本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
※DTPアプリケーションやPDFなど、着実にクロスメディア対応が進んでいる
■広く浸透するユニバーサルデザイン・フォント
イワタは、2006年よりユニバーサルデザインフォント、「イワタUDフォント」を発売している。ユニバーサルデザインフォントとは、年齢や障害の有無に関係なく、商品・サービス・住居・施設などを快適に利用できるよう配慮するユニバーサルデザインの観点から設計されたもので、もともとは、家電メーカーとの協力で開発が進められたフォントである。
イワタUDフォントのデザインは、懐の広さ、字面を大きくとっているところが特徴的である。また、つぶれ対策として、濁点、半濁点との隙間が確保されている。画線をシンプル化し、ゴシック特有のゲタを排除し、部首を大きく取っている。さらに、アルファベットの「S」と数字の「3」「8」、「O」「C」「G」など、誤読されやすい文字の判読性を上げるようデザインされている。
当初は家電製品等の文字盤に採用されていたが、現在は各種の掲示板・案内板やパンフレット等の印刷物でも広く採用されている。UDゴシックのシリーズが最初に発売され、その後UD丸ゴシック、UD明朝のシリーズも発売されている。UD新聞明朝は、新聞社からの要望によって開発・販売され、2009年には新聞の本文用フォントとして使用されている。
モリサワも、2009年秋よりユニバーサルデザイン対応フォントを発売する。新ゴ・新丸ゴをベースにしたゴシック系UD書体や明朝系UD書体が発売される。
■DTPソフトウエアの最新動向
アドビシステムズ社は、2008年11月にAdobe Creative Suite4日本語版(以下Adobe CS4)製品ファミリーを発表した。また、Photoshop、Illustrator、InDesignなど12種類の単体アプリケーションも最新版がリリースされた。
InDesignCS4では、オペレーションのあらゆる面での細かな改善と新機能により、生産性やクリエィティブワークの自由度向上が図られている。ライブプリフライトは、常時プリフライトをおこなう機能で、リアルタイムに問題点が指摘されるため、その都度修正をおこなうものである。
また、InDesignCS4では、Flashムービーの保存形式であるSWFファイルを、直接書き出すことが可能になった。InDesign内でページめくり、ワイプ効果など各種の効果やボタンを設定した上で、SWFファイルに書き出すことが出来る。
たとえば、InDesignCS4上でデザインしたカタログやパンフレットのデータから、Webやデジタルサイネージ用のFlashコンテンツへの流用が容易に行える。
■Flashを統合したPDFとAcrobat9
アドビシステムズ社は、2008年にAcrobatの新バージョン、Acrobat9を発売した。 Acrobat9シリーズでは、新たにさまざまなデータファイルを圧縮して一まとめにするPDFポートフォリオ機能、PDFにFlashを埋め込み再生する機能、フォーム機能の強化、双方向型のプレゼンテーション作成機能が追加されている。
PDFポートフォリオでは、PDF以外の文書ファイルや画像、音声、ムービーなどさまざまな形式のファイルをひとまとめにして統合することができる。圧縮されているため、保管や配布も容易である。
また、PDFにFlashを埋め込み、再生することが可能となった。Adobe Readerさえあれば、プラットフォームに依存せずにFlashを埋め込んだPDFを閲覧し、ビデオやアニメーションを再生することが可能である。
■電子出版と共に進展するXMLパブリッシング
XMLパブリッシングとは、再利用が容易なXMLとしてデータを管理し、印刷物やWebなど多様なメディアに情報を発信する手段である。
データ構造を定義し、XMLデータとして保存すること、およびそれらのデータから印刷物制作などの情報発信をおこなうXMLパブリッシングを実現することで、さまざまな効果を得ることができる。XMLベースで校正をおこなうため、データの一元管理が可能となる。校正完了後に、一括自動組版や目次・索引の自動生成をおこなうことができる。
過去のデータ流用や更新も容易である。印刷物だけでなく、Webサイトへの情報発信などマルチユースも迅速におこなえる。
特定のアプリケーションやOSに依存したデータ保管から脱却し、将来的な活用を妨げないといったメリットがある。
このように、XMLデータを活用して効率的なパブリッシングが実現する分野として、法令集や用語集、学習教材、マニュアルなどが挙げられる。辞書の分野では、電子辞書対応のためにXMLコンテンツ化が普及しており、電子辞書だけでなくWeb用コンテンツや印刷物製作にも利用されている。
DITAとはXMLドキュメント構造の国際標準であり、大規模な技術マニュアルや技術文書に適している。
DITAは、トピックとマップという2種類のファイルで構成され、これを組み合わせて1冊のマニュアルなどを表現する。情報をできるだけ小分けにして、トピックファイルをたくさん作る。マップファイルは制作物単位に作成し、トピックの並びや階層構造など目次やアウトラインに相当する情報を記述する。
DITAの意義は、情報のモジュール化によって、トピックの流用、再利用が容易なことにある。たとえば、世界各国向けの多言語マニュアルであれば、小さい単位で、変更箇所だけを翻訳に回せば良いため、翻訳コストを大幅に下げることが出来る。
(千葉 弘幸)