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足元のビジネスを育てつつも、アメリカにも対抗できる方法を考えていかなければ、自分の住処はなくなってしまう。
ニューヨークの2001.9.11の惨劇から8年経って、再びYouTubeを見ると、その後のTV番組などの関連動画がアップされてきている。例えば日本のカメラマンが撮ったり、日本で放映された番組が、欧米では未公開映像としてアップされている。では世界中の9.11番組があるのかというと、アルジャジーラのような中東の放送はあっても視聴の制限がされているものがある。考えればYouTubeもアメリカにあるサービスであるから、アメリカの法律や制度・常識下で運用されているのは当たり前だ。
こういったことはGoogleでもあてはまるだろう。この地上でどこの国からも自由な場所などあり得ないので、実はネット上といってもサイバーではない。米クリントン大統領時代のインフォメーション・スーパーハイウェイ構想が日本のINS高度情報化社会と違うのは国際戦略が組み込まれているかどうかの差でもある。だからこそヨーロッパ勢はアメリカと距離をおいた戦略戦術を考えようとする。技術に端を発したからといって、その応用の実現が同じように起こるわけではない。ネットを使ったビジネスも同様で、基本的にはその国なり土地柄の文化的な制約の中で成り立つものが多い。
文化的な慣習や制約をよく見ずに、ネットなら不可能が可能になると考えるのは甘すぎる。世界の電子書籍もそんな中で苦しんでいる例のひとつであるが、アメリカは国際戦略があるのでそれに乗って押し通していくことがやりやすいのであろう。その先頭がAmazon.comのような世界市場を前提のボリューム買い付けで優位に立つビジネスである。かつてアメリカはMicrosoftを金の卵として独禁法の適応せずに野放しにしたように、世界市場に挑戦する企業を自由にさせるであろう。
アメリカ以外はこういった戦略をとりにくいが、グローバルビジネスでなければどの国のどの分野でも流通機構などリアルワールドの制約は、ネットビジネスが突破して伸びている。こういったビジネスを育てながらも、アメリカにも対抗できる方法を考えていかなければ、ネットビジネスも着地点が得られないだろう。日本でも少し大きなビジョンを考え、シェアすべき時がきている。
(クロスメディア研究会 会報「VEHICLE」246号)