)デジタル印刷DM におけるパーソナルURLの活用

E-mail の配信は、顧客へのアクセス量とスピードではDMをしのぎ、コスト的にも有利である半面、受け手にとってみればSpam 化する傾向が高く、結果的にレスポンスは低くなる。

一方、紙メディアであるDMは、顧客志向のメッセージやデザインのインパクトなど訴求力を高め、アクセスを高めることが可能だが、ダイレクトマーケティングの中核となるオンライン(Webへのアクセス率)活用が低くなる懸念がある。

紙メディアとしてのその欠点を補い円滑なオンラインによる双方向のコミュニケーションを実現するのが、パーソナルURLである。
パーソナルURLとは、URL中に親しみやすい顧客の名前などをいれこんだ仮想的なURL である。

仮想的なURL から実URLの一連のリダイレクションに関する技術であるPURL(Persistent UniformResource Locator)(http://purl.org)と混同して使うことが多い。次に紹介するXMPieでは、RURL(Response Uniform Resource Locator)としているが意味することはパーソナルURLと同一である。

パーソナルURLは、顧客個人の情報が入力可能な実際のパーソナルページとリンクし、顧客からの個人属性情報収集が可能となる。一般的にはキャンペーンのクーポンの配布とセットで行われ、パーソナルURLのDMを受け取った顧客の入力に対する心理負担の軽減とパーソナル訴求により、データベースの更新と顧客満足度の向上に寄与が期待される。

また、これらのキャンペーンはE-mailとDM双方の良さを補完する形で両方について行われるクロスメディアキャンペーンとなることが多く、パーソナルURLはE-mailなどの媒体にも適用される。
米国先進顧客ではアクセスしたWebにパーソナル化された動画が再生可能となっている事例もでてきている。

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図 PURL は紙メディアとWeb メディアの双方向のコミュニケーションツール

(3)パーソナルURLを活用するためのソフトウェア

パーソナルURLを活用し、顧客の要望に対応しクロスメディアキャンペーンを実現するためには、顧客データベースの構築やWeb 構築技術を含め、一定のネットワーク技術が必要となる。

クロスメディアによるメディア別のマーケティング管理およびバリアブルデータ印刷の中核部分については、各社よりパッケージ商品が発売されておりシステムの構築が現実的になってきた。

「XMPie」は、サーバーアプリケーションであるPersonalEffect -Cross Media Edition-によりクロスメディアキャンペーンソリューションを提供していて、(1)クロスメディアによる潜在顧客コミュニケーション(E-mail とDMとパーソナルURL)、(2)製作過程における一貫性、(3)各メディアに適したデザイン、(4)顧客アクションのフィードバックなどの特徴をもち、これらを活用することで本格的なシステムの構築が可能となっている。

また、PersonalEffect -Cross Media Edition- (米国ゼロックスコーポレーションにて発売)は、さまざまなキャンペーンパターンのパーソナルURL テンプレートを用意するなど、クロスメディアパブリッシングを実現するために必要なパーソナルページを作成するためのツールとテンプレートを強化した商品である。
類似製品にはDirectSmileがあり、Darwinは他社のパーソナルURL 生成エンジンと組み合わせて同様機能を実現する。


(4)有店舗マーケティングへの活用

近年ダイレクトマーケティングは、コンタクトセンターの整備によるCRM進展やインターネットを媒介とした無店舗型のネットショッピングなどの急速な成長に加え、有店舗の商品のマーケティングについても広がりをみせている。

米国の事例にもあるカーディーラーやカジノ、イベント来客管理などは、その事例である。集客の中核は、デジタル印刷を活用したイメージやメッセージ、名前などをバリアブルにし、さらにパーソナルURLを埋め込んだDMであった。

米国と日本ではさまざまな環境の違いはあるものの、経済環境が悪化するなかで国内においてもさらなる企業の増力化の高まりという視点から同様手法の成長が期待される。

特に、興味喚起から購買までのマーケティングプロセスにおいて、顧客(エンドユーザ)からの商品・サービスに対するレスポンス率の向上や最終的な業績への貢献も、可視化できることが従前の手法との違いである。

このようなモデルでは、付加価値的なサービスの価値も含めた対価を、発注企業へ請求しやすく今後、積極的な取り組みが求められる。

(日本印刷産業連合会:平成20年版 デジタル印刷新時代のビジネスモデルとITネットワーク技術 より)

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