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販売現場の匂いとリズムを反映した販促ツールを提供 ─(株)エフ・アイ・エス

掲載日: 2009年11月13日

昨今の経済状況から、「今は大きなキャンペーンを行う時代ではない」というのが発注元に共通する方向性である。

車の点検来店率が大幅に向上したカーディーラー

「車のバースデーカード」というパーソナライズドDMを新車納車の1年後にオーナーに郵送し、自社で販売した車の12ヵ月点検における来店率を、従来の45%から60%へと大きく向上させたのが、(株)ホンダクリオ共立(神奈川県川崎市)である。

創業43年、140名規模の独立系カーディーラーで、Honda Cars川崎およびHonda Cars 品川の6店舗に加え、中古車センター、レンタカー事業を展開している。「隣の家も同じチラシを見ているようなら物は売れない」という思いから、独立系ならではのきめ細かな営業展開が信条である。

メーカーから提供されるプロモーションツールを大量に配布して来店客を確保という、従来型のビジネスモデルとは一線を画している。ひとりの営業マンが何十人もの車のオーナー(顧客)を担当するなかで、どう顧客と密なコミュニケーションを実現し、長い付き合いを持続していくのか。

そのために、現場の感覚と「リズム」、すなわち顧客との継続的関係において折々に巡ってくる営業のタイミングに合わせて、「欲しい営業ツールを、欲しい時に得られる仕組み」への強いニーズを持っていた。しかし、以前取引していた印刷会社から希望にマッチしたソリューションが提供されることはなかった。

そのような時に出会ったのがエフ・アイ・エスのPULLCASTチームが提供する、ウェブによる「販促ツール発注インフラ」である。新しい仕組みの採用によって、ホンダクリオ共立では自社独自のプロモーション展開が功を奏して、着実な売上増に結びついている。

「車のバースデーカード」による車検・定期点検整備を勧誘するワンtoワンDMは2008年から始まり、毎月1,000通を顧客に送付した。制作方法は本部担当者がウェブ経由で校正まで行い、一括で印刷発注する。店舗が使用する営業ツールとしての「便箋フォーム、メッセージカード、オリジナルシール、来店礼状、ご成約礼状」などは、各店舗がウェブ発注する。

PULLCASTチームが求められたウェブインフラへの技術的な絶対要件は、「発注元で入力してオーダーする時」の情報が「正しい情報」であり企業情報でもあるので、「裏で人の手が介入しないシステムを構築する」ことであった。

さらに、エフ・アイ・エスが次のバージョンとして提案しようとしているのは、ホンダクリオ共立の店舗ごとの「現場の匂い」を直ちに反映して、プロモーション展開の軌道修正を指示できる仕組みの提供である。

営業担当者に「来店状況を毎日入力」してもらい、各店舗のマネジャーがこの集計結果から市場を見通して、「自店舗の来週のキャンペーンはもっとこうして」など、決裁力を持つ現場の責任者が自分の裁量によるキャンペーンの企画・進行を行うことを支援するインフラの提供である。

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マーケティング本部と販売の現場との関係に異変

ホンダクリオ共立の例から見てとれるように、昨今の経済状況から、「今は大きなキャンペーンを行う時代ではない」というのが発注元に共通する方向性である。大企業では、本社のマーケティングや販売本部などの担当者と、販売の現場で売上と販売管理費のROI 向上を毎日追求している人とでは、感覚が大きく異なってきた。

これからは現場の担当者が売上を追いかけるために、パーソナライズドDMなどの販促ツールを「現場の皆がどれだけ活用できるか」、「最適なリズムをどうつかむか」が、大きなテーマになってくる。

多店舗を展開する企業の本部が困っていることは、店舗の立地条件ごとの来店客層の相違である。全国に数百店舗を展開している某化粧品メーカーでは、購買金額の大きな客層が来店する店舗は化粧品の在庫も大瓶が多い。その一方で購入額の小さな客層の店舗は小瓶の在庫を多くするなど、店舗による市場特性に違いがある。したがって、キャンペーンやプロモーションの内容やリズムにも変化が求められる。

これからの本部チームの役割は、販売の現場にCIなどを守らせながら、どこまで自由度を与えるかである。小さな政府ではないが、本部はルール、方向性、予算を示す。各現場はリターンがいちばん大きなリズムやターゲットに対して、実際の販促行動を起こしていく。本部側は使える画像、キャンペーン時期や範囲、文言などのコンテンツだけを用意して、販促の微妙な時期の判断などは現場が行う。

これからはワンtoワンDM、商業セグメント的なPOP、来店礼状などのきめ細かなプロモーションツールを作成するためのアプリケーションは、どんどん増えていく。今までの大量に制作する印刷物から、デジタル印刷機を活用し大判ポスターに変更して、店頭プロモーションのROIを向上させた案件も進行している。

エフ・アイ・エスは、発注元のニーズを捉えた質の高いウェブベースの販促ツール制作のインフラを提供することによって、ROIに優れたソリューションを提供しているのである。

エビデンスを見せるプレゼンテーションを徹底

エフ・アイ・エスの岡本専務は、「印刷会社がきちんと説明していないので、クライアントがデジタル印刷を理解していないことが非常に多い」と手厳しい。いまだに多くの印刷会社は、ワンtoワンなどではコンセプト説明に終始して、実現できる根拠をクライアントに見せられない。そのために結局は「1部いくら?」「1万部刷ったらどうなる?」ということしか問われなくなる。

PULLCASTチームは「発注元にシステム提案する時は実際に動くことを見てもらう」という、エビデンス(証拠)の提示に徹している。発注元もプレゼンテーションの段階で、本当に欲しい営業ツールが発注できて納品されることを実感できるところに特徴がある。

「B+B」でお客様とともにビジネスの最善化を目指す

最近は発注元の現場から、日常業務のなかでドキュメントを運用したい、販促品を作りたい、DMを打ちたいという話が出てくる。エフ・アイ・エスは以前からこのような案件を得意としているので、汎用的なニーズや要望はすでに現場から聞いて把握している強みがある。

PULL(ひきつける)CAST(適材配役)とは、顧客を獲得するための施策、サービス、配役が揃っていることを意味している。事実、同社ではウェブインフラだけでなく、出力の自動化・効率化を行うワークフローや、社内情報の一元管理を行うMIS(情報管理システム)にも専用の人材を配置し、自社独自での包括的なサービス提供を可能としている。

同社の提唱する「B+B」とは、インフラになる仕組みがベースに付加されているという意味である。
最近の発注元は、「情報資産」という切り口で話を進めると、自社の情報システム部門が絡んで技術的な話に偏り、マーケティングや営業現場が本当に求める機能がシステムに反映されないこともあるなど、課題が多い。

デジタル印刷とクロスメディアの連携は今までの印刷受発注を抜本的に変えてしまう可能性を秘めているが、提案力と実行力のあるパートナー選びがポイントである。したがって、発注元にもできるだけデータやシステムをオープンにしてもらい、そこにデジタル印刷機をつなげないと、有効な仕組みにすることは不可能である。
これが100%デジタルで12年間、クロスメディアを提供してきたエフ・アイ・エスの結論である。

(「プリバリ印 」2009年10月号より抜粋)

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